Live Epic 25 国立代々木競技場第一体育館 2003/02/22

エピックレコード創立25周年を記念して行われるライヴ。これには佐野元春が出るらしいとのことで、あちこちでチケット入手を試みたが、チケットぴあのスーパーリザーブシートが当選する。かなり早い段階での入手だったが、4枚のチケットをどうさばくか、これが一番大きい問題となっていた。結局、1枚は、ダフィーにやることとなったのだが、そんなに入らないだろうと思った会場も、満席。久々に見る大観衆であった。
なお、出演予定者は、大江千里、大沢誉志幸、岡村靖幸、佐野元春、鈴木雅之、TM NETWORK、THE MODS、渡辺美里とのことだったが、近づいてくると、バービーボーイズも出るらしいことがわかり、あまり盛り上がりかからなかった気持ちも高揚してきた。

当日は、会場での待ち合わせ。ウィークデーのライヴだと、疲れ果てているのだが、それもなくまったくコンディションは上々。それにしてもでかい会場だ。こちらの席は、南スタンド。ステージを遙かに、遠く感じるようなところである。観客の会場入りは、出足は悪かったようだが、開演間近ですべて埋め尽くされる。隣に、ダフィーに売りさばいたはずの客も、入り、一体こいつは、いくらで購入したのかと心配になってくる。会場で待ち合わせのサッチーとキクちゃんは、開演10分ほど前に到着した。いよいよ電気が落とされ、バックミュージシャンの紹介だ。小林克也のナレーションとともに、入ってくる。ドラムス、江口信夫。ベース、メッケン。キーボード、西本明、Kyon。コーラス、大滝裕子、濱田美和子。サックス、山本拓夫。ギター、葛城哲哉。ギターでバンドマスターが、佐橋佳幸。何とも、佐野元春中心というか、ほとんどの連中が、佐野以外のミュージシャンもサポートできるようなメンバー構成。特に、西本明は久しぶりの登場で嬉しい。3年ぶりのDr. Kyonも、いつの間にか鼻髭をたくわえていた。
鈴木雅之(with 桑野信義、鈴木聖美)
オープニングアクトはこの人。「ランナウェイ」で登場する。レゲエ風のアレンジであった。曲の後半で、桑野信義がトランペットを吹いて出てきた。もちろん、二人ともお目にかかるのは初めて。はじめから、どうも芸能風のノリになってしまったが、仕方ないか。マーチン本人も、「デビューしていきなり大ヒットで、オープニングアクトを努めたのは初めて」ということである。鈴木雅之ではあるのだが、桑野と二人で、「今日はシャネルズです」とか、「ラッツ&スターです」とかいってた。その桑野も、この日はミュージシャンとしての登場なのだが、どうもそんな感じはしない。けっこう笑いを取ろうというようなノリで、ここだけ異質な感じがした。しかし、桑野は、先日の大阪には出演せず、東京公演だけ。もっとも、「明日は撮影が入っていて、だめなんです…。…レントゲンの撮影。(笑)」とのことだったが、受けねらいか。次には、「め組の人」。そのうち、マーチンが、「この曲知ってる?」と始めたのが、「TAXI」である。その曲の途中で、姉である、鈴木聖美が登場。そのまま歌を引き継ぐ。ということで、さらに、「ロンリー・チャップリン」をマーチンとデュエットして、シャネルズファミリー色がいっそう濃くなった。ラストは、「友人が作ってくれた歌、これは財産」的なことをいって、「ガラス越しに消えた夏」を歌う。2番からは、作曲者の大沢誉志幸が登場。この曲は、鈴木雅之がソロとしてデビューした際のものであるから、やはり宝のようなものなんだろう。
大沢誉志幸
すでに、40代半ばを超えているだろうに、すらっとしたスタイル。衰えは微塵も感じさせない。鈴木雅之と曲の交換をしたあとは、短いMC。3年休んでいたが、また活動するとか。会場でもらったパンフレットによると、ファンクラブも再始動だとか。大沢のMCは、もろに80年代風。しゃべっているのは、日本語なのだが、時々英語のフレーズを交えるし、英語風の発音で、日本語をしゃべったりもする。鈴木雅之が去ってからは、ベレー帽とサングラスをかけて、彼の世界を展開しだしていた。それにしても、コンディション自体は悪くないのに、3年も休んでいたというのが信じられない。
小比類巻かほる
