Eagles 2004 Farewell I 東京ドーム 2004/10/30

友人のアニタツさんから、夏頃イーグルスに行かないかとの連絡が入る。音楽を聴くようになってから、イーグルスは最も身近にあったといってよい。小遣いの関係から音源を購入することはなかったものの、ラジオのヒットチャートで「魔女の囁き」を耳にして以来である。その後、自分もやや成長して、「Hotel California」あたりでは、やや背を向けていたこともあるのだが、1980年の解散からしばらくたって、就職しある程度まとまった金を使えるようになり、コンパクト・ディスクの時代になってから、アルバムをすべてではないが購入してきた。レンタル店などでも、アルバムを借りてきては、ベスト盤2つなどを90分のカセットテープに録音して、クルマでよく聴いていたくらいだ。そんなこともあるので、もちろん「行く」と返事をする。

前説が長くなったが、それほど熱狂的ではないものの、彼らの曲は意外に近くにあった。まあ、ライヴを見るということは、考えてもいなかったことであるが。1994年にやや遅く再結成した時には、見逃しているので、まさか本当にライヴ体験できるとは思ってもいなかったことである。今回のツアータイトルからも、伺えるように、おそらくこれが最後の「イーグルス」としての公演なのであろう。
事前の情報では、メンバーはアルバム『The Long Run』(つまりは最初の解散時)の時のメンバーだが、ギターのドン・フェルダー<Don Felder>は不参加であるという。つまり、ドン・ヘンリー<Don Henley>(Dr,Vo)、グレン・フライ<Glenn Frey>(G,Key,Vo)、ジョー・ウォルシュ<Joe Walsh>(G,Vo)、ティモシー・B・シュミット<Timothy B Schmit>(B,Vo)の4人である。
当日は、天気がすぐれず、家を出るのにぐずぐずしてしまう。会場入りしたのは、17:00を少し回ったところだった。開演時間は18:00が予定されている。さらには、会場内のグッズ売り場と食べ物の売り場が向かい合っていて、この間を人が通っていく構造になっていて、かなりの混雑である。トイレに行くのにも一苦労である。ようやく、席につく。すでにアニタツさんは席についていた。会場のアナウンスによると、やはり18:00の公演開始で、途中休憩を挟むとのことである。また、アニタツさんが集めてきた情報によると、30曲近く演奏し、その中には、各自のソロ作品も含まれているとのことだ。
事前の説明の通り、18:00に客電が落ちる。ただし、自分たちの席は、非常灯なのか、メモ書きしたりするくらいの明るさはあった。今回は何も用意してこなかったのだが、こういうことだったら、書くものを持ってくればよかったと思った。と、スライドギターの印象的なイントロ。「The Long Run」がオープニングナンバーだ。ここからステージはかなり遠かった。もちろん、顔はわからない。モニターが、ステージ上と左右にあり、ステージの中心ではギターを持たないドン・ヘンリーがスタンド・マイクで歌っていた。ドン・ヘンリーらしく、あまり高音部の伸びがなく、ややしわがれたような声であった。曲が終わり、いったん照明が落ちる。再び明るくなると、ギターを手にしたグレン・フライが「Hello! Tokyo!」と叫び、「New Kid In Town」が始まる。今までどこにいたんだろう。それに、ドン・ヘンリーは今では、ドラムを叩いていて、バックのメンバーがドラムを叩いていたようである。
グレン・フライを中心に、その後が、ドラムのドン・ヘンリー。右側に、銀髪となったジョー・ウォルシュがいて、スライド・ギターをバリバリ弾いている。さらには、その背後あたりに、もう一人のギターがいて、この人が、ドン・フェルダーのパートをこなしているようであった。グレン・フライの左には、ティモシー・B・シュミットがいて、頭髪を真ん中から分けた長髪。この人だけ20年以上前とあまり変わらない。
曲は、「One Of These Night」(邦題:呪われた夜)、「Peaceful Easy Feeling」「Take It To The Limit」「Tequila Sunrise」などを演奏していく。ほとんどが、ドン・ヘンリーとグレン・フライによって歌われていくのだが、途中、ジョー・ウォルシュとティモシー・B・シュミットによる、リードヴォーカルの曲もあった。ジョー・ウォルシュは「In The City」であり、彼の紹介があると、「Wooo! Wao!」とマイクに向かって、吠え続ける。彼のイーグルスにいる立場としては、なかなか浮いているような感じではあるのだが、ひとたびヴォーカルを取ると、ものすごいパワーでぐいぐいと引っ張っていくような印象があった。しかも、ギターは全開バリバリなのであり、はっきりいって、声量などはドン・ヘンリーよりもあるだろう。また、ティモシー・B・シュミットは、もちろん、日本のみスマッシュヒットした、「I Can't Tell You Why」(邦題:言い出せなくて)である。この時ばかりは、割れんばかりの拍手となった。この曲やはり日本向けだし、相当これでファンになった人も多いんだろうなあ。しかも、すぐに解散してしまうし。これを聴くために、20年以上も待ち続けた人も多いことだろう。彼の紹介では、この日が誕生日だったらしい。
