山下達郎 Performance1998-1999 NHKホール 1999/01/16

大阪公演から、2ヶ月が経った。チケット争奪戦にも、何とか勝利し、4席確保。友人及び、ネット上の知り合いと見に行くことになった。果たして、セットリストや、トークなどどんな風に変わっているか、ものすごく興味があった。
土曜日の夕方は、すでに暗く、公演通りを歩いていくと、東武ホテル付近から、ダフィーがやたらと声をかけてくる。会場に着くと、すでに列が作られ、まさに開場しようとするところである。今回も、やはり年齢層が高い。入り口のチェックは、何もなかった。入って、仲間たちは、「自主制作CD」などを無事に確保。
席を探すが、2階の右側って、こんなに角度がついていたっけ。ステージセットは前回と同様で、この位置だと、コーラス隊が見えないことになる。客電が落ちて、アカペラのコーラスのテープが流れる。メンバーがぞろぞろと入場し、最後に青いスーツ、青いシャツの達郎が登場。オープニングは、やはり「Sparkle」だ。ステージが明るくなって、メンバーたちもよく見えるようになる。右側のキーボードの難波弘之は、かろうじて見えるが、やはりコーラスの三人は完全には見えない。曲が終わって、「こんばんは、東京!」と達郎の第一声。
続く、「Day Dream」も、前回と同じ。それにしても、達郎の弾くギターの音が何ともびんびん伝わってくるのが嬉しい。普通、ソロコンサートだと、その人の担当する楽器のパートは、あまり重きを置かれないような気もする。なぜなら、乗ってくると、楽器を弾く手を休めてしまうようなこともあるからだ。そうしたところは、サポートメンバーがカバーするのだろうが、この人の場合は、サポートに名手、佐橋佳幸がいるというのに、きっちりとリズムを刻んでいるのだ。また、そのように音のバランスも組まれていることに好感が持てる。
前回、「ドーナツソング」は、ドラミングを中心としたイントロ部分のリフが繰り返されるだけであったが、今回はきっちりと歌う。後半、同様の「春よ来い」とか、「Iko Iko」などを取り入れたり、リズム部分の拍手を観客に要求するところなどは同じである。続く「Paper Doll」では、佐橋佳幸がスライドギターも聞かせてくれる。ソロを続けて、重実徹、難波弘之とバトンが渡っていくが、前は、達郎のソロであった。このあたりが変わったところか。それにしても、この会場は、音がいい。大阪フェスにも負けないくらいである。
ここで、初のトーク。それにしても、しゃべっている内容や、アクション、ちょっとしたジョークに至るまで、前回と同様。それでも、何とか場に合わせた話をするので、それほど飽きない。何でも、このキャリアにして、NHKホールは初めてなのだそうだ。というのも、キャパシティの問題で、これで多くのチケットがさばけることによって、そのあいた日の分を地方の公演に振り分けられるからだという。大阪では、やや地方会場に対して苦言を呈していたように思えるのだが、それもこの人流の愛情の表し方だったのだろうか。
そして、アルバム『COZY』から「群青の炎〜Ultra Marine Fire」(ここは、ヴォーカルに専念)、このあとは、懐かしの84年頃のセットが続くのだそうだ。なんといっても、今回は7年振りの「リハビリツアー」(本人談)であるから。そのような話の中で印象に残るのが、シュガー・ベイブ時代の大阪のライヴ。何でも、呼ばれた先がライヴハウスなんてものじゃなくて、正真正銘の喫茶店。バンドが、テーブルの間の通路に、縦一列になって、演奏したと懐かしそうに語っていた。
第一部のラストは、エレビに移っての弾き語りのイントロから始まる。「潮騒」である。ここでは、バンドはあとから達郎に追いつくようにして、演奏するのだ。そこで、バンドがいったん退場。「今日は、ここ初めてで、ネタバレなしだから、3曲やりましょう」と語り、会場に大受け。しかし、どこかで同じようなトークを聞いたことがあるぞ。「中には、イントロなしの曲もあるんだけどね。難しいんだけど、どうやってやるかは、ひ・み・つ」と振り付きで語りかける達郎がどこかお茶目である。やはり東京育ちであるから、嬉しいのであろうか。トークもスムーズだし、歌い終わったあとにも、息が上がるようなことはなく、ものすごくリラックスしているように感じた。ツアーも終盤にさしかかり、やはり声の伸びが違うようにも感じられるのだ。
