Heart Beat/佐野元春

Heart Beat

01 ガラスのジェネレーション(佐野元春/佐野元春/伊藤銀次)
02 Night Life(佐野元春/佐野元春/伊藤銀次)
03 バルセロナの夜(佐野元春/佐野元春/大村雅朗)
04 It's Alright(佐野元春/佐野元春/伊藤銀次)
05 彼女(佐野元春/佐野元春/佐野元春・大村雅朗)
06 悲しきRadio(佐野元春/佐野元春/伊藤銀次)
07 Good Vibration(佐野元春/佐野元春/大村雅朗)
08 君をさがしている<朝が来るまで>(佐野元春/佐野元春/伊藤銀次)
09 Interlude(佐野元春/佐野元春)<instrumental>
10 Heart Beat<小さなカサノバと街のナイチンゲールのバラッド>(佐野元春/佐野元春/伊藤銀次)

Produce:佐野元春 Ex.Produce:小坂洋二、佐藤文彦
ESCB1321
1981年2月25日発売

時代背景

デビューアルバムは、一部評論家には一定の評価を得ていたものの、アルバムセールス的には芳しいものではなかった。そんな中で、テレビ神奈川「ファイティング80」というレギュラー番組を持ち、ここから自身のバンドThe Heartlandを立ち上げ、また、ラジオでは、NHK「サウンド・ストリート」のレギュラーDJとしても、活躍の場を広げて行っていた。
初期のThe Heartlandは、「ファイティング80」のもうひとりの司会、宇崎龍童に初めての演奏で酷評されたくらいで、ライヴパフォーマンスは最低のものだったようだ。当時のライヴ活動として、横浜にある、サンドウィッチ屋「舶来屋」で時々演奏していたようだが、その上が産婦人科ということもあって、これからというときにストップがかかったりという、非常に恵まれない状況であった。そんなとき、「ファイティング80」に、「松原みき&カステラムーン」のひとりとして出演した、伊藤銀次と再会。バンド参加を要請する。銀次も「松原みき&カステラムーン」の活動と平行して、参加を承諾していった。そして、新宿ルイードでの活動が始まる。

曲解説

ガラスのジェネレーション
ピアノのコードだけから始まるイントロが、印象的。当時の佐野元春は、ピアノプレイに執着していて、この曲も自分がフロントに立って、ピアノ演奏をするというところから、書かれたものだろう。実際当時の映像などを見ていると、そうしたものが顕著だし、実際のライヴでもこの曲だけはキーボードをプレイしているようだ。しかし、レコーディングでは西本明がここから参加している。「アンジェリーナ」からだいぶ間をおいたセカンドシングルとして、先行発売されている。「♪つまらない大人にはなりたくない」というフレーズが印象的。プリティフラミンゴ、ミッドナイトカンガルーなどの元春用語も初登場である。
Night Life
サックスから始まるイントロ。とはいえ、これはダディ柴田ではなく、ジェイク・コンセプションである。当時すでにThe Heartlandを結成していたものの、レコーディングメンバーとして使えるのは、西本明と伊藤銀次くらいだった。もちろん、プロデューサーの意向もあるが、The Heartland自体の演奏力というものもあまり高くなかったのだ。また、固定したメンバーでもなかったようである。さて、ここではおしゃれな夜の過ごし方(もちろん女の子との)について歌われているのだが、まったく汗臭くなく、昼間部の「♪彼女のパパ ちょっときびしすぎる」という部分が秀逸。やはり、「♪Living In The City/The Night Life」なのである。アルバム発売と同時にシングルとしても発売された。
バルセロナの夜
実は、デビュー直前に録音されていたもの。そのために、アレンジャーが大村雅朗である。かなりスウィートな感じに仕上がっている。初期の佐野元春の楽曲にしては、外来語のない曲。
It's Alright
「ガラスのジェネレーション」とのカップリングのB面曲。前の曲とは一転、外国語だらけ。とはいえ、「Oh Yea」とか、意味のない単語の羅列と違って、何となく雰囲気は伝わってくる。佐野元春の歌は、「何を歌っているのか聞き取りづらい」などという意見を筆者も同年の友人からもらったことがあるが、このコンセプトは、できるようでできない。けっこう考えられた節があると思う。
彼女
特にクレジットがないが、ピアノは佐野元春。この曲も実はデビュー直前に録音されていたもの。オーケストラ部分は後に付け加えられたものである。アルバム自体は、伊藤銀次主導の作業であったはずだが、新人であるから、こうしたものは仕方ないか。とはいえ、名曲であり、『20th Anniversary Edition』にも新録で入り、「ミュージック・フェア」でも演奏された。これも、今は亡き、大村雅朗へのはなむけではなかろうか。
悲しきRadio
佐野元春の永遠のロックンロールナンバー。このアルバムから、前作にあったような、佐野元春自身を全面に出したような曲作りは影を潜め、街の彼と彼女の描写に物語の主題が置き換えられている。そして、冒頭のピアノのフレーズは、西本明。この出会いが、両者にとってプラスに作用したことはいうまでもない。
Good Vibration
こちらも、『Back To The Street』のアウトテイクである。バッキングコーラスに、なかやまてゆきが参加。彼女は、後に初代「プリティ・フラミンゴス」のメンバーともなっている。曲としては地味だが、女性コーラスが参加したはじめての作品である。このコラボレーションが、佐野元春の作品に大きく厚みを加えたのはいうまでもない。「Nihgt Life」のB面曲でもある。
君をさがしている<朝が来るまで>
学生時代に原曲は完成していた。しかしそれは、この形とはだいぶ雰囲気を違えていたもののようだ。伊藤銀次によって、フォークロック調にアレンジされ、なかなか味わいがある。後のThe Hobo King Bandにより、再び演奏されることが多くなったのは、嬉しい。この曲も、『20th Anniversary Edition』に新録で収録。
Interlude
佐野元春初のインストゥルメンタル。佐野元春は意外にもインスト曲がかなりあったりする。こちらは、次の「Heart Beat」へ続くイントロのようなものであるが。
Heart Beat<小さなカサノバと街のナイチンゲールのバラッド>
こちらも、佐野元春のコンサート必須曲。やはりこれがあると盛り上がる。前作にはこのようなものがなかった。7分余りもある大作で、こうしたものも、ビッグになっていく条件のひとつなのだろうか。何故かカラオケにもこのテイクがあって、歌うと人々を引かせること必至である。

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