東京ドームは、もちろん、音が悪い。席によっては、ヴォーカルが何を歌っているのかまったくわからないということもある。この日の席は、さすがにそれはなく、音があまりクリアでなかったことを除いては、まあまあの感じだった。彼らの演奏だけでなく、コーラスワークも見事。来日したメンバーそれぞれが、リードヴォーカルを務められるということもあるのだが、往年の輝きを失っていないのだ。しかし、我々の席の近くには、おそらく基地あたりからやって来たと思われる、大柄なアメリカ人男性がいて、曲の合間に歓声を上げたり、口笛を吹くとかもあるのだが、「Desperado!」と演奏して欲しい曲を何度も叫ぶ。さらには、自ら歌い出す次第である。別にテメーの歌を聴きたくないんだが。
演奏に知らない曲が混じりだした。どうも、彼らのソロ作品らしく、この部分だけはイーグルスというよりは、別の空間に混じり込んでしまったような印象を受けた。これはいらないのではないだろうか。そうこうしているうちに、グレン・フライが2001年のテロについて話し、「Already Gone」へと突入。ジョー・ウォルシュと影のギタリストの掛け合い。ここで、1部が終了。ここまで1時間。休憩となる。
休憩後、アコースティック・セットで彼らは登場。なんと、ドン・ヘンリーまでもがアコースティック・ギターを抱えていたが、それほどメインのパートは引いていないだろう。ぼちぼちとイーグルスの曲をやるのだが、大半は彼らのソロである。さて、グレン・フライであるが、もちろん彼らのフロントマン。しかし、ドン・ヘンリーがリードヴォーカルを取らない曲でも、ドラムを叩いているのに対して、グレン・フライがリードヴォーカルを取らない曲ではなんか立場が寂しい。グレン・フライはあまりギターが得意ではないので、やることがあまりなさそうなのである。時には、キーボードに回ったりするのだが、フロントマンでありながら、脇に徹しようとしても、徹しきれない何かがありそうなのである。
後半は、大半がソロ曲ばかりであり、この間に客は激しく移動をはじめる。トイレなどに立つのであろう。かなりだれてきた中、「Heartache Tonight」が演奏される。この時とばかり、後のアメリカ人も戻ってきた。客も、ようやく立ちはじめる。いよいよファイナルに近づいているようであった。おきまりのアンコール。かなり時間をおいて登場するのかなと思ったが、そうではなかった。ブラスのオープニングは、なんの曲だかわからない。しかし、ギターの指弾きのイントロが、「Hotel California」だと教えてくれる。会場はいやが上にもヒートアップ。この時には、影のギタリストがドン・フェルダーばりに、12弦と6弦のダブルネックギターを使い、楽しませてくれた。このギターをモニターで撮し、会場に見せてくれるのだ。まったく、聴き心地などは、CDのドン・フェルダーのパートに他ならず、影のギタリストは完全に彼のパートをコピーしきっていると思われた。ダブルネックギターの使い方は、次の通り。イントロの部分などは、下の12弦を使う。6弦に移る時には、内蔵のスイッチでアンプを切り替える必要があるようだった。その6弦のソロでは、後追いで、ジョー・ウォルシュのソロが被さり、これはこの夜の白眉なのであった。しかし、2回目のアンコールでは、またしても、他の曲をやるではないか。
3回目のアンコールでは、いよいよ、「Take It Easy」を演奏。最後に、グレン・フライがキーボードに移り、ドン・ヘンリーがドラムから降りてきてマイクを手に持つ。後の兄ちゃんの所望した「Desperado」なのであった。立ち上がる観衆も、ここでは座り込む。最後は、4人が手を取り合い、カーテンコールで終了。しかし、長い3時間半。ソロ曲がなく、もっとイーグルスのみを堪能したかったのだが。また、ドン・フェルダーの来日がなかったのが悔やまれるが。
評価★★★★
<Set List>
01 The Long Run/02 New Kid In Town/03 Wasted Time/04 Peaceful Easy Feeling/05 I Can't Tell You Why/06 One Of These Nights/07 Lyin' Eyes/08 The Boys Of Summer<Don Henley Solo>/09 In The City/10 Already Gone
(2nd Set)
11 Tequla Sunrise/12 Love Will Keep Us Alive/13 Hole In The World/14 Take It To The Limit/15 You Belong To The City/16 Walk Away<Joe Walsh's James Gang>/17 Sunset Grill/18 Life's Been Good/19 Dirty Laundry<Don Henley Solo>/20 Funk #49<Joe Walsh's James Gang>/21 Heartache Tonight/22 Life In The Fast Lane
(Encore 1)
23 Hotel California
(Encore 2)
24 Rocky Mountain Way<Joe Walsh Solo>/25 All She Wants To Do Is Dance<Don Henley Solo>
(Encore 3)
26 Take It Easy/27 Desperado

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