小山卓治 光のオルガン 下北沢Club Que 1998/12/24

その日、下北沢の駅でネットで知り合ったMIENAさん(当時のハンドルネーム)と待ち合わせて、Club Queに行く。もちろん、初顔合わせであったが、何とか無事に遭遇。ちょっと腹ごしらえして、会場へ。
階段のところに列がすでにできていたが、何とか早めの入場ができた。入り口では、カメラチェックもなく、デジカメを持ってこなかったことを後悔。ビールを飲みながら待っていくと、会場がどんどん埋まっていく。パワーステーションなんかで見たことのある、いつもの顔ぶれも見える。
時間が近づいて、卓治コールだ。
ステージには、ギターがひとつ置いてある。奥の方は薄暗くてよくわからない。「バンドじゃないみたいですね」とMIENAさんと確認。時間が来て、卓治ひとりの登場。相変わらずの無精ひげと黒が基調のスーツ。シャツだけが黒っぽいえんじ色である。オープニングは、「傷だらけの天使」。会場のファンも、サビの部分を大合唱である。なんといっても久しぶりのソロコンサートである。たまりにたまったものが、こうさせたのであろう。
続いて、「パラダイス・アレイ」。早速、おきまりになったように、弦を切る。
「ようこそ。久しぶりのライヴ。今年はロンドンに行って来たので、その土産話なんかもしてみたい」というMC。ここでギターチェンジ。その後のMCでは、ロンドン土産の12弦ギターを見せながら、「ピックアップもつけたんだ、いいだろ」という話に、「それって何回払い」という、観客の突っ込み。
「うるさい(笑)。ギターってのは、つくづく女性の身体に似ていると思うんだ。このギターは、シャーロットっていうんだ。これで作った曲をやりたいと思う」ということで、新曲を披露するが、タイトルは不明である。
続いて、「青空とダイヤモンド」。まだレコーディングしていない曲である。これは、エレアコで演奏。そして、奥に置いてあった、エレビに移動。係が出てきて、何事か卓治に耳打ち。
「えっ、何々?ああそう。入り口のところに人が溢れていて、入りきれないそうだ。もう少し詰めてくれないか」ピアノの弾き語りを聴くのは初めてだ。ここでやったのが、『夢の島』に入っている、「PM11:11」。MIDORIのために書いた曲という注釈付きの曲。このMIDORIという人、当時の女性ミュージシャンだと思うが、僕は知らない。でも、女性の立場で語りかける雰囲気が、(見たことないけど)トム・ウェイツあたりを意識しているのだろうか。
ロンドンの入国の時の話。不法労働者に間違われて、爆笑ものであった。最後は服を脱げといわれたそうな。
しばらくギター中心の展開が続く。しかし、期待していた、ハーモニカプレイはなかった。聴いてみたかったんだけどなあ。それでも、卓治は、いろいろなギターを取り替えつつ、激しいかき鳴らしあり、つま弾くように弾くものありと、いろいろ楽しめるのも事実。
「ロンドンの街角で、俺は恋に落ちた。(観客のはやし立てあり)俺は、そこで暮らしていたフラットに彼女を連れて帰った。日本に帰るときが来て、分かれるのが辛くて、一緒につれてきた。…俺の恋人を呼んである。ジェニファー!」
そうして呼ばれたのは、係に抱かれた、アコギである。
「ロンドンには、ギターを持っていかなかったんだ。だから当地で買ったんだけど、とても安かった。ギターケースの方が高かったくらいで。でも、俺が弾くと、ギブソンの音になる…」
「いやあ、ここで『そんなことねえだろ』ってつっこんでくれなくちゃ、ライヴじゃないなあ。じゃ、もう一度行く。俺が弾くと、○○の音になる」などと会場の反応も楽しんでいる様子。
「いやあ、これで、会場とひとつになれた。じゃあ、もう一度。俺が弾くとマーシャルの音になる」
「そんなことねえだろ」(by観客)
「マーシャルには、アコギはないぜ。バーカ」
というように、かなりリラックスした印象。
再び、ロンドンで作った新曲をやって、ラストに突入。
「ロンドンからクルマで1時間くらい走ると、田園地帯が広がる。俺はある日そこで、地平線の向こうに、光が射してくるのが見えた。それがまるで俺には、鍵盤のように見えたんだ。俺はそれを弾いてみた」
楽器こそ、エレアコであるが、これがタイトルにもなった、「光のオルガン」という曲ではないだろうか。余韻を残して、ステージを去る卓治。
会場のファンは、早速のアンコール及び卓治コールである。それに促されるようにして、卓治登場。上着を脱いでいる。中央に立つと、観客の投げたクリスマス・プレゼントであろうか、サンタの人形が卓治の額にぶつかる。
「あぶねえじゃないか(笑)。俺からのささやかなクリスマス・プレゼントを受け取ってくれ。スマイリー松本!」
ここで呼ばれたスマイリー、会場入りする前に卓治に電話で呼び出されたらしい。こんな日によく来るなとは、皮肉のようだが、長年の友情を感じる。スマイリーも、練習してないので、「これはできるかな」という卓治の挑発に挑戦するように、バリバリと吹きまくる。
ここでは、2曲やって二人とも退場。
またまた嵐のような卓治コール。三度登場した卓治は、「Passing Bell」を。ほとんどサビの部分は、会場のファンが歌いきってしまう。そこだけは、卓治もマイクから顔を遠ざけて、会場の声に任せきっている。それにしても、昔の歌をほとんどのファンが歌えるのには、びっくりした。レコードをすり減るほど聴いたのだろうし、自分でギターを弾いてコピーなんかもしているんだろう。
また、退場した卓治であるが、卓治コールは終わらない。いい加減足も疲れてきたのだが、まだ見たくもある。4度登場した卓治は今度は、エレビに向かって、「もうすぐ」をやった。会場のファンも、この曲に乗せて、卓治の再出発を祈るかの様子である。
ショウは終わった。会場の明かりがほの暗くつきはじめる。立錐の余地もない客席スペースは、動かない観客でいっぱいだ。僕とMIENAさんは、満足して帰路に就いたのである。
評価★★★+1/2★
Set List
1.傷だらけの天使 2.パラダイス・アレイ 3.談合坂パーキングエリア 4.吠えろ 5.青空とダイヤモンド 6.PM11:11 7.夏の終わりに 8.家族 9.前夜 10.Yellow Centerline 11.夢の国へ 12.汚れたバスケットシューズ 13.手首 14.長すぎる夜と遠すぎる朝 15.光のオルガン (encore)16.Night Walker 17.ついてねえや 18.Passing Bell(帰郷) 19.もうすぐ 20.いつか河を越えて

以上1998年のログを残しました。大部分は当時そのままですが、セットリストは小山卓治Official Web Site「Red & Black」を参考としました。一部不明な曲がありましたが、これで完全版です。
ご一緒したMIENAさんは、その後ハンドルを変え現在はメアさんです。いちお、男性なんすけど。
その後、小山卓治はここで披露した曲を含むペストアルバム、さらにはようやく重い腰を上げてニューアルバムもリリースしました。貴重な盤らしくなかなか店頭で見かけないために、まだゲットしていませんが。

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