知子のロック結成秘話とか裏話とか

連載第2話 「バンド結成から初リサイタルまで」Text by 鈴木銀座(トーマス)
「やりましょう!バンドやりましょう!」
かっこいいギターのビーバーは一発でトモコのことが気に入ったようだ。
1995/04/30(日)ここは六本木すずめのおやど。
トーマスはルフラン&トモコを連れて、ビーバーとのご対面飲み会を催したのだ。
「いやあ、古い顔してますね〜昭和43年頃のゴーゴーガールに会えたみたい!」
と、ビーバーはハイボール飲みながら盛り上がっている。
いきなり初対面でこんなこと言われたトモコは
「ご、ゴーゴーガール?昭和って?」と訝しげな顔をしたが、
これは昭和マニアであるビーバーの最強のほめ言葉なのである。
トーマス「歌謡ロックやるならキーボード欲しいですね。」
ビーバー「GSハコバンで競演した時うまい奴いたよ。」
プロフェッサー(略してフェス)のことである。
アグネスチャンと同じ高学歴(上智大)で、プロフェッサー・ロングヘアのピアノが大好き。なのでフェス。
フェス「歌謡曲を面白く演奏するバンドなら参加したいね。」
かくて、トモコVo、ビーバーG、ルフランDr、フェスK、トーマスBの5人が勢揃いしたのである。
バンドのコンセプトは、
「誰にも知られていない昭和歌謡曲を発掘し、ビートをきかせた演奏とパンチのあるトモコの唄声で、平成のヤングどもに一撃を食らわすこと!」
「ネオGSのカッコ良さとは一線を引くダサかっこよさと、よくできた絵空事のバンドが目標。よって六本木で結成話とかはバンドにふさわしくない。よりかっこいい大森海岸のありもしない海水浴場でメンバーが出会ったことに勝手に決定!」

「オレが20ン年前観た美川憲一の歌謡リサイタルのように、司会をつける!」
トーマスのこんな無茶な話に、皆は笑い&あきれながらも賛同してくれたのである。
曲ネタは、オムニバスCD「東京ビートニクス・シリーズ」「黄金のニューリズム50s60s」「面白愉快で懐かし原盤」等、そして何と言っても「ビーバー・テープ」!邦楽シングル所有ン千枚を誇るビーバー宅から、よりすぐりのナイスな歌謡曲をセレクトした、もしも彼女とカーステレオで聞いたら、破局間違いなし!のえぐ〜い編集テープなのである。
赤いエレキ(岩井実)恋の台風第1号(美樹克彦)なんて名ビート曲にはシビれ死にましたよ。(この2曲とも、まだ未CD化なのではないでしょうか)

(左から、フェス、知子、ビーバー、ルフラン、トーマス。画像提供:鈴木銀座氏)
1995/05/28(日)西荻窪スタジオUENにて初練習。
トモコのいなたい唄声を初めて聞いたビーバーは「ビビビ〜と来ました!」と後の松田聖子風な感想を述べ、フェスは「今どきこんな娘が..」と大受け。練習後、ルフランとトーマスは「何かが始まりそうだよね。」とうなずき合った。
原宿でおそろいのユニホーム(GSなので当然)購入したり、ルフランが仕事中、足場から転落して失神したり(奇跡的に無傷)ライブ当日、戦後最大の台風で電車が止まったりしながらもバンドは初リサイタルへとこぎ着けたのであった。
バンド名は「知子のロック」!
「面白愉快で懐かし原盤」内の「雪子のロック」というナレーション曲から頂きました。
トモコにとって、たった今イカしてると感じるもの(ロック)はこれよ!それを皆さんにお聴かせしたいの!...こんな意気込みのバンド名なのです。
1995/09/17(日) 高円寺JIROKICHI
気まぐれエンジェル(ハニー牧)グッとがまんして(小山ルミ)スイングガール(小月リエ)GO!GO!レンタカー(中尾ミエ)ラストチャンス(内田裕也とフラワーズ)そばにいて(ピンキーチックス)X+Y=LOVE(ちあきなおみ)東京レジャー娘(渡辺マリ)ロカビリー剣法(美空ひばり)恋のシンガリング(石橋四郎とソールフォー)の10曲。

(勢揃いして決めたところ。左から、ビーバー、フェス、ルフラン、トーマス、知子。画像提供:鈴木銀座氏)
全てカバー曲、白のパンタロンで決めたトモコと、水色のパンタロンで決めたメンバーが恐る恐るステップを踏みながらも手堅く歌い演奏した。
トモコと司会のトーマスのズレまくりのトークもお客に受けたようだ。が、トーマスにもこのバンドはどう受け止められたのか?わからなかった。
「...今日は身内の客ばかりだったし。GSとか興味のない人には面白かったのかな..」
楽屋で汗を拭いていたトモコが、上目使いで不安そうに
「出来はどうだったんでしょうか?」と聞いてきた。ん〜答えられない。
その答えはえらい早く得られることになる。
数日後、フェスが電話口であっさりこう言った。
「知子のロック、TVに出ることになったから。」え、え?何〜!

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