須藤薫&杉真理 春のコンサート 渋谷Club Quattro 1999/03/31

ピカデリーサーカスが正式にCDデビューする以前から杉真理のライヴ活動は活発なものがあったのだが、なぜか今まで見に行く機会を失っていた。そんなさなか、須藤薫とのジョイントがあることを知り、行けることになった。とはいえ須藤薫はきちんと聴いたことがなかったので、レコ屋に行き、アルバムを買ってきた。それは企画盤ではあったが、なかなか楽しめる『Tear-Drops Calendar』というもので、ほとんどが杉真理提供の楽曲である。なるほどこの二人はつながりが深いのであるなと今頃になって感心する。杉真理も好きなことは好きなのだが、あまりアルバムを持っていない。ということなので、演奏曲はともかく雰囲気が伝えられればと思い、アップする。


クワトロには、開演時間が少し過ぎた頃に着く。整理番号順の入場なので、いきなり4Fにはあがらず階段を上った。係員が整理番号順に入場を呼びかけていて、程なく自分も入場。会場はフロア前方に椅子が設置されここと、ステージ脇のテーブル席はすでに埋まっていた。ドリンクを取り、空いたスペースを探す。

照明機材下のところが比較的空いていて、椅子はないもののテーブルに肘をついて開演を待つ。ステージからは一番離れたところだが、他よりも一段高くなっていて、俯瞰で見ることができる位置だ。

入場したときは満員にはほど遠かったが、開場近くなると続々とファンが押し掛けてくるようだ。目算で500人くらいは入ったのではなかろうか。

すべての照明が消え、ステージが照らし出される。メンバーの入場だ。バンドは、右からギターの渡辺格キーボードの島田陽一、ピカデリーサーカスや、杉真理には欠かせないメンツのひとりだ。ドラムの清水淳。そして一番左がベースの谷口守。左利きのベーシストで一瞬風祭東かとも思ったが、なんでもネスカフェの缶コーヒーのCMの歌は彼がやっているらしい(明石家さんま出演)。

須藤薫は水色のジャケットに白いパンツ姿杉真理は数色のピンストライプを織り交ぜたプレッピーな(もう死語だ^^;)味のするジャケット(昔だったら迷わず買い求めていたかもしれない)を肘までまくり上げている。須藤薫が左側、数メートル置いて杉真理がその右側に位置する。

オープニングを須藤薫が歌い、その次を杉真理が歌う。どうやら交互に持ち歌をやっていく模様。とはいえ、どちらの曲ももう一方がバックのメンバー共々見事なコーラスワークを聴かせてくれるので、少しも飽きない。

オープニングの挨拶。
「こんばんは。こんなに集まってくれてありがとう。今夜はいつも子どもばかりの渋谷の街を、私たち大人の街にしたいと思います。そのためにも、杉さん、みんなを引っ張っていってね!」(須藤)
そう会場に集まった聴衆は30代が中心。ここではルーズソックスや、尻までずり下げたジーンズ姿は似合わない、正に大人の社交場ではないだろうか。それはそのようなルックスだけではなく、彼らの歌を共感できるような経験と時間が必要なのである。

そして、わずかに聞き覚えのあるメロディが。買ったばかりのアルバムに入っていた、「フロントガラス越しに」である。続いて、大瀧詠一作品の、「あなただけ I Love You」
それにしても、見事に息のあったコーラスワーク。須藤薫の楽曲は、ほとんどが杉の手による作品ということもあるのだろうが、二人とも身体で覚えているような感じ。須藤薫はブランク後久々のライヴ、杉真理はピカデリーサーカスはじめこのところ忙しいということから、あまりリハーサルに時間をかけられなかったことが想像できるのだが、これはお互い曲に対して愛着があるからこそできることと思う。

杉のMC。
「薫ちゃんて意外に隠れファンが多いんですよ。ピカデリーの上田雅利さんと話していたとき、「Foolish」(須藤薫の曲)の話になって、昔好きだったんだって。で、ピカデリーでその替え歌やりました。『チューリップ、チューリップ』って(注・上田はチューリップのオリジナルメンバー)。他にも薫ちゃん好きな人多くて、松田聖子さんとか。まあ、二人ともサンミュージックっていう事務所だったんですけれど(爆笑)」
「松田聖子さんとは対談させてもらって、そのこと聞きました。でも、結婚式には呼んでくれなかったんですよね(爆笑)」

