Cafe Bohemia/佐野元春

Cafe Bohemia

01 Cafe Bohemia<introduction>(佐野元春/佐野元春)
02 冒険者たち<Wild Hearts>(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
03 夏草の誘い<Season In The Sun>(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
04 カフェ・ボヘミアのテーマ<Cafe Bohemia>(佐野元春/佐野元春)
05 奇妙な日々<Strange Days>(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
06 月と専制君主<Sidewalk Talk>(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
07 ヤングブラッズ<Youngbloods>(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
08 虹を追いかけて<Chasing Rainbow>(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
09 インディビジュアリスト<Individualists>(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
10 99ブルース<99Blues>(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
11 Cafe Bohemia<interlude>(佐野元春/佐野元春)
12 聖なる夜に口笛吹いて<Christmas Time In Blue>(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
13 Cafe Bohemia<reprise>(佐野元春/佐野元春)

Produce:佐野元春
ESCB1325
1986年12月1日発売

時代背景

30代を迎え初めて佐野元春がリリースした5作目のアルバム。佐野元春のアルバムにも、いよいよCD化の波が押し寄せ、ここからは、アナログとデジタルの両面のリリースとなる。ただし、アナログ世代の佐野元春は、とことんアナログにこだわり、シングルなどでは、12インチヴァージョンのリリースを行っていた。
ここでは、前のアルバム『Visitors』での実験的な試みをやや引っ込めるとともに、初めてバックバンドのThe Heartlandと作り上げた作品でもある。アルバムコンセプトとしては、架空のカフェに集う人たちに向けての演奏といったものが見られるが、先の作品で取り上げたヒップホップやラップの手法も違和感なく取り込んでいて、さらなる羽ばたきを予感させられるものであった。
また、この時代のThe Heartlandでは伊藤銀次が抜けた後任として、横内健広が加わっていたが、再び不在となり、ほぼ全面的に佐野元春がギターを弾いている。また、パーカッションとして、里村美和が加わっていた時期でもある。そして、ここからダディ柴田以外にも、ブラスセクションとして、Tokyo Be-Bopが加わることになる。メンバーは、ダディ柴田(sax)、石垣三十郎(tpt)、トロンボーンボーン助谷(trb)。

曲解説

Cafe Bohemia<introduction>
人々のささやき声から始まり、ブラスのちょっとした音出しで終わる曲というよりは、効果音のようなものだが、これから始まるパフォーマンスの幕開けに沿うような効果があるのだろう。
冒険者たち
先行シングルとしてリリースされたが、それも3タイトル目。アルバム発売の時点では、もっとも新しいシングルで、当時の筆者には、佐野元春の新しい幕開けのような印象があった。ブラスセクションが加わったが、西本明のみのピアノという編成で、割とシンプルな演奏を聴かせてくれる。サウンド的には、佐野元春らしく、単音の連続であまりメロディがないが、後に広がる世界のようなものが連想できた。曲の詞は、元春一行が仕事で富士五湖へ向かう途中にラジオから流れる曲に対する、元春のコメントが元になっているらしい。(参考文献:「ミスター・アウトサイド〜私がロックを描くとき」大栄出版 長谷川博一著)
夏草の誘い
先行シングル、第2弾。全面に渡って、Romyというシンガーが起用されていて、クレジットはヴォーカルである(コーラスとかバッキング・ヴォーカルではなく)。Romyは後に、m's factoryのコンピレーション作品でブルーベルズとして佐野元春とデュエットしたり、シングルもリリースされたが、今ではどうしてしまったことか。何でも、佐野元春が異様に彼女をプッシュしていたらしいが。正式には、石川ひろみという、石川セリの妹であったらしい。
カフェ・ボヘミアのテーマ
アルバムの核ともなる、インストゥルメンタル曲。元々佐野元春はジャズにも興味があって、佐藤奈々子あたりとのコラボレーション時代には、ジャジィな感じで曲を作っていたこともあるようだ。佐野元春はピアノで参加していて、はじかれた格好のキーボーディスト阿部吉剛がギターに回っている。
奇妙な日々
先行ファーストシングル。ここから、2ヶ月おきに3連続のシングルリリースとなるのだが、それまでにもまたそれ以降にも、なかった試みを行っている。アコースティックな感じであり、佐野元春は12弦ギターを演奏している。通常のギターは、窪田春男が駆り出されている。プリティフラミンゴス参加となった最後の曲でもある。
月と専制君主
後にリリースされる、12インチシングルの「99ブルース」のB面にextended versionが収録されている。それまでにない持ち味でイントロ付近は構成されているが、後半のシャウトするフレーズがいかにも佐野元春らしい。まだ、この当時もこんな感じで表現できるヴォーカリスとはいなかったとつくづく感じる。
ヤングブラッズ
国際青年年のテーマソング。前年の冬にシングル、春に12インチヴァージョンがリリースされ、ほぼ1年間NHKで流されていた曲だ。ブラスのイントロが斬新で、ここからブラスセクションを強化したのだろうというのが伺われる。また、コーラスでは、久しぶりとなる、プリティ・フラミンゴスが加わっている。ある筋からは、ポール・ウェラーのユニットスタイル・カウンシルあたりに似ているという指摘もあるのだが。
虹を追いかけて
アルバム中の作品では、かなりメロディアスであり、極端な違和感はないものの、あまりさの元春らしくない作品とも言えそう。
インディビジュアリスト
耳慣れない言葉だが、「individualist」というのは、個人主義者のこと。ラップやヒップホップの手法だが、ここでは見事に違和感なく取り込んでいる。今でも、ライヴシーンでは重要な曲で、最近のパフォーマンスでは、元春がパーカッションを叩きながら、歌う。アルバム内では、ピアノの阿部吉剛がギターを弾いている。また、珍しくバックに男性コーラスを起用しているが、これは外国人である。翌年12インチシングルがリリースされる。
99ブルース
ヒップホップ二連発。こちらも、今でも演奏される曲である。よほどお気に入りらしい。こちらは、古田たかしの他に、ドラムマシーンを使用していて、重厚なビートが刻まれている。アルバム発売から半年後に12インチヴァージョンでシングルがリリースされた。里村美和のパーカッションが際だった作品でもある。
Cafe Bohemia<interlude>
曲名は「Cafe Bohemia」となっているが、他のものとは違う。文字通り曲間のつなぎのような役目を負うものだが、佐野元春には、このようなインスト曲も重視する傾向があるようだ。演奏は、佐野元春と西本明のみで行われた。
聖なる夜に口笛吹いて
佐野元春にとっての初めてのクリスマスソング。12インチシングルとして、前年の冬にリリースされている。この時期のThe Heartlandには、ギタリストとして元Tensawの横内健広が在籍していて、クレジットに明記されている。また、スカのサウンドを取り入れた初めての曲で、アルバム内では、西本明がシンセサイザーで弾いている。また、全面的にプリティ・フラミンゴスがコーラスで加わり、女性の声による暖かさのようなものが加味された。
Cafe Bohemia<reprise>
タイトルチューンのインスト曲。いかにも終わりらしく、曲の途中から始まっていて、人々の声などの雑音が重なるという手法。

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