Sweet 16/佐野元春

Sweet 16

01 ミスター・アウトサイド(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
02 スウィート 16(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
03 レインボー・イン・マイ・ソウル(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
04 ポップチルドレン<最新マシンを手にした陽気な子供たち>(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
05 廃墟の街(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
06 誰かが君のドアを叩いている(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
07 君のせいじゃない(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
08 ボヘミアン・グレイブヤード(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
09 ハッピー・エンド(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
10 ミスター・アウトサイド<リプリーズ>(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
11 エイジアン・フラワーズ(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
12 また明日…(佐野元春/佐野元春/佐野元春)

Produce:佐野元春
ESCB1308
1992/07/22発売

時代背景

佐野元春の8枚目のスタジオ録音アルバム。前のアルバムから2年間のブランクがあるが、この間に元春の父親が亡くなり、佐野元春は、いったん音楽活動を休止し、父の会社の整理などを余儀なくされていたという。そして、すべてを片づけ、再びミュージックシーンに戻ってきた彼には、それまでため込んでいたようなダウナーな傾向は全くなく、吹っ切れている。アルバム全体の色調は明るく、はつらつとした印象だ。ジャケットの裏には、それまで普通の社会生活を送っていた証拠にずいぶんと髪の短い元春が写っている。
アルバムジャケットにはチェリーパイの写真。初回のプレスでは外箱がつけられ、ホーム・デリバリーの文字も見られることから、このころから定着してきた宅配の食品をイメージしているようだ。佐野元春が常々発言しているところでは、自身の音楽は何層にも重ねられたパイのようなもので、複雑な美味しさがあるともいっている。おそらく、それをこのアルバムでは実現したのだろう。楽曲自体は多様であり、にもかかわらず、1枚のアルバムとしてまとまっている。
アルバムでは、ジョン・レノンの妻であったオノ・ヨーコと息子のショーンとの共演、矢野顕子との共演も見られ、素晴らしい仕上がりである。また、ずいぶんと久しぶりにバックバンドのThe Heartlandを完全にフィーチャーした作品でもある。そして、この作品によって、佐野元春は完全にミュージックシーンに復活したばかりでなく、オリコンアルバムチャート2位という成功も収めたのである。

楽曲解説

ミスター・アウトサイド
雷の音から始まる。図らずも、これはレコーディング中に鳴りだしたものであるという。雷の音とともに、パーカッションの響きが伝わってくるのは、まるで台地の響きのようである。限りなく続く、「♪ミスター・アウトサイド」のリフレイン。ただそれだけだが、限りなくメッセージ性があると感じるのは、筆者だけであろうか。ところで、佐野元春らをインタビューした長谷川博一の「ミスター・アウトサイド」は、ここから取られたのかと思っていたが、そちらの出版の方が先であった。
スウィート 16
佐野元春は、16という数字を「男の子のマジックナンバー」と表現している。それは、自身がバイクの免許を取り、高校生にして放浪生活を始めたことなどにも由来することだろう。また、この曲は、シングル「約束の橋」(シングルヴァージョン:ドラマの主題歌)のカップリングとしてもリリースされている。そのような思いをこめた曲のため、元春自身の思い入れも大きいものと思われる。前の曲から、インターバルなしで唐突に始まるイントロ。ここでは、佐野元春らしく、疾走感あふれる会心作である。おそらく、それまでのもやもやを吹っ飛ばすような意欲が湧いてきたものだろうと思われる。
レインボー・イン・マイ・ソウル
こちらは、ミディアムテンポながら、ダディのサックスも十分にフィーチャーされ、壮大な感じもする曲である。初めて黒人女性のMaxin Lewisをフィーチャーした曲であり、この後、Sexton姉妹とともに、欠かせない存在となるきっかけともなった。こちらも、次のアルバムの先行シングルとなった、「彼女の隣人」のカップリングとしてリリースされている。ところで、この時期キーボードの西本明はThe Heartlandを離れていたが、この曲にだけは参加している。
ポップチルドレン<最新マシンを手にした陽気な子供たち>
おそらく詞が先行されて作られたものだと思われる。というのも、この曲は、ポエトリー・リーディングでも取り上げられ、これがまた、とてつもなく、ポップなのである(アルバム『Spoken Words』収録)。かなり散文的な詞の内容であり、楽曲化するのも難しかったはずだが、逆に佐野元春はこういうことも得意分野のようだ。The HeartlandとTokyo Be-Bopの演奏が素晴らしく、かっこいい。アルバムリリースから一昔以上経った今でも、新鮮に聴くことができる。
廃墟の街
曲というよりは、ポエトリー・リーディングに近い。だが、きちんと演奏もつけられている。実は、こちらも、アルバム『Spoken Words』では、ポエトリー・リーディングとして、収録されているのだ。「ポップチルドレン」よりは、やや明るい内容。そして、ややスローなテンポである。また、冒頭でも使われた、雷の音が効果的にここでも使われているのが印象的だ。
誰かが君のドアを叩いている
こちらは、正真正銘のシングル。オリコンチャート9位を記録した。また、佐野元春としては珍しく、テレビCMとタイアップし、確か、本人も出演したのではないだろうか。マンドリンがフィーチャーされているが、クレジットによると、佐野元春本人のもの。
君のせいじゃない
どちらかというと、怒りに満ちたような作品。アルバム『Time Out!』の作風に近いか。
ボヘミアン・グレイブヤード
一転、明るい作風。最も、タイトルは「放浪者の墓地」という意味なのだが。中間のブラスは、珍しく、ボーン助谷のトロンボーン。
ハッピー・エンド
こちらは、原曲は「ブッダ」という曲である。佐野元春20周年を期に発売されたコンピレーションアルバムの『Grass』に収録されているが、そちらは、バックの演奏がこちらほど分厚くない。
ミスター・アウトサイド<リプリーズ>
オープニングナンバーの繰り返しながら、インパクトはあると思う。この曲のあとの収録曲は、いささかタイプのことなるものだが、それをうまくつなげる役割があるのかも知れない。
エイジアン・フラワーズ
オノ・ヨーコと息子のショーンをフィーチャーした作品。まだ当時は、ショーン・レノンといえども少年時代であり、佐野元春がジョン・レノンへのオマージュとして二人を招いたものではなかろうか。曲としては、幻想的な感じに仕上がっている。もともとは、「ディズニー・ピープル」という作品で、詞が書き直されている。「ディズニー・ピープル」の方は、『Grass』という、20周年記念のコンピレーションアルバム第2弾のオープニングナンバーとして収録されている。こちらは、かなり疾走感のある内容で、楽曲自体は「ディズニー・ピープル」の方が筆者の好み。ただ、アルバムコンセプトとしては、「エイジアン・フラワーズ」はなくてはならないものである。
また明日…
矢野顕子とのデュエット。そして、2曲目のシングルカット曲である。矢野顕子とのコラボレーションは、矢野顕子のアルバム『Granola』で「自転車でおいで」をデュエット。また、矢野顕子のアルバム『Super Folk Song』の中で、「Someday」をカバーしたりしている関係でもある。こちらのシングルとしては、オリコンチャート22位にとどまっている。

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