曲は杉に移り、「渚であいたい」である。前方の杉ファンは大喜び。一方の須藤薫は、「この恋に夢中」で、迎え撃つ。須藤薫ファンも楽しそうにしている。中には、彼女のお子さんの幼稚園の先生もいたそうな。

「夏の歌のキーワードとして、『雨』があるんだけど…」
ということで始まったのが、「バカンスはいつも雨(レイン)」。もうこの曲が聴きたくてここに通ったといっても良いくらい。個人的にはそれだけ思い入れがある曲である。
そんな杉真理も、45歳だそうだ。お子さんの「学童」から出し物の依頼を受け、急遽「だんご三兄弟」をコピーしたとか。これは結局実現しなかったそうだが、子煩悩さが伺われる。そんな杉だが、ステージ上では永遠のポップス青年である。声だって昔のままだし、この曲にはひときわ思い入れのある聴衆もたくさんいたことであろう。

一方の須藤薫は、「Rainy Day Hello」。これまた杉の曲。杉真理は、過去に竹内まりや(大学のサークルが一緒で後輩)などにも曲を書いているが、これほど感性がぴったりと来る相手は須藤薫をおいて他にないだろう。コンビとしてもあっているし、私生活抜きにして、最高のパートナーなのではないだろうか。

そんな二人が新曲を披露。なんでも、杉の元へ、とある評論家の話が届き、かちんと来て作ったものらしい。それは、80年代はバブリーな時代だったからこそ、「プールサイドの恋」なんてものがもてはやされたが、これからはもっとリアリティのあるものが来る、すなわちコンビニの前で恋を語るものなどだというのだ。それは杉さん、怒るよなあ。
「じゃあいつまでもコンビニの前でやってろよ。僕はそんなの嫌だし、音楽で魔法を見たいからね」
曲は、「ロマンチック天国」「さよなら Happy Tears」の2曲。なんでもデモテープを録ったり、今後CD化も予定されているらしいが。そうだとすると須藤薫の活動は本格的に再開である。

曲はメドレー式に続き、テンポも速くなった。ラストは、「素敵なサマーデイズ」である。ここでいったん退場。

拍手がアンコールを呼んでいる。バンドは程なく登場。須藤薫は上着を脱いで、ノースリーブ姿になった。花束が二人に渡される。なかなか熱烈なファンが多いようだ。

「ここで我々のスペシャルゲスト、里村美和!」
をを、一時佐野元春の The Heartlandにもいたことのある、パーカッショニスト。本職が入ると、違う。クワトロのステージでは、マイクを通さなくても、タンバリンが鳴りやむことなく聞こえるのだ。
曲は、「Foolish」と、杉の曲(不明)をやって、また退場。

2度目のアンコールは、「いとしのテラ」から始まる。これが終わり、須藤薫のMC。
「今夜は、どうもありがとう。みんなのおかげで渋谷がステキな大人の街になったと思います」という挨拶で本当のラストに突入したのだが、イントロが始まって、「あっ、ごめんごめん」と間違えたのは当の須藤薫であった。
「ああいう挨拶して、わあ大人だなあと思ったんだけど、私が間違えちゃって〜」ここはご愛敬。それより前には、杉真理が同じようなとちりを見せていたのであいこである。

二度目はきちんと始まる。やはり最後は、「涙のステップ」

いや本当に楽しめた約2時間である。両者ともに上手いし、しゃべりもなかなか。これはまた足を運んでしまいそうである。
評価★★★+1/2★

以上、1999年のログを残しました。
この年、須藤薫/杉真理というクレジットで、『Pop'n Roll Paradise』『Pop'n Roll Planet』という、2枚のコンピレーションアルバムをリリースしてます。このライヴも復活への延長ということだったのではないでしょうか。須藤薫は、その後単独での活動はない模様ですが、杉真理はソロアルバムを新星堂のレーベルからリリースするとともに、『Niagara Triangle Vol.2』の20周年にあわせて、『Overlap』『Stargazer』を2枚組でリマスターして発売するばかりでなく、BOXまでもが再発されました。また、2003年末にはなんと、ピカデリー・サーカスまでもが、活動再開するという、充実ぶり。当面、この人の活動は続いていくと思われます。

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