The Sun Tour 神奈川県民ホール 2004/12/24
実に、5年ぶりとなる、佐野元春のアルバムを携えたツアーである。もちろん、このツアーには東京公演もあり、その渋谷公会堂にも行ってみたかったのだが、当選しなかったのである。ではと、近くで行われている公演をチェックしたところ、この神奈川県民ホールがあり、クリスマス・イブという日にもかかわらず、あっさりと席をゲットできたのだ。
ただし、平日なので、仕事は1時間の早退をして乗り込む。最寄りからは、みなとみらい線ができたので、アクセスは便利になった。
この公演には、知り合いのアニタツ氏を誘った。彼ももちろん仕事があり、事前のミートは考えていなかった。この時間の横浜はもう、暗い。近くのカフェで、エスプレッソを頂いてから乗り込む。久しぶりとなるツアーグッズのTシャツを購入。席は残念ながら、3階である。その近くのロビーにいると、アニタツ氏と遭遇。この人は神奈川県民なので、普通通りに仕事を片づけてきたそうである。
公演前のアナウンスにより、二部構成のライヴで、途中に休憩が入ることを知らされる。それにしても、客席は隙間が目立つ。なるほどあっさりと席を確保できたのもうなずける。自分の席の近くは、実にがらがらであり、その分圧迫感がないのがいいか。にしても、クリスマス・イブの佐野元春ライヴなんて、ちょっと前だったら、間違いなくプレミアムものだったろうにと感慨にふけっていると、客電が落ちる。隣は空席だった。
ステージには薄い幕が掛かっていた。それまでに、クリスマスソングなどがかかり、たまに、ローディたちによるサウンドチェックが入っていたものの、この幕を通して、その後ろに入ってきた人たちがいることがわかった。いよいよ開演。幕が落とされ、佐野元春とThe
Hobo King Bandが現れる。かなりの音量だが、元春は楽器を抱えていない。そのかわりに、Dr.Kyonがギターを抱えている。にしても、この曲がよくわからない。スタートということもあるのか、どことなく音も籠もっているような感じがする。サビの部分でようやく曲名が判明。「Back To The Street」である。それにしても、デビューアルバムのタイトルチューンをオープニングに持ってくるとは、意外なんてものじゃない。この曲が演奏されて、訊いたことがあるのは果たしてあっただろうか。
元春の服装は、白い上下のスーツで、スーツ姿というもの自体が、ここ数年なかったことである。また、ギターを持たず、ヴォーカルに専念する元春の姿というものも、意外であった。ただし、コンディションは、あまり良さそうに思えない。ヴォーカルのキイは下げられているようで、なおかつ、音が割れてしまっている。昨年の、The
Milk Jam Tourで回復途上にあると思えた、声の調子が悪化してしまったのかという懸念にとらわれてしまう。バンドは、元春を正面に見据えると、右にギターの佐橋佳幸、背後にドラムの古田たかし、その右に寄り添うようにベースの井上富雄が位置する。古田たかしと少し離れるようにして、左側にDr.Kyonのキーボードのスペースが設けられている。元春の左側には、髭を生やし、ひときわ背の高いサックスがいた。「?」。この時はわからなかったのだが、山本拓夫に代わる、ボブ・ザングという人だそうだ。山本拓夫は年明けツアーから復帰の予定らしい。
しばらくは元春のコンディションは変わらなかった。曲も、かなり古いものが続く。これが変化したのは、「ヤァ!ソウルボーイ」からであった。歌い方も安定し、声もはっきり聞こえる。キイはオリジナルである。これが何に起因するものかわからない。しかし、これ以降の元春の声は、実に安定するものとなったのである。
第一部の構成は、普段はあまり演奏される曲ではなかった。すべてが、古いアルバムのものである。この中には、The
Hobo King Bandの最近の真骨頂となった、「99 Blues」と「Individualist」もあった。また、「また明日」という、矢野顕子とデュエットした曲も。ただし、女性ヴォーカルが入っていないので、元春一人で行うようなものなのだが。「Individualist」では、かなり長いソロが取られ、演奏も長いものだった。ここでいったん、休憩が入る。
