佐野元春 & The Hobo King Band The Barn Tour 大阪フェスティバルホール 1998/03/29
府中の公演が終わり、次の神奈川県民ホールに備えていたのだが、そんなときに「ドクター、インフルエンザにダウン」の情報が。
このために、渋谷公会堂と、神奈川県民ホールは延期に。通信やっていたので、直前に情報をつかめたのですが、この公演、ツアーのラストに組まれることになり、何ともラッキー。
そんなときに、大阪から嬉しい便りが。本来、ツアーファイナルとなる大阪の3日間。この土日の分が、公演時間を繰り上げて存分に楽しめる設定になっているらしく、こちらを見に来ないかというお誘いに、二つ返事で了解。
大阪フェスティバルホールは、重厚な作りである。初めての大阪ということで、何もかもが新鮮に感じる。入口を入ると、ダフ屋が何人もいた。こんなところまで入り込むとは、関西は凄い。
座席は、2階ではあったが、2列目L1という、ちょうど正面の位置。府中は1階だったが、そこよりもステージが近い。
約5分遅れで、ローディが、「逃亡アルマジロのテーマ」をかける。この時から会場は熱気に包まれ、レコードが針飛びを起こす。それでも、何とか最後まで演奏され、曲の終わりと同時にメンバーが登場。最後に元春だ。
1曲目はやはり「Young Forever」。元春は、黒っぽいスーツに、薄緑のシャツ。小田原豊だけが、黒い長袖Tシャツで、他のメンバーはほぼ府中の時と同じような衣装である。
気づくと、ほとんどの人が立ち上がっていた。思い思いに身体を揺らす人の群。足下がぐらぐらと本当に揺れていた。「ヘイ・ラ・ラ」「どこにでもいる娘」と、アルバム『The Barn』からの曲が続くが、エンディングや各ソロのパートのアレンジが、2ヶ月前の府中の時とは違っている。また、府中の時は、ニューアルバムの曲の時の客席の反応が今ひとつであったが、ここではそんなことはなかった。
「ここ大阪は特別な気持ちなんだ」
会場は、当然沸く。大阪は誰もがノリがいいという。自分も負けずに、声援を飛ばし続けた。
「ドライブ」の種まきシーン。今度は見逃さなかった。最後では、府中でもやっていた糸巻きのようなジェスチュアで手拍子を要求するシーンも。
「今日は、インターネットで全世界にこのライヴが中継されている。大阪がどんなに熱い街か、知らせてあげようじゃないか」
「少しだけ僕の話をさせて欲しい。インフルエンザにかかったんだ。今年インフルエンザにかかった人はいるかな?」
客席:「オーッ!」
「頭がおかしくなった人はいるかな?」
客席:「オーッ!」
さすがは大阪。客のノリが違う。筆者も負けずに元春のMCに、反応した。
「Doctor」が終わって、エレピが持ち込まれる。
「ゲストを紹介しよう、Mr.John Simon!」
登場したジョン・サイモンは、阪神タイガースの帽子を被り、客席に向かって、カメラを向ける。そして、たどたどしくも、大阪弁でのメッセージを読み上げ、これには暖かい拍手が。そして、本邦初公開となる、「So Goes The Song」。元春の英語詩に、ジョン・サイモンが曲をつけたものだ。元春はコーラスにまわる。
「もうひとりのゲストを紹介しよう。The Bandで活躍した、Mr.Garth Hudson!」
ガースは、Kyonのアコーディオンを抱えての登場だ。ガースがうんざりするほど長いソロを弾いた後、ジョンの弾いていたエレピに移り、「7日じゃたりない」が始まった。
続いて、「Rock'n Roll Heart」。後半は、元春のハーモニカソロ。ジョン・セバスチャンが出てくるかと思った。
ウッドストックからのゲストが一度退き、元春クラシックスへ。をを、いきなり「約束の橋」だ。Kyonはアコーディオンを抱えながら、キース・リチャーズばりに、観客の「ヘイ!ヘイ!」というかけ声にあわせてキックをかましている。
元春がギターを外して、「太陽だけが見えている」をラップし始める。府中の時は、ハウリングがひどく、ほとんどヴォーカルが聞こえなかったところだ。やはりツアーを重ねていくうちに、裏方さんも頑張ったのだろう。
「まだ踊り足りないだろう。この曲は、『ボーイ』ってタイトルに付くんだけど、必ずしも男の子のことを歌ったものじゃないんだ。その男の子が女の子のことも考えているから、女の子の歌でもあるんだ。知ってる人も多いだろう。一緒に歌おう。いや、世の中不況だから、叫ぶんだ」
叫んだ。叫んだ。<「ダウンタウン・ボーイ」。ここで、メンバーは一度ステージを退く。
アンコールに促され、再び登場した元春は、スーツ着用のままである。センパイ(西本明)や、Kyon、トミー(井上富雄)は上着を脱いでいた。コロちゃん(佐橋佳幸)は、色違いのやはり縦縞ジャケットに着替えていた。アニキ(小田原豊)も柄物の長袖Tシャツである。
元春は、センパイとKyonの間のエレピに位置する。そして始まった「ガラスのジェネレーション」。「♪心はいつもミステリー」というフレーズで、指でクエスチョンマークを作るところが当時と変わらなくて嬉しい。「♪つまらない大人にはなりたくない」という象徴的なフレーズで終わるこの曲の次が、「ぼくは大人になった」である。この曲の後半でメンバー紹介。ジョン&ガースも呼ばれた。
