斉藤和義 Cold Tube Tour  渋谷公会堂 2000/06/24

約2年振りの斉藤和義である。この2年の間に、斉藤和義名義の活動としては、シングル「ソファ」と、ベストアルバム『Golden Delicious』、ライヴアルバム『十二月』『Golden Delicious Hour』を出しているが、昨年はレコード会社を移籍し、バンドSeven名義でアルバム『Seven』を出したのみである。そして、この春に『Cold Tube』というアルバムを出したばかりなのだが、今ひとつインパクトに欠けるような出来のものであると言わざるを得ないのである。そんなところに、ツアーである。はじめは行くつもりでいたのだが、チケット争奪戦に敗れ、あきらめかけていたものの、チケットニフティで残席が見つかり、いざファイナルへ。

当日は、あいにくと雨。ほぼ時間通りに渋公に出向くと、まだ列も短くはじめの方に並ぶことができた。中に入ると、早速Tシャツを購入。あとは、ゆっくりと待つだけだ。今回の席は、2階の前から4列目くらいのやや右寄り。ステージを見渡すと、以前のBecause I'm Freeツアーと同じように、絨毯敷きのスペースがある。マイクの左側に、エレピがセットされ、一番左側にキーボードのセットがある。中央の後ろには、ドラムセットがあり、右側がベースのスペースか。開場でもらった冊子によると、メンバーは、ベース、伊藤広規、ドラムス、小田原豊とSevenのメンバー。それに片山敦夫がキーボードとして参加する模様。そんな中をローディたちが音声チェックをして回っている。

時間は、5:45頃。約15分遅れである。やっとアナウンスがあって、「Thank You」のSEにのせて、メンバーが登場。さすがに、ニューアルバムからのものを意識しているようである。オープニングは、「レノンの夢も」だ。開場はほぼ満席。ロック色の強い彼だが、6割くらいは女性客である。その斉藤和義は、ベージュのスーツに、オレンジのシャツ姿。そのシャツの襟を大きく開いて、ジャケットの上に出している。余程このスタイルが好きなのだろう、前回見たツアーの時とシャツの色こそ違え、ほとんど同じだ。そんな斉藤和義に会場はほぼ総立ちとなる。

とはいえ、2曲目の「例えば君のこと」が比較的静かな曲だったためか、立ち上がりはじめた観客の一部は座りはじめてしまう。確かに、最新アルバムの曲ではなく、じっくりと聴いた方がいいような曲ではある。続いて「彼女」へ。

ここで初めて斉藤和義が口を開く。「イエー!」といつもの切り口上。「なんだ、渋公工事やったって聞いたから、変わっているのかと思ったら、変わってないじゃん」こうしたトークにも会場は沸く。ただし、今までのような悲鳴に近いせっちゃんコールなどは少なくなっている。それだけファンも大人びてきたということなのか。ここで、左にあるエレビに移動して、「マリリン」。初めてのニューアルバムからの曲だ。今回のツアーは、4月からということで、デビューして以来もっとも長いもののようだ。しかも、サポートのギタリストがついてなく、ほとんどの曲のリード部分を斉藤和義が弾かなくてはならない。それだけ自分自身に負担のかかるものだが、そうしたことも楽しんでしまっているようにも見える。「マリリン」のバックには、マリリン・モンローの映像も流れる。

これを終えて、再びギターを手に取り、「No Blues」を。次の「太陽の目安」では、知り合いのカメラマンの画像(本人も気に入っていると言っていた)をバックに流し、しっとりとした雰囲気でライヴが進行していく。この画像を使ったもの、実は弾き語りツアー「十二月」で実験的に試みていたのだが、バンドのライヴでもなかなか良いものだ。ただし、スクリーン上でなく、無造作に掛けられた布に数分割して投影されるため、こちらに目を奪われがちにならないのがまたよろしい。布だから、皺になったところは、歪みが出るし。続く、「かみなり」も同様に、映像が活用される。ここでは、伊藤広規はウッドベース型のものを使用する。斉藤和義は、再びキーボードである。

