Niel Young & Crazy Horse Greendale Japan Tour 2003 日本武道館 2003/11/15

友人のアニタツさんから、ニール・ヤングに行かないかとの誘いがあり、二つ返事で引き受ける。とはいえ、ニール・ヤングはあまりよく知らない。彼からの話によると、ニューアルバムの『Greendale』がリリースされたばかりだという。こちらを早速購入し、家にあった、ニールのアルバムを聞き返す日々が続く。
その後、新聞のインタビュー記事を目にする。これによると、今度のライヴは前半に『Greendale』を演奏し、そこでは曲ごとのコンセプトに沿った、物語を俳優付きで上演するとのことである。彼のホームページには、架空の都市Greendaleに暮らす、Green家の家系図があり、年齢とかそれぞれのバイオグラフィもあるとのことだ。そこまでのチェックはできなかったが、何となくたたき込んで当日を迎える。

この日は、あいにくの曇り空。天気予報ではその後雨となるという。ほぼ時間通りに九段下に到着。改札付近では、「チケット譲ってください」との札を持つ外国人の姿もある。地上への出口付近で早くもダフィーらが待ち受ける。かなりの人出である。時計を見ると、開場時間を過ぎているので入場する。ステージに対して、左側となる西面。が、1Fスタンドなので比較的ステージには近い。アニタツさんはしばらくして現れる。しばらくは、近況報告とかミュージシャンの話などをする。ダフ屋が多い割には、当日券なども売られていて、スカスカなのかと思ったら、開演前には満員となった。
ステージは幕などが掛からずむき出しの状態。これで演劇も行われるにしては、ずいぶんと狭いステージに感じる。そんな中、なぜかタバコをくゆらせる若い男ひとり。どういうことか、誰にも注意されずに、そのまま済んでしまったようだ。開演のアナウンスが予定時間の17:00に告げられる。今回は、休日の公演ということもあって、開演が早い。ライヴ後いっぱいやるにはよい時間設定だ。が、俳優たちが一瞬スタンバイしかかるのだが、客電は落ちない。結局、それから15分ほどして、真っ暗となるが、いよいよ客席はヒートアップ。
ようやく、一丁やるかあという感じで、ニール・ヤングとクレージー・ホースが現れる。ニールはひときわ背が高く、キャップを被っている。ステージ中央にドラムがセットされ、ニールはその正面。ベースのビリー・タルボットがその左に位置。とはいえ、ほとんどドラム正面にいて、こちらには背を向けるかっこうとなる。正面から見たら、横向きというところか。もう少し、左側に、キーボードがあり、ここには、太った男が座るが、これがフランク・サンペドロではなかろうか。
ニールはギターを少しかき鳴らしていたが、そのまま演奏に入る。すると、モニターがつけられる。モニターは、正面にあり、これとは別に、西面からも見ることのできる小さなものが、ステージの左側に2つあった。ステージの右側にアメリカの田舎町にあるようなシンプルな作りの家屋のようなセットがあり、ここに俳優が出てくる。曲にあわせて、口を動かしている。登場人物は、老人とその息子のような男性で、息子は曲に合わせてハーモニカを吹いている。これをそのまま流しているというわけではないようだが、しばらくするとからくりがわかってくる。ニールの立ち位置にあるマイクには、ハーモニカをつけるものがあって、ここでニール自身がもちろん吹いているのである。また、メガホンを通した声も、ニールが歌っていて、これはミキサーブースで一瞬で切り替えるのかと思ったら、その時だけ、いつものマイクの隣にあるマイクで歌っているということがわかる。このあたりは良く計算されている。この時だけは、カーブを描いたマイクスタンドの前方に取り付けられた、メガホンが、首を振るように左右へ往復運動をするのだが、音はここからは出てはいないであろう。
ステージ構成は、それだけではなかった。右側の家屋の他に、左側には、独房のセットがあり、さらに、ドラムの背後に大きいステージがある。大きいステージは、半分陰に隠れてしまい、よく見えなかったのだが。その背後にあるモニターには、背景となる画像などが現れ、自動車のセットなども登場する。俳優たちは、セットだけで演技をするのではなく、たまには、ステージに登場して、ニールの背後なども駆け抜けたりする。
それにしても、ニール・ヤングは、1945年の生まれで、還暦に近い。音源などを聴くと、これは昔からではあるが、決して大きい声で歌っているわけではない。が、ここでは、全くのど迫力で声がびんびんと伝わってくる。また、演奏もひとりでギターをかき鳴らし、マイクの下にある、ペダルのスイッチで音色を変えたりひとりで大活躍である。普通、ヴォーカリストというと、ギターを持っていても、それが前面に出てくるものではないのだが、やはりバッファロー・スプリングフィールド出身という背景もあってか、ギターなしでは演奏があり得ないような感じである。決して巧いギターではないが、クレージー・ホースがいても、俺自身がやってやるんだという感じが伝わってくる。
