『新人の松原みきのバックを依頼されて、バンドのメンバーを好きに選んでいいと言われて出来たのがカステラ・ムーン。メンバーは
伊藤銀次(ギター)、岡島文(ベース)、板倉雅和(キーボード)、西本明(キーボード)、田桑一郎(ドラムス)、笠原紀(サックス)。活動時期は79年から81年まで。
それで松原みきの担当ディレクターが佐野元春のアレンジを依頼して、元春をやる事になった』(雑誌「ミュージックステディ」No.7 山下達郎と伊藤銀次の対談より)
この担当ディレクターというのが、佐藤文彦(ジャンボ)さん。語っているのは伊藤銀次です。カステラ・ムーンは、レコーディングには参加できなかったようですが、何とも豪華なメンバーじゃないですか。
んで、このうちの銀次と、西本明がThe Heartlandに行ってしまうのだから。なお、やはりThe Heartlandにいた、阿部吉剛(キーボード)も、みきさんのバックについていたと、『Golden Ring』のライナーには記述がありました。
今をときめく、佐野元春と松原みきとの接点、こんなところにも不思議さを感じてしまいます。
最近出た、近田春夫著「定本・気分は歌謡曲」によると。
時間はかかるんじゃないかと思うんだけど、この松原みき(「愛はエネルギー」)は、売れるんじゃないかしらん?
テクニシャンです。容姿もどうして、なかなか男好きするタイプです。いわゆるフュージョン系のミュージシャンたちが、このコに一目置いているらしい(もともと、これは宣伝用のパンフレットにそう書いてあったのをウノミにしているんだけど)。まあ、洋楽好きな人たちにも、十分受け入れられるタイプで、ニューミュージックっぽいコではありますが、このコには、どうも芸能界的な根性がありそうなんだよね。そう、小柳ルミ子みたいな”ガンバっちゃう”精神がね。何となくなんだけど、そんな気がしてならないのであります。(80/2/10)
さらには、1998年時点での対談もあって。
川勝「松原みきは時代的に言うとフュージョン。「真夜中のドア」とか、今でもたまにかかりますよね。ラジオで。名曲です」
近田「この子、ド近眼だったんだ。それで覚えてるんだよ」
その1年以上あとでは。
今回は、「春咲小紅」vs「ニートな午後3時」なのだが、それにしても、春夏秋冬、S社もK社もよくがんばるものである。ちなみに、このようにコマーシャル合戦がハデになったのは、「時間よ止まれ」と「Mr.サマータイム」が両方とも1位になったころからだと思うのだが、しかし、今回ぐらい、楽曲に、スポンサーのイメージがピッタリだったことは過去一度もなかったような気がする。
まず、「ニートな午後3時」だが、この土くささと、その間に見えかくれする都会的なニュアンス、軽そで重たいこの感じ、K社のイメージにピッタシだと思いません?つまり、田舎の人に都会というものをテイネイに、テンポゆっくりと教えてさしあげる雰囲気、さすがだな、と思いました。ニートというコトバも(すいません、ニートってどういう意味かワシ知らんのです)まさに”あこがれの都会”そのものだもんね。
(中略)
で、今回は、「ニッニッエブリデイ」と、「ホーラハルサキクッベニー」になったんでしょうが、どっちが勝っても時の運、S社もK社もがんばってね。
そして対談では。
井上「S社は資生堂、K社はカネボウですよね。でさ、近田さん、この原稿で資生堂とカネボウを取り違えてるんだよ(笑)。実際は松原みき「ニートな午後3時」が資生堂で、矢野顕子「春咲小紅」がカネボウ」
近田「間違ってたか」
ううむ、近田春夫も注目していたかあ。