大沢誉志幸が、曲の最後までたたずんでなく、アウトロで立ち去ってしまう。曲が終わり、暗転して、再びスポットライトが照らされると、そこに立っていたのは、小比類巻かほるである。しかし、最初は誰だかわからなかった。いわれてみれば、その面影はあるのだが、まるで若い頃のたたずまいは消え去っている。しかし、醜くなったわけではなく、かえって洗練されたような感じ。別人といってもいいほどである。コーラスの声が強く、あまりコヒー本人の声が聞こえないという悪状況の席であったが、「Do you remember ?」といって、鈴木雅之作曲の「I'm Here」の一説をアカペラで歌い、声が衰えているわけではないことが判明した。ラストは、「私はここに登場する中で最年少なんですけど、この方もそうです。カモン」といって立ち去る。
松岡英明
オレンジともピンクとも形容しがたいど派手な衣装。実は、このライヴには当初、岡村靖幸の名前がクレジットされていたのだが、小比類巻かほるが、「最年少」といった時に、この名前を思わず口に出していたのだが、見事に裏切られた。この人の名前は知ってはいるものの、まるで曲などは聴いたことがない。かなりの割合でしゃべる。中に、あの人を偲んで「今日は、紫のブリーフを穿いてきてます」などと口走る。あの人とは、岡村だろうか、プリンスだろうか。「以心伝心」という曲を1つだけやって退場。あとには、白けたような空気が漂った。
大江千里
松岡が立ち去り、暗転の後ライトが照らされると、中央にピアノが置かれ、横向きでピアノを弾く、眼鏡の男性。大江千里である。このあたりから会場は、ヒートアップ。立ち上がる者も出てきた。彼は、デビュー当時の想い出や、代々木にまつわる想い出を語る。コーラス隊の濱田美和子と大滝裕子を交えての、軽快なダンス。かなりもどかしげな歌い方といい、大江千里そのままだが、同行者によると、おじさんくさくなったという印象が強いらしい。この日の千里は、黒縁のセルフレームの眼鏡に、白いジーンズと長袖のTシャツなのであるが、もっとも勢いのあった頃のスタイルをそのまま出してきたような感じである。最近のパンフレットなどを見ると、眼鏡も細いメタルのものに変わっているので、あの頃の印象を再び持ってきたということか。
The Mods
暗転の後、やや長いインターバル。セット替えをしている模様だが、この間にトイレに行く。戻ってくると、暗闇の中演奏が開始され、やがてステージが照らされた。黒い革のつなぎを着た、4人の男たち。演奏は彼らだけで(バックバンドはすべていなくなる)、相当にノイジーだ。中央でヴォーカルを取るのは、森山達也。すでに、20年以上に渡って活動するパンク系バンドである。それにしても、エピックで、こういうテイストは珍しい。この時だけは、会場に隠れていた、Modsファンの野太い声が飛び交う。曲は、「激しい雨」とバラード。
村越弘明(Harry)
セット替えもなく、そのままソロで登場。アコギを抱えている。彼は元Street Slidersのギター&ヴォーカルであるが、限定の再結成とまでは行かなかったようだ。ステージにはスタンド席用に大きなモニターが左右にあるのだが、ここで見ていると、かなり歳を取ったという印象が強い。それでも声は力強く、かなりのヴォーカリストとしても、通用しそうな感じがした。
バービーボーイズ
Harryのあと、幕が閉まり、Epicの映像が映し出される。かなり懐かしのものもあり、中には、Bo Gambosなどのものもある。
幕が開いて、左脇から5人の男女が登場。一目でバービーたちだとわかり、会場はヒートアップ。総立ちとなった。やあ、バービーのファンってたくさんいたんだなあとわかる。モニターで見ると、コンタの額の上がり具合が、ちょっと気になるし、イマサは、昔のずらしたサングラスではなく、きっちりと普通のかけ方になっていたが、演奏自体は、パワー全開で、すっ飛ばしたステージ。中でも、杏子姉さんは、スカートをひらひらさせて、左右の袖に走っていっては、パンツも見せんばかりの激しいダンス。それにしても、なんでこんなバリバリのバンドが解散しなくてはならないのだろうか。コンタのサックスも聴けたし、もういうことはない。100点を上げたいところである。MCでは、コンタが、「80年代って、どうしようもない時代だったと人にはいわれるが、その時代を一生懸命生きてきた俺たちにとっては、そんないわれ方はしたくねえ。そうだろ!」と絶叫。杏子も、「今日は…やっちゃいます…」と控えめながらのコメントだが、パフォーマンスに関しては全開。やはり評判がよかったのだろう、翌日の公演では、1曲増えていた模様である。
TM Network
再び幕が閉まり、映像の第2弾。このころ、頭の中で、次の出演順などを考えていたが、やはり予想通り、TMの出番となった。
