Grapevine Whitewood Zepp Tokyo 2001/12/05

ついに、Grapevineをこの目で見ることのできる日がやってきた。しかも、会場は、Zepp Tokyoという、お台場にある新しいライヴスペースである。仕事をそこそこに片づけるものの、会場がかなり遠いために、やきもきしながら移動していた。職場からここまでたどり着くのに、同じ23区内だというのに、3つの路線を使い、片道\650もかかってしまう。まあ、ゆりかもめがバカ高いのだが。しかも、体調は最悪。この年末の多忙な時期に、仕事が立て込んでいないはずがなく、かなりの疲労度である。しかも、会場入りがぎりぎりのために、食事なんかしていないのである。また、スタンディングだというのに、飲み物を忘れてしまう。
Zeppに入ってみて、かなり見やすいところであることがわかった。開いていたドアから内部に入ると、1階フロアのほぼ中央。立錐の余地がないほどではないが、ほとんどがハイティーンから、20代前半の女性ばかり。しかし、このフロアが、フラットではなく、ステージ手前から、後方にかけて徐々に傾斜が付いているようなのだ。
開演予定時間を10分ほど過ぎて、Grapevineが登場する。このツアーは、リーダーのベーシスト、西原誠が病気療養のため、ここには、サポートメンバーにジョン・ブリーフのベーシスト、金戸覚が入る。また、ラインナップにはない、キーボードプレーヤーも右手の奥に控えている(結局最後まで紹介はなし)。ステージ構成は、ヴォーカルの田中和将を中心に、右手にギターの西川弘剛、田中の後方に、ドラムの亀井亨がでんと控えている。田中の左手には、金戸が。やはり、田中和将がひときわ背が高く、目立っている感じだ。
オープニングナンバーは、「せーの」という感じで始まるが、田中と亀井を中心として、彼らの合図と呼吸で始まるような感じである。曲は、「Buster Blaster」。2001年夏発売のアルバム『Circulator』の1曲目である。これは、ほとんどインストゥルメンタルのようなもので、まずは肩慣らしという感じだろうか。続けて休むことなく、「壁の星」に移る。もう、出だしから、すっ飛ばしている感じだ。続けて、バインは、やはりニューアルバムから、「Discord」を演奏。ここでようやく、一息つき、田中の短いMC、「東京久しぶりだぜ」「前のBlitzから2ヶ月ぶりだぜ」という言葉で観客も反応。
ここから、Grapevineの真骨頂が続く。田中のヴォーカルは、やや頼りなげであるが、音量は十分だ。そして、バックのメンバーも負けじと爆音で迫っている。特に、西川のギターがうなり、途中では、スライドも使うという、巧者ぶりを見せつける。それでも、演奏のバランスは崩れることなく、大音量ながらも、クリアな演奏が心地よい。しかし、彼らの演奏は、ここでとどまることはなかった。というのも、さらに音が上がっていき、西川のギター、亀井のドラム、金戸のベースがそれぞれほとんどソロパートを演じるような感じで音がどんどんと大きくなっていく。田中のヴォーカルも、ここに来てほとんど聞こえないような状態になっていく。ステージではほとんどモニターが聞こえないような感じなのでと思われる。田中の声が、かき消されまいと、さらに声を張り上げるのだが、悲鳴のような感じでしか届かない。それでも、演奏はクリアである。遙かに限界を超えたところでインストゥルメンタルにも似たような、長い曲が続いていく。聴衆の耳には、クリアな演奏と田中の悲鳴がテンションを上げていくような作用が起こらないだろうか。少なくとも、筆者には、鼓膜から脳にかけて初めて味わうような信号が流れ続けていたのである。
ひとまず、演奏が一段落した。曲はバラード調のものに変わり、演奏も落ち着いたものになる。音量もやや落とされて、田中のヴォーカルも、かなりクリアに聞こえる。それでも、演奏のスピード感は失われず、再び、激しいものへと曲が変わっていく。もしかして、この休みのない張りつめた感じは、お台場という場所柄、聴衆の帰りのアクセスも考えたものなのかも知れない。また、ニューアルバムからの曲も、一段落したようで、前のアルバムから「ナポリを見て死ね」へとスイッチ。また、今のところ唯一のカバー曲でもある、金延幸子の「青い魚」も演奏した。とにかくバインの演奏力は、相当なものである。あの大音量で、聴かせてしまうことができるのだから。望まれるのは、田中和将の声をきちんと響かせることのできる、音響スタッフではなかろうか。
気が付くと、2時間近くが経過していた。バインの聴衆は若い割におとなしめであるが、いつの間にか、ビートに腰を振っている連中の多いこと。かくいう筆者も、このビートとリズムに身を任せて、身体を揺らしているではないか。もう、いつの間にか疲労感はなかった。そして、バンドはいったん姿を消す。やや短いインターバルを挟んで、田中や亀井がタオルを被って登場。そのタオルや、飲んでいたボトルなどを、フロアに向かってスローイン。いったん、ブルース(洋楽のカバーではなかろうか)を2曲やって、ラストはオリジナルで締める。ラストはメンバーが去る中で、田中が着ていたTシャツを脱いで、フロアに投げ入れて終了。ところで、ツアータイトルの、「Whitewood」というのは、スポンサーである、白木屋のことらしい。
約、2時間15分というギグ。今回サポートが少なく、一番聴きたかった、「南行き」、「永遠の隙間」などが演奏されることはなかった。やはり、ニューアルバムを受けてのツアーということで、こちらからのものが主体となっていた。これから、西原誠の復帰もあるだろう。今回は彼抜きのものだったが、次回は、全員揃ってのものを聴きたい。また、Zeppの内部環境は素晴らしいものなのだが、できれば、渋谷公会堂レベルのキャパシティのところで、時間を気にせずにじっくりと楽しみたいものである。

評価★★★1/2


以上、2001年のログを残しました。パインはその後、リーダー西原誠の復帰もあったものの、結果的には首を切られる形での脱退となり、ベーシスト不在のまま、アルバムをリリースし続けています。アルバムでは根岸孝旨(Dr. Strange Love)、ライヴでは金戸覚を起用することで乗り切っているようです。
幸いにして、このあともライヴを見に行く機会があり、この時よりも成長した姿を確認することができました。
テンションの高さは相変わらずですが、やはりヒットシングルが必要なのではと思います。さらに期待しています。

ライヴレポートに戻る

TOP INDEX