キリンジ Tour2000/PT3 渋谷公会堂 2000/12/01
兄弟デュオ、キリンジ。この不思議な言語感覚を持つ二人組には、デビュー当時から注目すべきものがあったのだが、いかんせん、ライヴに登場する機会が少なく、このたびようやく見に行けることになった。このたび3枚目のアルバムもリリースされ、どんなもんかと乗り込んでみたのが渋谷公会堂。大都市に限られたツアーであるが、これがファイナル。渋谷公会堂前には、かなりのファンが並ぶ。彼らも、数少ないキリンジの露出を待ちこがれていたのであろうか。ファン層は、20代中盤あたりが主だったところだろうか。
ニューアルバムである『3』のインスト曲、「Shurrasco ver.3」が流れ、メンバーが登場。いきなりのオープニングは、「風を撃て」である。比較的落ち着いた曲の多いキリンジであるが、会場では早くも立ち上がる者がでてくる。筆者は二階席であったが、前の客が立ち上がり、見えなくなってしまう。また、この周囲にはなぜか階段に座ったり、ここで立ち上がる者が多く、必然的にこちらも立って見ることとなる。一階席はほとんどが立ち上がっていたようだが。
メンバーは、キリンジ弟、堀込泰之(Vo/G)がステージ中央、兄、堀込高樹(G/Cho)が(こちらから見て)右に位置する。そして、左側には、ギター時にはキーボード。その後ろが一段高くなっていて、左からベース、ドラムス、キーボード、サックスまたはフルートという編成だ。それにしても、最初の数曲は、泰之のヴォーカルがかなり反響していて、バックの音と釣り合わないような感じ。それでもキリンジは演奏を繰り返し、数曲たってやっとMCに入る。
「あーあー、うぉっほん」(以下、堀米泰行の会話は緑、兄の堀込高樹はオレンジ。)暗い会場に響く、咳き込んだ男の声。これが堀込泰之の第一声なのであった。明かりがついてみると、なぜか紙を手にしていて、これに書かれたものを読んでいるようであり、そのアンバランスさに会場がどっと沸く。
再び、演奏に戻るが、ようやくPA関係も落ち着きを取り戻し、ほぼすべての音が聞こえるようになってきた。キリンジというと、音源で聴く限りは、あまりロック寄りのバンドではないと思っていたのだが、実際の演奏は、ギターをかなり前面に押し出したような感じである。それに混じって、時折のサックスが印象的。ふと、周囲を見渡すと、曲にあわせて身体を揺らしているばかりでなく、しっかりと踊っている女性などもいるような感じだ。
そして、再びキリンジ弟が紙を手にとって、MCが始まった。今度は兄も加わって、なかなか軽妙なやりとりが見られる。このあたりは兄弟ならではか。さて、メンバー紹介。これまでのツアーでは、前にいるのは、キリンジの二人だけだったらしく、泰之の隣にいる、ギターとキーボードの人こそ、アルバムのプロデューサーでもある、冨田恵一その人であった。この最終日のみの出演らしい。そして、後ろのベースは、立川智也。ファーストアルバムでもベースを弾いている、長髪の人。腰痛持ちなので、キリンジ兄が「僕と同じですね」などというが、弟に、「まったく相手にされません(笑)、では次」と、あしらわれているのも、兄弟ならではの、軽妙なやりとりだろうか。ドラムス、島村一徳。まだ若そう。この人も、ファーストアルバムで、叩いている。キーボード、大山泰輝。スキンヘッドの異形は、なかなか目立つ。この人は、キリンジのやりとりに退屈してくると、思わず背伸びをしてしまうような人なのであるが。そして、サックス、音川英二。
一通りの紹介が終わると、いまだに紙を手にしているものの、キリンジの二人には、リラックスしたものが感じられるようになってきた。そして、再び、曲へ。中でも圧巻だったのは、「牡牛座ラプソディ」である。それは、兄、堀込高樹のギターがかなりロック寄りのフレーズを弾いていたからばかりではないだろう。また、彼らがデュオといっても、いまいちぴんとこなかったのは、声の質が意外にも似ているということがあろう。兄弟なのだから、当たり前なのだが、二人が絡むように歌う場面もあり、こういう風になっていたのかと納得。
また、ここで、MCが入る。ニューアルバムを買ってくれたかというもので、自らが、「あの暑苦しいジャケット」と自嘲気味に語るのだ。さらには、この映像を撮ったカメラマンの手による、ビデオも発売され、カレンダーもあると営業活動。
「これを会社などに持っていってもですね」
「キリンジ?誰?」
「という反応なんでしょうけど」とのやりとりも。
再び、曲に。キリンジがこれほど、濃密な演奏を行うとは思ってもいなかった。もうかれこれ、2時間は経過しているだろう。はじめは、音が割れていて、どうなるかと思ったが、いつの間にか解決してしまっていた。キリンジの二人とメンバーが退出していく。会場は暗いままだ。あっという間の、2時間であったが、もうアンコールである。
しばらくして、二人を先頭に、メンバーが入場。一人一人コメントをつけてのものだ。泰之がMCの真っ最中、高樹がギターのチューニングを行っている。これに目を付けた泰之は、「俺もやろうかな」と二人してのチューニング。これに少し会場も沸いたが、「まあまあ、お兄さん、たまにはデュエットでもしましょうか」と始まるのが、ニューアルバムから、「悪役」である。
ステージでは、「千年紀末に降る雪は」が演奏されている。天井からは、白いものがちらちらと降りかかる。これほどの効果はない演出。ラストは渋く決めてくれた。時計は9時近くにもなろうとしている。外に出ると、かなりの冷え込みであったが、こちらは、幸い雪がちらつくことはなかった。
評価★★★1/2
<Set List>
(1) 風を撃て (2) 双子座グラフィティ (3) 雨を見くびるな (4) ニュータウン (5)
BBQパーティ (6) 耳を埋めて (7) メスとコスメ (8) アルカディア (9) むすんでひらいて (10)
ダンボールの宮殿 (11) 君の胸で抱かれたい (12) 牡牛座ラプソディ (13)
車と女 (14) エイリアンズ (15) イカロスの末裔 (16) グッディ・グッバイ (17)
あの世で罰を受けるほど (18)サイレンの歌
<encore>(19) 悪役 (20) 銀砂子のピンボール (21) 千年紀末に降る雪は
以上、2000年のログをやや修正しました。ツアーメンバーの名前なども確実に記しています。それにしても、これ以降、キリンジを聴きに行く機会がないというのも残念。この時には、オープニングで機材の関係だろうか、やや残念なことになりましたが、もともと演奏力は確実なものがあるのではないかと思うので、これからだいぷ時がたっているため、よりリラックスした演奏が聴けるのではないかと思います。
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