佐野元春 & The Hobo King Band The Barn Tour 府中の森芸術劇場 1998/01/18

1997年12月に、アルバム『The Barn』をひっさげて、本格的にバンドデビューを果たした元春。初めて聴いたサウンドは、ウッドストック直輸入もので、あまりピンとこなかった。自分自身、The Heartlandとの作品、特に『Someday』あたりの影響が大きく、最近の元春には、過度の期待をしていなかったのもまた事実であった。
しかし、それまでにこの人のライヴには足を運んでいないという弱みがあった。まず、チケットの発売と同時に、電話予約をかけまくった。
この前の『アルマジロ日和』の時には、みごとに即日完売だったので、警戒していてすぐにアクセスしたのだが、仕事が入っていて電話がつながったのがお昼になっていた。
自宅近くのグリーンホール相模大野は、すでになく、神奈川県民ホールがやっと取れた。しかし、もっと行ってみたかったので、しばらくして再びだめ元で電話。何と府中の森が取れた。「ぴあ」なんかでは、チケットの引き取り期限が1週間なので、その分が再び発券されたらしい。
これで2公演は押さえた。そんな時、ニフティで知り合った大阪のJUNTYさんから、大阪ファイナルへの誘いが。彼とは、ネット上でかなりディープなやりとりをしている。また、1月にユーミンのツアー初日で上京した際に、オフ会で顔を合わせてもいる。
しかし、元春のツアーは予期せぬことが起こり、何ともドラマチックな展開を迎えるのである。

雪の影響で、関東地方は大混乱。しかし、この会場には200台収容の駐車場があるので、クルマで出かけた。前日はその準備として、駐車場の雪かきから始める。そして、当日は氷雨。会場には早く着きすぎてしまい、東府中の街をあてもなく散策してみたが、寒すぎる。
早々に、会場に引き返し、開場を待って早速の入場。グッズ売り場でヨットパーカーをゲット。
最悪の天気にもかかわらず、客席はそれほど空席が目立たない。いよいよ客電が落ちて、ローディが現れる。中央にプレイヤーがあり、『The Barn』のアナログディスクをかける。インスト曲の「逃亡アルマジロのテーマ」にあわせて6人の男が登場。会場は早くもヒートアップし、前の方から順に立ち上がり始めた。をを、「Young Forever」早くも体が熱くなる。
佐野元春は、ブルーのサテン地のジャケット&パンツ。シャツは赤。ドラムの小田原豊(彼だけ長袖Tシャツ)を除くメンバーも皆ジャケットを着ていた。井上富雄は、薄いグリーンの上下。佐橋佳幸は縦縞のジャケット。Kyonは、黒いハーフコートに黒いパンツ。西本明は、デニム地の白い上下といういでたちだ。
元春は、MCも挟まずに『The Barn』からの曲で飛ばし続ける。しかし、マイクの調子が悪く、時々ハウリングが起こる。心なしか歌詞も聞き取りにくい。ギターを取り替える元春に、「もとはる〜」「佐野さ〜ん」のコール。それに対して、「ザ・ホーボー・キング・バーンド」と答える元春。あくまでもクールである。
初めての元春のMC。
「今日はこんな天気の中たくさん集まってくれてありがとう。今日は、『The Barn』アルバムの中からもたくさん演奏するけれど、あとで僕のクラシック曲(会場少し笑)からもたくさんたくさん演奏する」
どっと沸く会場。筆者も楽しみである。
前半は、『The Barn』の曲をほとんど演奏。その中の重要な曲の紹介シーン。
「今日、体の調子が悪い人とか、頭(!)のおかしい人なんかいない?」
そう、これは、「Doctor」の前振りである。
そして、「Rock'n Roll Heart」で『The Barn』はおしまいになり、西本明のオルガンからは、懐かしのあのフレーズが。
「♪君は行く」をを、「約束の橋」。ここより元春クラシックスに突入だ。やはり昔の曲にみんな期待しているのだろうか。筆者も声を張り上げて歌う。
続いて、元春はギターを外してラップし始める。ファンクなノリの「太陽だけが見えている」だが、このあたりからハウリングがひどくなってきた。バンドの音はクリアに聞こえるのだが、元春のマイクの調子がひどい。曲名も何とか推測するしかないような状態。
「何か、マイクがキンキンいってて、良く聞こえないけどごめんね。ちょっと大変だけど、そんなに深刻じゃないから大丈夫」
このあたりは、音響のスタッフにジェスチュアで、元春が指示をしていたようである。
さらにクラシック曲は続き、「Rock & Roll Night」に突入。いつぞやの元春の発言で(宿敵渋谷陽一との対談か)「昔の曲はもうやらない。特に、The Heartlandとの想い出のつまった曲はもうやらない」というのがあった。この曲は、当然それに入っているものだと思った。だからとても嬉しかった。The Heartlandでは、ダディ柴田がサックスを吹いていたのだが、ここではそんなことは関係なかった。会場のファンはほとんどが合唱したのではないだろうか(最後のピアニシモになる見せ場を除いて>ここでもやっていたらひんしゅくもの)。
「水上バスに乗って」で一旦退場。去り際に、元春がブームになる前から研究している「Mr.Bean」の服の皺を伸ばす仕種でおどけてみせる。
アンコールは、うわさの「デトロイトメドレー」と、昔の曲のメドレー。そこにあわせてメンバー紹介。をを、この雰囲気は、唯一持っているビデオ『Truth』の中のシーンにそっくりだ。
最後の曲は、もう一度やらせて欲しいとのことで、「Rock'n Roll Heart」だった。このヴァージョンは、Kyonが、アコーディオンを抱えて前に出てくる。2時間ちょっとで、メドレーなども入れて21曲。駐車場からクルマを出すと、雨は上がっていた。
評価 ★★★+1/2★
会場を出るとき、気になったのが、隣にいたファンの一言。「なんか『The Barn』の曲ばかりで、あとはお茶濁されちゃった感じだな」
しかし、満足した。ハウリングはあったものの、CDとは違う曲のパフォーマンスが、このバンドが単なるレコーディングだけではない、ステージでのアクトも最高の部類に入るものだということに。
それに、聴いていて、曲のタイトルがきちんとわかるのだ。この時から、うまくは言えないが、自分の中で『The Barn』が、特別なものに変わり始めた。
Set List
(1) 逃亡アルマジロのテーマ(レコード) (2) Young Forever (3) 7日じゃたりない (4) 風の手のひらの上 (5) ヘイ・ラ・ラ (6) どこにでもいる娘 (7) マナサス (8) 誰も気にしちゃいない (9) ドライブ (10) Doctor (11) Rock'n Roll Heart (12) 約束の橋 (13) Rock & Roll Night (14) 太陽だけが見えている-子供たちは大丈夫 (15) 霧の中のダライラマ(short version) (16) そこにいてくれてありがとう(short version) (16) 水上バスに乗って
<encore> (17) デトロイトメドレー (18) So Young(short version) (19) 彼女はデリケート(short version) (20) アンジェリーナ(short version) (21)Rock'n Roll Heart

以上、1998年のレポートを少し訂正加筆して残しました。ほとんどツアーも、最初の頃で、バンド自体があまりおぼつかない感じだったようです。府中芸術劇場も、あれ以来行ってないなあ。この時には、ヨットパーカーと、Tシャツをゲットしています。未だに着ていますね。

ヨットパーカー Tシャツ

佐野元春に戻る ライヴレポート

TOP INDEX