アカペラの第二部が終了。メンバーが入場してくると、最前列から、花束やプレゼントが手渡される。今回は、難波弘之に向けてのものもあった。ちなみに、達郎と難波弘之は、同い年なのだそうだが、頭髪の量的には、だいぶ違う。そして、ヒット曲を次々と演奏していく。しかし、メンバー紹介では、ツアーメンバーもだいぶリラックスしていたり、ツアー慣れしてきたなあという印象を強くする。各メンバーのエピソードを交えながら、特に、ギタリストとキーボーディストには特別に時間を割いている。佐橋佳幸は、かつて達郎のプロデュースで『Trust Me』というアルバムを出したことがあり、ツアー初参加といえども、その実力は達郎自身が知り尽くしている。大阪では、達郎以外にトークを交える者がいなかったのだが、「仕事を選べよ。ところで、次はどこでやるの」という振りに、しっかりと山弦のプロモーションもしてしまう、佐橋佳幸である。重実徹には、「Kiroroのイントロを弾いている」というのを暴露した上で、その部分を実祭に弾かせてみる。難波弘之には、「野獣王国」のプロモーションも語らせてしまうほど。最後に、サックスの土岐英史の紹介をとばしてしまうほどであったが、これはメンバーのフォローですぐに気づく。そうした達郎のトークであるが、ちょっとしたジョークなどにも、メンバーが適当にアクションを入れたりして、さすがに後半一体感がでてきたようにも思った。それにしても、このトークはかなり長く、30分くらいはゆうに続いたようにも思う。
そして、山場は、「Let's Dance Baby」のクラッカーである。もう、1番の後半くらいから、会場のファンは、持ち物からなにやらごそごそと取り出すような仕草の者がたくさん。その瞬間は、もう至るところでオレンジのラインが上がるのだ。やはり「しつこいな」と呟くが、嬉しいには違いない。もしこれがなくなったら、どういう反応が起こるか見物であるが。
アンコールでは、白いシャツ姿になり、お約束通りの登場。ラストは、「Ride On Time」のメガホンと生声での梯子登り。やはり声には自信があるのだろうということが十二分に伝わってくる。ここで、メンバー集まって、各自が手を繋いでのお辞儀。やはりファイナルなのだなあという感を強くする。メンバーが去り、達郎ひとりで、ギターの弾き語り。曲は、懐かしの「Last Step」である。これもまた雰囲気があっていい。何しろ、前回はなかったものだし。そして、アカペラの「Your Eyes」で大団円である。
時計を見ると、22:00を回っていた。3時間半を上回ることとなった。とはいえ、かなりトーク部分が占めていたように思う。残念だったのは、照明がいったんついてしまったこと。また、やはり客層が大阪と違いおとなしいのか、かなり後にならないと総立ちにならなかったことである。まあ、総立ちになるかどうかは問題ではないのだが、どういう訳か、一度総立ちになりかけて、退いてしまったことだろうか。また、感心したのは、佐橋佳幸にくわえて、難波弘之もコーラスに加わった曲があったことである。
ほとんど変わっていない内容ながらも、かなり堪能できた。同行のメンバーも一様に「良かった」という感想を漏らしていた。
評価★★★★
Set List
1.Sparkle 2.Day Dream 3.ドーナツソング 4.Paper Doll 5.群青の炎〜Ultra Marine Fire 6.こぬか雨 7.夏の陽 8.風の回廊(コリドー) 9.潮騒 10.Stand By Me 11.Close Your Eyes 12.Chapel Of Dreams 13.Smoke Gets In Your Eyes 14.クリスマス・イブ 15.蒼茫 16.Get Back In Love 17.メリー・ゴーランド 18.Let's Dance Baby 19.Loveland Island (encore)20.パレード 21.Funky Flashing 22.硝子の少年 23.Bomber 24.Ride On Time 25.Last Step 26.Your Eyes

以上1999年のログを残しました。地元に戻ったということもあるのか、トーク炸裂。曲数の割には、長いライヴでした。このあとの山下達郎の活動としては、竹内まりやの復活ライヴとライヴアルバムリリース、自らのRCA/Air時代のアルバムのリマスター、それに伴うライヴ、竹内まりやの『Bon Appetit!』のプロデュース、さらには、まりやのカバーアルバム『Longtime Favorites』プロデュースと、本業以外が忙しく、自身のアルバムは2004年初頭の時点ではまだなのである。

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