Someday/佐野元春

someday

Disc One
01 Sugartime(佐野元春/佐野元春/佐野元春・大村雅朗)
02 Happy Man(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
03 Down Town Boy(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
04 二人のバースデイ(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
05 麗しのドンナ・アンナ(佐野元春/佐野元春/佐野元春・大村雅朗)
06 Someday(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
07 I'm In Blue(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
08 真夜中に清めて(佐野元春/佐野元春/佐野元春・大村雅朗)
09 Vanity Factory(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
10 Rock & Roll Night(佐野元春/佐野元春/佐野元春・大村雅朗)
11 サンチャイルドは僕の友達(佐野元春/佐野元春/佐野元春)

Disc Two
01 Sugartime<single version/mono mix>(佐野元春/佐野元春/佐野元春・大村雅朗)
02 スターダスト・キッズ(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
03 バイバイ・ハンディラブ(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
04 ワンダーランド<mono mix>(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
05 マンハッタンブリッジにたたずんで(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
06 So Young(佐野元春/佐野元春/佐野元春)
07 Down Town Boy<original versiton>(佐野元春/佐野元春/佐野元春・大村雅朗)
08 サンチャイルドは僕の友達<anither mix>(佐野元春/佐野元春/佐野元春)

Someday Collector's Edition

Produce:佐野元春
ESCB1322/ESCL2314-5
1982年5月21日発売

時代背景

デビュー以来疾走を続けてきたものの、この頃の佐野元春は、活躍が必ずしもセールスに結びついていたわけではなかった。しかし、伊藤銀次との出会い、The Heartlandの結成によって、ライヴシーンでの表現力が付いてきた。また、サウンド面でも、大瀧詠一コラボレーションのNiagara Triangleへの抜擢によって、その力を吸収しつつあった頃である。知名度も、NHKサンウドストリートなどにより、ぐんぐんあがって来つつあった頃、まさに日の出の勢いの作品集ともいえよう。
佐野元春は、いかに日本語にビートを乗せていくかという問題に直面し、ちょっと聴いただけでは何をいっているのかわからないような、サウンドに言葉をマシンガンのように詰め込んで次々にシングルを出していった。それまでの日本のロックが、古典的なある種のスタイルにとらわれていたことに対して、ブルーカラーでなくとも、汗水流さなくとも、町の生活に基づくごく普通の出来事をティーンエイジャーもしくは、大人になりきれない視点から描いたということが、佐野元春の大きな革命であったといえよう。これは、その後のミュージックシーンで、佐野元春のスタイルをまねたフォロワーが続出したことからも、伺える。
アルバム全編に流れる、フィル・スペクターばりの、音の壁。ここでは、ロックとポップスの中間的な要素を含んでいると思われるが、あくまでも表現したいものは、ロックのスタイルを貫きたかったと思われる。しかし、ジャケットでは、セールス面を期待して、髪を切り、それまでと違った佐野元春がいる。このあたりだけは、上層部と妥協しなければならなかったようだ。
また、アルバム発売20周年を期に、『Someday Collector's Edition』が発売になっている。2枚組であり、1枚目はオリジナルと同じトラック(もちろん、リマスター済み)だが、2枚目はヴァージョン違いとか同時期に制作されたコンピレーションアルバム『Niagara Triangle Vol.2』(大滝詠一、杉真理、佐野元春)に収録されたものなどがリマスターされている(当然『Niagara Triangle Vol.2』もリマスターされて発売。)。(2004/03/07追記)