そして二度目のアンコール。元春がついにスーツを脱いで、黒いTシャツと黒いジーンズになった。「悲しきRadio」この曲も初期のライヴでは重要な曲だった。そして、その頃と変わらず、「♪壁に映るあの娘」のボディラインを両手で表したり、「♪クルマのラジオに」右手で指を伸ばしたりする仕種がそのまま入っている。後半は、スローテンポになり、見せ場を持ってくるライヴヴァージョン。
そのまま、初期のステージと同様に、「So Young」にのせて、メンバーを指差していく。
「僕の話をしよう。インフルエンザにかかった。はじめの日は、39.5℃。ベッドの中で深く考えた。世の中で一番大事なことは、"I
Love You"ってことじゃないか。2日目、まだ治らない。もっと深く考えた。本当に大事なことは、"You
Love Me"ってことなんじゃないか。3日目、少し熱が引いたような気がした。でも、脳味噌溶けちゃうかと思った。"I
Love You"と"You Love Me"がひとつになれば、完璧なんじゃないか」
ということで、ライヴだけでやる「I Love You, You Love Me」へ。元春感極まって、舞台前に膝スライディングも。
ここからは、ショートヴァージョンのメドレーが続き、「♪ここに嫌なやつはひとりもいないぜ!」で、各パートのソロとともに再びのメンバー紹介。Kyonは、マンドリンを抱え舞台のモニターより前に出て、左の端から右の端までチャック・ベリーばりのダックウォークを見せてくれた。しかも、自分のパートが終わると、エレピやオルガンに移動。まさに「色々な楽器」状態。最後は、Kyonが、手でアルファベットを作り、元春の紹介である。
ファイナルのホントの最後は、「スタッフの紹介もしたいんだ」とのことで、ローディや照明の方に加え、能地祐子さんも。しかし、ここ二階席からは見えなかった。
名残惜しそうにステージを去る元春とHKB、ジョンとガースたち。お約束のミスター・ビーンもやってくれたが、会場の照明もつき、アンプのスイッチが切られていく。この間、アンコールを促す拍手が10分くらい続いただろうか。「ズッキーニ」が流れ、客は帰り道につく。そして、最後に聞こえる「I Shall Be Released」。
約3時間。この後、仲間と元春たちに乾杯したのはいうまでもない。
評価 ★★★★
Set List
(1) 逃亡アルマジロのテーマ(レコード) (2) Young Forever (3) 風の手のひらの上 (4)
ヘイ・ラ・ラ (5) どこにでもいる娘 (6) 誰も気にしちゃいない (7) マナサス (8)
ドライブ (9) Doctor (10) So Goes The Song(John Simon) (11) 7日じゃたりない (12)
Rock'n Roll Heart (13) 約束の橋 (14) Rock & Roll Night (15) 太陽だけが見えている-子供たちは大丈夫 (16)
霧の中のダライラマ(short version) (17) そこにいてくれてありがとう
<encore> (18) ダウンタウン・ボーイ (19) ガラスのジェネレーション (20)
ぼくは大人になった (21) 悲しきRadio (22) So Young(short version) (23)
I Love You, You Love Me (24) 彼女はデリケート(short version) (25) アンジェリーナ(short
version) (26)Hoo, Hoo
以上、1998年のレポートです。初めての大阪、さすがにショウビジネスにはシビアなところだが、きっちりしたパフォーマンスには、惜しみない拍手が贈られるところだというのがよくわかりました。ここで手に入れたグッズは、能地祐子の「フルーツ・ダイアリー」です。数年前までは、ネットで見ることができたのですが、今や、本で読むしかないというもの。
そして、後日談。
家に帰るべく、飛び込みで新大阪駅で新幹線のチケットを買いました。
16号車で、かなり端。ひかりが滑り込んできて、空いている運転席近くから乗り込み、席について、ふと前の方を見ると、長身長髪の男がいるではないですか。鼻の横にはほくろがあるし、「!!」KYONなのでした。さらによく見ると、サングラスをかけた元春も。気がつくと、ローディやら、マネージャーやら、スタッフもごっそりと乗っているし、阪神の帽子を相変わらず被った、ジョン・サイモンまでがいるではないですか。ノージもいたみたいだし。
その後のワタクシは、佐野ウォッチャーと化したのでありました。トイレは、自分の後ろにあるので、そこに行く振りして、元春に声をかけることは出来ず、何とも残念でした。
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