第二部は、ニューアルバム『The Sun』からのものが中心であった。元春は赤いスーツに着替え、メンバーも、軽装となっていた。社会人中心の客席は、ようやくぼつぼつと埋まりはじめたが、8割に満たないくらいであった。佐野元春の首都圏の公演でこの程度の入りというのは、初めての経験である。隣にも、夫婦者らしいカップルが座る。一番気に入らなかったのは、数列前にいる、キャップを被った男性の二人連れであった。奴らは、携帯のカメラをノーフラッシュながら撮り始めていた。これを送信しているらしい。見るからに、佐野元春に対するファン意識がないというか、まったく、客層が違う感じもする。いつかはつまみ出されるだろうと思っていたが、そういうことはなかった。
これは入念にリハーサルを行っていたためだろうか、ほとんどがアルバムの曲順ながらも、まったくといっていいほど演奏には、破綻が見られなかった。考えてみれば、完成まで、4年を要したアルバムなのである。しかし、このアルバムは、セールス的には、あまりよいものとはいえなかった。ただ、コンディション的にも、完成度とも、前のアルバム、『Stones
and Eggs』をしのぐものであり、以前から持っていた佐野元春のポップス的な要素が、散りばめられたものである。「月夜を往け」「君の魂 大事な魂」といった、シングルがなかなかに心地よい。
また、「ブロンズの山羊」改め、「DIG」では、佐橋佳幸とDr.Kyonによるツインギターが会場を揺らす。この時もまだ、元春はギターを手にしていない。元春が再びギターを抱えたのは、次の「国のための準備」という曲であった。こちらは、タイトルからすると、かつての元春らしからぬものであるが、メッセージ的には、反語的なのではなかろうか。また、この曲は、The Milk Jam Tourでは演奏されておらず、こちらとしても聴きたかった曲のひとつなのである。次の「太陽」でメンバーはまた引っ込む。
早くも鳴らされるアンコールへの拍手。しばらくは出てこないだろうと、アニタツ氏と余韻を楽しんでいると、意外にも早く登場するバンドと元春である。ここからは安定して聴いていられる、曲のパレードとなる。3階席ではまったくといっていいほど、冷めていた感じだが、ここでようやく自分も重い腰を上げて、立ち上がることにする。
曲は、「バイバイ・ハンディ・ラブ」。何とも珍しい曲である。もちろんライヴで聴くのは初めて。もちろん、元春はフェンダーを抱えたままである。ここから、数回のアンコールが繰り広げられる。印象的だったのは、「クリスマス・タイム・イン・ブルー」をこのクリスマス・イブの日に演奏したことである。これまたライヴ初体験である。まあ、こんな日でもあるので、たぶんあるかなとは思ってはいたのだが。
それにしても、十分すぎるくらいのパフォーマンスだった。思い返してみれば、1998年、ここ神奈川県民ホールで、インフルエンザのため延期となっていた、振り替え公演では、3時間以上という、演奏をしていたのも元春なのだ。今回もそれに匹敵するような、内容であった。コンディション的にも、その時以上の声の出方のような気がした。
さて、次は、年が明けてのファイナルにも参戦する。こちらも楽しみである。
評価★★★★
Set List
(1) Back To The Street (2) So Young (3) Happyman (4) ヤァ!ソウルボーイ (5)
僕は大人になった (6) また明日 (7) 風の手のひらの上 (8) 99 Blues (9)
Individualist (10) 月夜に往け (11) 最後の1ピース (12) 恵みの雨 (13)
希望 (14) 地図のない旅 (15) 観覧車の夜 (16) 君の魂 大事な魂 (17) 明日を生きよう (18)
DIG (19) 国の為の準備 (20) 太陽
<encore>(21) バイバイ・ハンディ・ラブ (22) アンジェリーナ (23)
クリスマス・タイム・イン・ブルー (24) 悲しきRadio〜HKBメドレー (25) 彼女はデリケート
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