Live Demagogue Vol.1 渋谷On Air East 1999/12/03

某所で、ある雑誌の創刊記念ライヴがあることを知る。ゲスト出演として、Kyonとなんとの伊藤銀次の名前があることまで判明。さらには、内部情報(?)として、スペシャルゲストにさる大物が出るということまで判明。ここは素直に行ってみることにする。

寒かった。この、99/12/03という日は、ぐっと冷え込みがきつい。その中、チケットには、18:00開場とあったものの、実際にドアが開かれたのは、大幅に遅れて、45分くらいは過ぎていたように思う。
オールスタンディングのはずだが、実際には、フロアの両側には、パイプ椅子が並んでいた。しかし、いち早く入場した「オレンジ色」のチケット(招待用らしい)所有者が占領してしまったようだ。ちょうど会場の真ん中あたりに、柵が設けられていて、ここに寄りかかることにする。
程良くBGMが流れていたのだが、突然聞き覚えのある曲に。これは、『Stones and Eggs』ツアーの「Individualist」ではないか。この曲も、ライヴヴァージョンでアルバムに入ってはいるが、紛れもなく、ついこの間聴いたばかりのものである。この瞬間、シークレットのゲストが佐野元春であることに、確信する。

もう、どのくらい時間がたったのだろう。この間に、トイレに立ったので、会場の後ろのスペースにいた。ステージでは、吉野家のCMを歌っているという、若手が熱演中。その若手がいう。「このあとは、まだ名前をいっちゃいけないんですけど、物凄い人が出ます」
!その声とともに、前のスペースに移動をする自分がいた。
セット替えでは、たくさんの楽器が並べられる。スタッフたちの、音のチェックも入念だ。と、その時白いホナーのアコーディオンが持ち込まれる。この使い手は、Kyonしかいない。やはりスペシャルゲストは、佐野元春である。
会場の暗転とともに、バンドが入場。今回は、The Hobo King Bandではなく、一夜限りのユニットだ。やはり、Kyonは、元春になくてはならないキーマンなのだろうか。ドラムとベースは、Grooversから。彼らは、佐野元春へのトリビュート集、『Border』で、「New Age」を取り上げている。また、パーカッションには、里村美和。そして、ステージ右側のギタリスト、彼こそが伝説の伊藤銀次である。このラインナップ、The Heartlandでもなく、The Hobo King Bandでもないが、申し分のないものだろう。
佐野元春は、ここしばらくお馴染みとなった、特徴のあるサングラスをしている。黒と白のチェックのシャツ。そして、赤いフェンダーテレキャスターを抱えている。最初の曲は、「Complication Shakedown」だった。とはいえ、元春のヴォーカルのコンディションは万全ではないようだった。バンドの音とのバランスが崩れ、高音部は割れてしまうような状態。事実、自分も途中になってやっと、「コンプリ」なのだとわかったくらいである。
曲の合間には、語りも入らず、自らギターをかき鳴らし、次のイントロをジャラ〜ンとやって、メンバーとの呼吸を計っているような感じだ。Kyonが、アコーディオンを抱えた。曲は、「君を連れていく」。銀次が入っていることもあって、初期の曲が多いのかと思っていたが、比較的新しいものもやってくれるではないか。間奏部では振り返って、ドラムに向かい、もっと落とすようにとの指示も入っていて、声の調子はいまいちでも、バンドリーダーとしての役割も示している。ギターソロでは、銀次に近づいていく場面も見受けられた。
そして、最後の曲、「君をさがしている(朝が来るまで)」。このあたりになると、声もやや落ち着きを取り戻し、順調に演奏しているように見えた。それにしても、伊藤銀次のいた頃の、ライヴは見たことがなく、ましてや彼の弾くギターによる、「君をさがしている」だから、いいもの見せてもらったという感がとても強い。
最後は、メンバー紹介。「そして最後に…。ギター、伊藤銀次」と締めくくる。「プロフェッサー」という、肩書きはつけなかったものの、ここには、ドクター(kyon)もいたし、楽しめました。そして、来年のデビュー20周年ライヴで、スペシャルゲストでもいいから、銀次の演奏も聴いてみたいなあと感じた。佐橋佳幸と伊藤銀次のツインギターなんていうのも、豪華でいいでしょ。
結局、元春の喋りは、メンバー紹介と、「古い友人の吉原さんが、雑誌を作った。創刊おめでとう」というものだけだった。
ラストでは、全員で「Starting Over」をやったそうだ。もちろん、元春も参加したのだそうだが、残念なことに、これはあるまいと思って、会場を後にしていたのだった。

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