はじめに断っておくが、筆者は大嫌いである。登場したメンツは、3人きりではなく、ステージのライトの切れ間から、他にサポートが数人いることがわかる。ヴォーカルの宇都宮隆は、顔がぱんぱんにふくれていて、幸せな生活を送っていることが予想できる。だが、ロックミュージシャンは、痩せていて欲しい。彼らの演奏スタイルを見ていると、宇都宮とギターの木根が全力で勤め上げている反面、シンセの小室は、機械を操る、技師のような感じである。まあ、ほとんどが打ち込みなので、ステージ上に、コンサートマスターが控えているような感じもして、このアンバランスな感じは、どこか奇妙である。
渡辺美里
またも幕が閉まってセット替え。映像はこれで終了。
ステージにスポットが当たると、再び、小室哲哉がピアノを弾いている。一瞬あれっという気がしたが、デビューは、小室哲哉のバックアップを受けてのものであることに気づき、納得する。他には、バックバンドも復帰していて、このコンサートマスター格の佐橋佳幸とは、都立松原高校の後輩に当たる。それぞれバックのミュージシャンの紹介もあり、このあたりは、ラストの佐野元春がそういうことが苦手なので、譲った感じもあるだろう。渡辺美里も、相変わらずの若さであるが、今では、このファッション感覚があまりそぐわないような感じになってきている気もする。
佐野元春
渡辺美里の紹介で、ステージに登場する。身長は公称170cmという佐野元春だが、この3年間で、いっそう白髪が増え、なんだか小さくなったように感じる。バックバンドはそのままで、The Hobo King Bandではないが、西本明の弾くフレーズで「約束の橋」が聴ける。キイは落とされていて、元春の地声で歌っているのだが、どうも風邪をひいたのか、ハリのある声ではない模様。妙な感じがした。それでも、曲の最後などは、手を振って、バンドの音を黙らせるようなパフォーマンスは健在。また、ギターを抱いたままの、スライディングも、見せてくれた。「みんな歌って」ということで、観客も、歌い出すが、もうステージからの声が聞こえなくなるほどの、大合唱。ファンクラブやごく一部のイベントなどでここ数年、あまり人前に姿を現さなかった、佐野元春であるが、この出番を待っていたファンは、たくさんいたことがよくわかる。
ラストは、出演者全員がステージに出てきての、「Someday」である。こちらも、観客に歌ってもらおうと、マイクから遠ざかって、下がる元春に対して、大沢誉志幸がこのあとを引き受けて歌ったり、鈴木雅之と鈴木聖美がコーラスに力を入れたりと、みんな楽しそうにやっていた。イベントとなると、ある面、統一感が否めないものであるが、このイベントだけは、あまりそういうことも感じなかったのは確かである。本当に来てよかったと感じた。
ラストは、小林克也のナレーションによる、総出演者の紹介。公演は、4時間以上に渡ったが、まったく疲労がなく、本当に心地よい空間であった。
評価★★★(+1/2★)
Set List
01 ランナウェイ/鈴木雅之with桑野信義/02 め組の人/鈴木雅之wiht桑野信義/03 TAXI/鈴木雅之with鈴木聖美、桑野信義/04 ロンリー・チャップリン/鈴木雅之with鈴木聖美、桑野信義/05 ガラス越しに消えた夏/鈴木雅之、大沢誉志幸/06 Confusion/大沢誉志幸/07 宵闇にまかせて/大沢誉志幸/08 そして僕は途方に暮れる/大沢誉志幸/09 Hold On Me/小比類巻かほる/10 Tonight/小比類巻かほる/11 以心伝心/松岡英明/12 You/大江千里/13 Real/大江千里/14 十人十色/大江千里/15 激しい雨が/The Mods/16 Napalm Rock/The Mods/17 バラッドをお前に/The Mods/18 風が強い日/村越弘明/19 Blue Blue Rose/バービーボーイズ/20 負けるもんか/バービーボーイズ/21 女ぎつねOn The Run/バービーボーイズ/22 Be Together/TM Network/23 Get Wild/TM Network/24 Self Control/TM Network/25 君にあえて/渡辺美里with小室哲哉/26 My Revolusiton/渡辺美里/27 恋したっていいじゃない/渡辺美里/28 10 Years/渡辺美里/29 約束の橋/佐野元春/30 So Young/佐野元春/31 アンジェリーナ/佐野元春/32 Someday/佐野元春with出演者全員

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