斉藤和義 Good Time In Winter 追加公演 2000/12/23 渋谷On Air East

夏のリキッドルームの時に予告していたとおり、斉藤和義はミニアルバムをリリースし、アコースティック弾き語りライヴを実現させた。いつになく、チケット発売を心待ちにしていたところ、今回「ぴあ」での発売がなく、気づいたのはすでに売り切れ後というていたらく。しかし、微笑む神はいるもので、チケット・ニフティの方で、追加公演が取り上げられて、見事に行くことができた。

ここ、On Air Eastは、追加公演のみの会場で、その他の東京公演分は、隣のOn Air Westで行われる。しかし、会場こそ違え、通常の公演の合間にセッティングされたものなので、斉藤和義のテンションは落ちるということはないだろう。番号順の入場となるため、あえて遅れて駆けつける。それでも何とか番号通りに会場入りすることができた。しかし、中央から前には、座席があり、こんなこと聞いてなかったぞ。彼らのチケットの色が違っていたため、もしかしたら特別配布されたものだったのかも知れないが。何とか、最後尾の壁にもたれかかることができたのはラッキー。
ステージは何とか見渡すことができた。例によってワインなどが置かれている模様で、最初に演奏されるギターと、エレピが1台という至って簡単なセッティング。程なく、BGMが終わり、せっちゃんの入場だ。ここには、モニターなどはなく、ステージ上の演奏がすべて。顔は何とか見える位置だが、楽器演奏は見えない。指使いなども見ておきたかっただけに、残念だ。次回、座って聴けるような環境の公演を望みたい。
オープニングは、ハーモニカホルダーをつけての「アゲハ」。元々アコースティックなノリの曲なのでバンド形式でなくても、もちろん納得できる演奏である。さらには、挨拶抜きで「ねえ運転手さん」に移っていく。この曲は、『Collection "B"』というアルバムがリリースされ、こちらに収録されている。シングルを持っていないファン歴浅い身としては、「今のはなんだ」という思いをしなくてよかった。もちろん、生で聴くのは始めて。ステージが見えないような状態なのに、曲の合間には、あちこちで感想とも取れる言葉が交わされる。隣の女性は立って聴くのを最初から諦めている様子で、座り込んだままで顔も伏せている。やはり斉藤和義の演奏に聴き惚れているのだろうか、拍手なども一拍おいてのものである。「こんちは。今日は、最初と最後、いくつかは決まっているんだけれど、いつものように、みんなの反応を受け取りながら曲順も決めていきたいな…」というのが斉藤和義の初めてのMCであった。
これを聞いて、あちこちからお気に入りの曲のコールが巻き上がる。これも斉藤和義独特のもので、ツアーではアンコール後にこんな言葉が発せられることが多いのだが、まさか最初からとは。ツアーでは、そうした斉藤和義の思いとファンの思いがすれ違いかなり曲を決めるのに時間がかかってしまうことが多く、たくさん聴きたいものにとってはひたすら時間が過ぎていくことが残念だったのだが、今回は決断も早かった。リクエストがあって「ワッフル・ワンダフル」に決まる。余韻がたまらないのか、曲の終了後もじっとしていたせっちゃんに向かい、「寝るなー」というヤジ。
リクエストを受け付けながら次にやる曲を決める。それに応じて使うギターのチェンジ。このあたりはせっちゃんのブロックサインでスタッフがギターを持ってくる仕組み。せっちゃんは、ワインを飲みつつ、タバコをくゆらせ、おそらくこの会場にいる誰よりもくつろぎつつ、そんな余韻を楽しんでいるようである。なぜなら、荷物の置き場もなく、ずっと立ち通しである自分たちはやはり辛いのだ。そんな中で、「大丈夫」のリクエスト。「それやろう」と素早い反応。それにしても、ギター1本で勝負できるこの技。街のギター弾きたちなんかには、もちろん太刀打ちできないものがあろう。なんか簡単そうにやっているから、誰にでもできてしまえそうな感じもしてしまうのだが。この「大丈夫」の間奏部分では、マネージャーの金子氏がリコーダーで登場。よりインパクトのあるものとなる。
また、「deja vu」「引っ越し」と続く部分は、「大丈夫」を含めて、本日の最初のハイライトだったかも。このあたりの曲順は、ここらで入れるというのもあったであろう。ちょっと盛り上げて、うっとりさせて、感傷的に落とすなど。
