TIN PAN Concert 1975/2000 2000/12/20 NHKホール
昔、TIN PAN ALEYという、集団があった。主に、レコーディングで力を発揮し、メンバー的には、同じようなコンセプトのキャラメル・ママと重複する部分があるのだが、詳しいことは筆者は知らない。このライヴは、細野晴臣(B)、鈴木茂(G)、林立夫(D)というメンバーによって期間限定で復活したユニットに久保田麻琴(G、Vo。exサンディー&サンセッツ、久保田麻琴と夕焼け楽団)、浜口茂外也(Per)、佐藤博(Key)、佐橋佳幸(G。exUGUISS)、高橋祐子(Acordion)などの豪華サポート陣を加え、さらにはゲストで、忌野清志郎、大貫妙子、小坂忠、吉田美奈子(いずれもVo)を迎えるというあまり節操のないものでもあるのだが、それらに惹かれてて行ってみることにした。
渋谷にしては、遅い開演。これも社会人に配慮してのものだろうか。会場入りしても、まだ座席に着くことはできず、ロビーでしばし待たされる。よくわからないが、ビデオが回されていて、ファンをインタビューしている。客層は、年輩者が多いのかと思ったが、意外にもそうでもなく、20代と見受けられる人たちもちらほら。
やっと座席に着くことができる。今回は、一番上の3階席だが、やはり遠い気がする。ステージには、たくさんの楽器が並べられ、今や遅しと開演を待っているような感じである。やがてメンバーが入ってきてインスト曲を演奏する。それが終わり、メンバーが口を開く。主にしゃべっているのは、リーダー格の細野晴臣(ベース)。他のメンバーは、ギターの鈴木茂に、ドラムスの林立夫だ。本来ならば、これにキーボードの松任谷正隆を交えたのが、TIM
PAN ALEYなのだが、松任谷正隆はやはりユーミンに専念なんだろうか。
さて、この公演ではたくさんのゲストが出演する。まず入ってきたのは、女性。とたんに華やいだような雰囲気になる。なかなかにソウルフルな声にもしかしてと思ったら、吉田美奈子と大貫妙子であった。そして、ステージでは徐々にサポートのメンバーも、加わっていく。見るからにステージが狭い。主役のはずのTIN
PANの3人は、ほとんど後に引っ込んだような形で、白いスーツにカウボーイハットといういでたちの久保田麻琴が彼らに替わって、フロントマンのような役割をしているようだ。曲はいつの間にか、久保田麻琴のものとなり、豪華な女性コーラス陣も引っ込んでしまう。
彼女たちが再び出てくるが、今度は黒っぽい服の男性をともなっての入場。小坂忠である。まずは彼の持ち歌「機関車」を演奏したあと、小坂忠もバックに加わったさらに豪華な演奏が続く。TIN PANの3人は、やはりバックバンドにとどまるような連中ではない。いつの間にか、鈴木茂がリードヴォーカルとなり、「Lady Pink Panther」などの曲を演奏。それにしても、鈴木茂に加え、若手ナンバーワンのギタリスト、佐橋佳幸がサポートに回るという、贅沢な布陣。この前年松本隆30周年記念ライヴで、この形が披露されたのだが、こんな機会はもう二度とないだろう。
演奏は淡々と続いている。サポートするメンバーも、日本のPops/Rock界のファンならば、所有する音源で必ず登場するような人たちばかり。浜口茂外也という、パーカッショニストは、作曲家の浜口庫之助(「バラが咲いた」マイク真木など)の息子で、これまた多岐に渡るセッション活動を行っている。彼は、パーカッションのみならず、フルートとか、サックスなどの管楽器も難なくこなしていて、これまた発見である。また、キーボーディストの佐藤博はこれまた多くのセッション及び、ソロ活動も行っていた人。そんな大集団の演奏はやや枯れたものを感じさせるが、ほとんどうち合わせなしでも、この程度のホールの演奏はこなしてしまうのだ。それにしても、聴衆は一人も立ち上がらないというのは、当然であろう。ま、そんなシーンは似つかわしくないし。
場は、佳境にさしかかりつつある。最後に呼ばれたのは、「ボス」忌野清志郎である。さすがにこの人が登場すると、場が華やぐ。ステージ衣装もRCサクセション当時のままで、「Oh Yea!」という、シャウトもこの人のために用意されているような感じである。現れたと思ったら、すぐに全員退場、暗転となる。
暗い会場に響くアンコールの拍手。演奏が始まって、まだ2時間にもなっていないのだ。誰もが再び演奏を聴きたいものだろう。問題なのは、パフォーマーたちの年齢が高いため、比較的インターバルを挟まないとだめなのではないかというところだが。しかし、すぐにメンバーが出てきた。
ラストは、ヴォーカル陣が一斉に揃っての歌い回し。いつの間にか、プログラムには名前のなかった、高野寛までが佐橋佳幸の横でマラカスをかき鳴らしながら演奏に加わっているではないか。こうしたメンツを見ていると、前年の松本隆プロジェクトに関わったメンバーから、TIN
PANの企画が出てきたようにも思えてしまう。最後の最後は、ステージ上から雪が降ってきて、全員揃ってのカーテンコール。それにしても、2時間きっかりの演奏には、メンバー的にまとまりがないということもあるのだろう。そうした面で、不満もあったのも事実であるが。
評価★★★
以上、2000年のライヴログでした。個人的には、TIM PAN ALEYとかキャラメル・ママあたりは、日本のPops/Rockを聴き出したあたりでリンクしていないので、それほど深い興味はなかったのですが、ゲスト名に惹かれて行ったようなものです。特に、大貫妙子、吉田美奈子、忌野清志郎をステージで見ることができたというのが収穫です。個人的には、哀愁を帯びた再結成みたいなものはあまり好きではないのですが、このようなゲストが出るというのであれば、また見に行くこともあるでしょう。
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