曲解説

<Disc One>
Sugrartime
アルバムからのファーストシングル。とはいえ、当初は詞がシリアスすぎて曲調のポップさと対照的に、かなりネガティブなものだったようで、3回ほど書き直されているらしい。途中の囁きの部分が、シングルヴァージョンとは違っている。このあたりの小細工は、大瀧詠一仕込みかもしれない。コーラスには、Niagara Triangleで一緒だった杉真理が友情参加している。
Happy Man
アルバムからのセカンドシングル。途中のわいわいやっているところが、パーティみたいでなかなかイカしている。「♪ただのスクラップにはなりたくないんだ」というところが、いかにも当時の佐野元春らしい主張がある。言葉がマシンガンのように詰まっているが、こちらは曲先行でできたと思われる。
Down Town Boy
5枚目のシングルだが、アルバムでは、リテイクされたものが収録されている。アルバムではややスローな感じで演奏されている。筆者は、シングルヴァージョンの方が好きで、ドラムの音が立っているのだが、アルバムのコンセプトとややはずれるところがあるようなので、録り直されたのかもしれない。街の風景をつづったようなものと捉えられがちだが、実は、「本当のものより綺麗なウソに夢をみつけてるあの娘」とは、佐藤奈々子のことである。
二人のバースデイ
「♪君のバイオリンはこれから先二度と聞けないような神秘的な調べを奏でてくれた」というフレーズ、正に詞が先にあって、メロディを後からつけたという典型だと思う。とはいえ、その詞も、ビートに乗っていて、まさに佐野元春という感じの小品。3人になった、プリティフラミンゴスがバックコーラス。
麗しのドンナ・アンナ
佐野元春自身がストーリーテラーになって、街の情景を歌った典型である。「ポケットで吠え続けている哀れなファイト」というフレーズは誰にも真似できまい。アルバム用の書き下ろし曲。
Someday
4枚目のシングル。アルバムに先立ちだいぶ前の発売だったが、そのときはほとんど話題にもならなかったように思う。しかし、佐野元春を語る上で最も重要な曲のひとつである。おそらく十代の頃を回顧して壮大なテーマにした曲であるが、The Heartland解散とともに、ライヴシーンではあまり演奏されなくなったこともある。しかし、ツアーのファイナルなどでは、必ず演奏され、見るものの心を掴んで離さない曲。筆者も、The Barn Tourファイナルでは、不覚にも涙が。後に、プリティフラミンゴスの一員であった、白井貴子がカバーしている。冒頭のクルマのクラクションや、タイヤのスリップ音は、元春が広告代理店に勤めていた頃、ロスに仕事でいった際に街で録音したもの。これはこれなりに意味があるのである。この曲から、吉野金次のミックスが行われたことになる。
I'm In Blue
沢田研二に曲提供している。曲自体は、デビュー当時からあった模様で、デモ盤なども制作されていたらしい。当初は、平行して録音された、Niagara Triangle用だったらしい。結果的にセルフカバーとなったが、やはり沢田研二ヴァージョンよりも、聞き慣れた分、カッコイイ。
真夜中に清めて
佐野元春らしからぬ、やや世俗的な曲か。これも、次の曲へのつなぎと考えれば、まあ納得できるが。サビの部分で、いつもの元春節が復活するのが、何ともいえない。こちらもアルバム用の書き下ろし曲。
Vanity Factory
こちらも沢田研二に曲提供されている。コーラスに、そのジュリーも参加。結構存在感のある声を聴かせてくれるが、元春のヴォーカルと好勝負を展開している。ジュリーヴァージョンよりもさらにGS的な音に仕上がっていて、スピード感も十分。筆者はかなり好きな部類に入る。
Rock & Roll Night
佐野元春を語る上でこれまた欠かせない重要な曲。ツアーなどでも終盤に演奏される。アルバムでは、バックバンドのThe Heartlandをあまり起用しなかったのだが、この曲だけは参加させている。バイク事故でなくなった友人にまつわる思い出から、26歳当時の佐野元春に関係する事柄までが走馬燈のように歌われる。
サンチャイルドは僕の友達
唯一佐野元春がアルバム内で、アコースティックギターを弾いている曲。サウンド面でもシンプルで、それまでの壮大な曲が並ぶ中、潔い終わり方をしていると思う。コーラスは伊藤銀次、キーボードに西本明、キックドラムが小野田清文というクレジットである。
<Disc Two>
Sugartime<single versiton>
こちらはシングルヴァージョンであり、途中の囁きがアルバムのものとは違うフレーズが入っている。ただし、これは、同じシングルヴァージョンでも、AM放送用に作られたモノラル版であり、中音域を強調することでヴォーカルを前に出すような感じに仕上がっているという。
スターダスト・キッズ
シングル「Down Town Boy」のカップリングとしてリリース。冒頭のハープは佐野元春自身が吹いている。この後、アルバム『No Damage』に収録されてもいるが、ハープは、ブラスに差し替えられ、コーラスに杉真理を起用したりしている。また、後にシングルとしても(カップリングは「ソー・ヤング」)リリースされた。
バイバイ・ハンディラブ
シングル「Someday」のカップリングとしてリリースされている。こちらも、アルバム『No Damage』に収録されているが、歌詞の一部が本人によってカットされている。オリジナルヴァージョンとしてCD化されるのは初めてである。
ワンダーランド
シングル「Sugartime」のカップリングだが、この楽曲だけは、これまでどのアルバムにも収録されず、ほとんど幻のようなものであった。曲はソニーのウォークマンのCM曲として流れていて、濃いファンにとっては、ついに聴けるようになったという思いが強いだろう。
マンハッタンブリッジにたたずんで
オリジナルは『Niagara Triangle Vol.2』に収録されている。ところで、『Niagara Triangle Vol.2』とアルバム『Someday』とは、ほとんど同時進行のような形であり、この曲も、実はアルバム『Someday』に収録されるところを、大滝詠一がナイアガラの方に持って行ったという曰く付きの曲である。当時のアルバムは塩化ビニール製のレコードであり、A面とB面をひっくり返す必要があった。B面のハイライトとする計画もあったそうで、そのために、収録曲が大幅に変わってしまったという。ラストの「サンチャイルドは僕の友達」はこのアクシデントによって、付け加えられたとのことだ。シングル「Happy Man」のカップリングをこの曲とすることで、元春自身の心の中では、「マンハッタンブリッジにたたずんで」もアルバム『Someday』の一部なんだというひっそりとした主張をこめていたようだ。ちなみに、『Niagara Triangle Vol.2』の表記は「マンハッタンブリッヂ」となっていた。
So Young
元々は山下久美子に提供したもので、彼女のアルバム『雨の日は家にいて』のオープニング曲である。佐野元春としてはセルフカバーということになるが、シングル「スターダスト・キッズ」のカップリングとしてリリースされ、また後にアルバム『No Damage』にも収録された。ただし、アルバムの方にはハンドクラッピングやサックスが付け加えられている。また、山下久美子のヴァージョンは「♪ジェスチャーに見せかけたジェスチャー」ではなく、「♪ジェスチャーに見えさせちゃいやよ」という、言葉遣いになっているのだが、どこかアンサーソングっぽくないか。ちなみに、山下久美子ヴァージョンは伊藤銀次のアレンジである。
Down Town Boy<original version>
こちらは、シングルヴァージョンでもある。このころより佐野元春からはどちらかというと疎まれるようになった、大村雅朗が関わっているが、かなりスピード感があって、筆者はこちらが気に入っている。「スターダスト・キッズ」とのカップリングで、シングルがリリースされている。
サンチャイルドは僕の友達<another mix>
オリジナルとのテイク違い。ラストにミキサーブースにいた、伊藤銀次の声までが入っているところが、コレクターズアイテムだろうか。元春の弾くギターの感じがお気に入りの中川イサトみたいだったかららしい。

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