会場の空気が変わったのは、「Alright Charlie」より。なんといっても、バンド編成の音がもっとも似つかわしいと思われた、この曲なのだが、斉藤和義はこれをアコースティックギター1本で再現してしまう。ここから、「何処へ行こう」「すっぱいぶどう」「幸福な朝食 退屈な夕食」という展開なのである。演奏しているのはたった一人なのに、まるでバンドのノリみたいに感じられる。会場のファンも幾分疲れ気味にも関わらず、あちこちで身体を揺すってそのうねりをそれぞれに表現していく。
このあとは、ミニアルバムからの曲が続く。ラストは、「僕の踵はなかなか減らない」で終わる。斉藤和義が引っ込んだあとは、ため息とも疲れともとれないようなほっとした空気が一瞬漂うが、すぐにアンコールの拍手に包まれてしまう。筆者は、拍手をすることも忘れて、しばしぼうっと座り込んでいた。いったいどのくらい時間がたったのだろうか。
再び、斉藤和義が登場。いきなりの、「ドライブ」。まずは静かな始まりだろうか。しかし、このあとの爆裂はさらに凄いものとなるのだが。用意されていた、エレクトリック・ピアノには今まで手を触れずじまいであったが、「月影」のところでやっとこちらに移動してくれる。幾分姿がはっきりと見て取れるか。そして、「寒い夜だから」では、エッチな斉藤和義の世界がやっとこさ展開される。アンコール前の「君の顔が好きだ」ではほとんどまともな展開となり、ファンたちは「えーっ?」というような表情で例のやつを期待していたようなのだが、彼もあの曲での下世話な表現に飽きてきたのだろうか。さて、この「寒い夜だから」では間奏のところで「君意外にいい身体しているね」「あそこの○も○くてさ」などとのたまわってくれる。まあ、斉藤和義自身もかなり照れたような言い方であったが。
そして、「Honey Roasted Peanuts」では、ビール片手に髪の長い男が乱入。ベースを抱えていない伊藤広規で数フレーズのコーラスに参加したと思ったら、すぐに引っ込む。聴衆はほとんどが伊藤広規の乱入に気づき歓声を上げる。続いて、スタッフも乱入のコーラス。ラストは、来年の活動についてひとしきり述べ、感謝の謝辞である。最後の曲は、ミニアルバムから、「ユーモアで」
なんと、3時間半という長丁場であった。こんなのを一人で行ってしまうとは。たまげるを通り越して、さらなる期待が沸いてきたのも事実である。
評価★★★★1/2
<Set List>
(1) アゲハ (2) ねえ運転手さん (3) ワッフルワンダフル (4) Tokyo Blues (5) 好きな人の手 (6) 郷愁 (7)大丈夫 (8) 砂漠に赤い花 (9) 空に星が綺麗〜悲しい吉祥寺 (10) deja vu (11) 引っ越し (12) Baby, I Love You (13) Alright Charlie (14) 何処へ行こう (15) すっぱいぶどう (16) 幸福な朝食 退屈な夕食 (17) 白黒 (18) 古い話 (19) アネモネ (20) 君の顔が好きだ (21) ひとりよがり (22) Mojo Life (23) スナフキンソング (24) ウナナナ (25) 僕の踵はなかなか減らない
<encore>(26) ドライブ (27) 印象に残る季節 (28) 誰かの声じゃ (29) 月影 (30) 無意識と意識の間で (31) 寒い夜だから (32) Honey Roasted Peanuts (33) Fire Dog (34)ユーモアで

以上、2000年のログをそのまま残しました。この年は、斉藤和義に3回も足を運んだことになります。翌年夏にも行ったのですが、この時はログを残していません。おそらく、自分が見に行った中では、もっとも出来のよかったライヴではないかと思います。何しろ、MCを挟みながらも、3時間半34曲を一人で演奏するというのは、並大抵のことではない。その後大病を患った、せっちゃんではありますが、その後もこのようなパフォーマンスは見せてくれるだろうか。また見に行きたいです。

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