ライヴ前半は、しっとりとした映像と、おとなしめの楽曲ということもあって、じっくりと聴かせる展開なのだろうか。斉藤和義も、アコースティックギターを多用するという展開だ。観客も今ひとつ立ちきれないような感じなのか、二階席では座って聴いている人が非常に多い。もちろん、一階では、ほとんど立って見ているようなのだが。そんな映像と楽曲のショウの打ち止めは、「青い光」であった。ここまでは、立った4人編成のバンドのためか、補助的にマニピュレーターも入っていたように思う。

ここの合間に、斉藤和義は上着を脱いで、オレンジ色のシャツ姿となる。そして、ハーモニカホルダーをつけて、アコースティックギターを構える。「そういえば、2、3日前にも見たんだよ」といって始まったのが、シングルカットされた、「アゲハ」。見ると、続々観客も立ち上がりはじめている。ここまで溜まりに溜まっていたものが、弾ける瞬間なのか。次の「Alright Charlie」では、エレキセットになり、爆音のソロも弾く。アルバムでは、どうということのない曲であるが、こうしてみると凄いパワーを秘めた曲だ。

ここまで来ると、誰も斉藤和義を止められない。「Wonderful Fish」では、いつの間にか、「♪〜Fish」というところで、両手を突き刺すように、ステージに向けるという観客のパフォーマンスが定着していた。以前にはなかったことだが、このツアーで定着したのだろうか。これについて行けない自分がなんだか恥ずかしいものである。

そうこうしているうちに、彼らがステージを去る。もちろん、アンコールの拍手は続いている。ステージ上には、このツアーのロゴでもある、炎のマークが投影され、これがいつの間にか、アンコールの拍手と合わせるように、リズムを刻んでいるのだ。ツアースタッフもなかなかやるものだ。

と、斉藤和義がオレンジのTシャツに着替えて登場。ステージ上では、マネージャーにワインを注がれて、上機嫌である。そのあと、伊藤広規、片山敦夫、小田原豊の順で、ドリンク片手に登場するのだが、小田原の紹介は、「小田原"チンピラ"豊」というものであった。

アンコールでは、マネージャー氏の撮影による、映像がステージ上のメンバーを捉えるかと思うと、ポラロイド写真に切り替えて、取ったものを次々と、会場に投げ入れる。ゲットできた方たちがまことに羨ましい次第。そんな中で、「君の顔が好きだ」もあったのだが、かなり騒然としてきて、お決まりの下ネタ連発は、何を言っているのかわからなかった。ビデオスタッフも入っているから、ある程度自重したのかな。ラストは、「歌うたいのバラッド」で、終了後はメンバー4人が肩を組んでのご挨拶。

それにしても、サポートのギタリストがいなくても、ここまでのパフォーマンスができる、斉藤和義。アルバムは大したことがないと多少裏切られた感じだが、次に対するワクワク感を持たせてくれたことは大いに評価できる。

<Set List>

01.レノンの夢も」 02.例えば君のこと 03.彼女 04.マリリン 05.No Blues 06.太陽の目安 07.かみなり 08.Rain 09.海に出かけた 10.好きな人の手 11.青い光 12.アゲハ 13.Alright Charlie 14.Wonderful Fish 15.wanna do 16.僕の踵はなかなか減らない 17.煮えきらない男 18.Cold Tube
(encore)19.Honey Roasted Peanuts 20.君の顔が好きだ 21.歩いて帰ろう 22.すっぱいぶどう 23.歌うたいのバラッド

評価★★★★


以上、2000年のログを残しました。
このあと、斉藤和義はAnother Cold Tubeという、Sevenではないメンバーでのライヴを行い、アルバムも、『35 Stones』『Northern Land』『青春ブルース』とリリースしてます。2003年には、大病を患いましたが、復帰してます。一時期のアルバムのテンションはやや下がったような感じもしますが、相変わらず、ライヴのパフォーマンスは素晴らしいものがあり、バンド形式でも弾き語りでも申し分のなさは、もしかすると日本一のパフォーマーなのではないかとも思う次第。またライヴではオーケストラを入れたものもありました。
また見に行きたいミュージシャンの一人であります。

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