『Greendale』というアルバムが、比較的おとなしめのものであり、アコースティックな感じで演奏されるのかと思ったが、ニールが抱えているのは、エレクトリック・ギターである。途中に、アコースティック・ギターの弾き語りが1曲あるのと、ステージ右側に用意された古めかしい、オルガンを演奏する以外は、すべてエレクトリック・ギターを演奏したニールである。
熱いものを感じさせる演奏であるが、観客は静かに見守っている。まだ、誰もが立ち上がったりはしない。曲の合間には、けっこう声が飛ぶ。ニールも、ミック・ジャガーほどサービス精神満点ではないが、たまに日本語を交えてのトークがある。が、95%くらいは英語であり、ここで沸く観客は英語圏の人たちであろう。意外にも、ニールのトークは、長いものがある。
『Greendale』のラストは、俳優たちが総出のレビューのような状態。その数、50人くらいはいただろうか。話によると、ここには、ニールの奥さんや子供たちも混じっているらしい。最後は、ステージ前面にニールを取り囲むように、俳優たちが並び、曲に合わせてのダンスを披露する。ニール・ヤングとこのような視覚効果とは、70年代からのファンにはあまり考えられないようなことだろうが、決して違和感はなかった。違和感があったのは、ラストのラストで星条旗と日の丸を持った俳優が出てきたことである。これははっきりいってなくても良かった。ラストは、全員で手を取り合っての、あいさつ。ここで前半終了。それにしても、アルバム収録時間よりも遙かに長い時間。1時間半くらいはあったのではなかろうか。
ニールの年齢とかを考え、けっこう曲のインターバルとか長くて、後半との休憩時間もかなりあるだろうと考えていた。ここでアニタツさんはトイレに行くのだが、すぐさま演奏が開始させられる。今度は、昔の曲である。キーボードからフランク・サンペドロもいつものギターに持ち換えるスタイルとなった。ヒートアップする会場。アリーナ席は、ほとんどが立ち上がっている。ここからニールは、ギターを激しくかき鳴らす。フランク・サンペドロがいても、リードは俺だといわんばかりに、がんがんとやる。事実、フランク・サンペドロのギターは、ほとんどリズムを刻むだけに徹しているようであった。
会場がヒートアップしたからであろうか、前半よりも音がクリアではなくなった感じである。ヴォーカルもあまりはっきり聴き取れない。さらには、空気が重くなってきて、ものすごく眠くなってきた。曲がとてつもなく長いというのもある。1曲、10分くらいあるものも、珍しくないようである。
一瞬曲が終わろうというところに、ニールが轟音で弾くフレーズ。これは、『Ragged Glory』ラストに入っている、「Mother Earth」ではなかろうか。これと同時に、ステージの上から現れる物体。これはつり下げられた、キーボードである。「Mother Earth」に合わせて呼び込んだ、宇宙船のようなものを暗示していると見た。弾きにくいようだが、このつり下げられたキーボードにフランク・サンペドロが、位置して、ラストの曲が始まった。会場が沸いたのは、この「Rockin' In The Free World」の時ではなかろうか。
ギターを外し、ステージを去る、ニール・ヤングとクレージー・ホース。だが、客電は落ちたままで、アンコールを暗示されられる。事実、ほとんど休みもなく、再登場。ここで2曲やり、これがまた長い。おそらくアルバム収録曲を忠実に演奏するよりも、倍くらいの時間がかかっているのではなかろうか。ラストのラストでは、4人が初めて揃ってのあいさつ。それにしても、えらく、凝縮された時間であった。決して、\9000の内容は、高くないと感じる。
評価★★★★

<Set List>
01)Falling From Above 02)Double E 03)Devil's Sidewalk 04)Leave The Driving 05)Carmichael 06)Bandit 07)Grandpa's Interview 08)Bringin' Down Dinner 09)Sun Green 10)Be The Rain 11)Hey Hey, My My 12)All Along The Watchtower 13)Sedan Delivery 14)Love And Only Love 15)Rockin' In The Free World 16)Powderfinger 17)Like A Hurricane

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