ミヒロリュウ Super Love Live 渋谷屋根裏 1998/10/26


日清パワーステーション「ファイナル」で見かけた彼女が気になっていた。その翌日がニューアルバムの発売だとステージで語っていたが、行きつけのショップには置いていなかった。でも、セカンドアルバム『Gardenia』があり、こちらを手に入れて、ニューアルバムは注文を出した。そして、手に入れたアルバムがはまったのである。
ライヴは「ぴあ」で見つけた。しかし、発売からだいぶたってからである。試しに地元でチケット発券してもらうと、整理番号17。一瞬売れてないんじゃなかろうかと思うが、キャンセルされた分だと思い直す。

そして当日。屋根裏に。18:00の入場とあるが、まだ列さえ出来ていない。ちらほらと座り込んでいるもの数名。18:30頃、並ぶ指示が出されるが、整理番号は関係なかった。前から5人目。地下に続く階段に並ばされた。地上の様子は分からない。18:45やっと入場。自由席とのことだったが、椅子はなく、オールスタンディング。ステージ左のスピーカーから5mほど離れたところが一段高くなっていて、寄りかかれる壁がある。ここに位置を決める。この時点では、50人程度の入り。しかし、続々と客は入ってきているようだ。
19:15電気が落ちて、ひときわ流れている曲が大きくなる。後ろの方を振り返ると、いつの間にかごっそりと入ってきている。立錐の余地もないとはこのことだ。「オー・イエ〜!」という声とともに、バンドが現れる。ミヒロリュウは、ノースリーブのジャンプスーツ姿。前に見たときより髪が短くなっている。あのときはアコースティックライヴであったが、今回はバンドを引き連れての登場。なかなかワイルドな感じである。
バンドのセットは、アルバム『Super Love』の編成とほぼ同じ。右からギターの大島信彦。古典的なギタリストのイメージ通りに、ステージでは時折くわえタバコ。少し下がった位置がドラムの野口薫。ミヒロリュウを挟んで、ベースの山田"アンソニー"サトシ。キーボードの松本圭司。この人は残念ながらここからはよく見えなかった。ミヒロリュウは、ヴォーカルに専念。まずはニューアルバムから「モラトリアム」である。
「凄い、後ろの方埋まってるよ。今までで最高級のライヴ(観客の入りが)、いや一番です」というのが第一声。本人も驚いたらしい。とにかく、2年ぶりのワンマンライヴだそうだ。
そして、茶色のギブソンを抱えて、「イカれてる」「歓びのうた〜Joy To The World」「ひとりで生きてみよう」と立て続けに演奏。それにしても、かなりの音量だ。それに負けじとひときわ声を張り上げて歌う、リュウ。ハスキーな声だが、キイは意外に高い。こうして書いているものの、デビューアルバム『Ryu』をゲットしていないのが残念だ。そこからの曲のタイトルがわからない。
アコギに持ち替えて、「ちょっと前の方に来て、和みの時間にしない」と始まるのが、バラード風の「Julia」。大島もアコギに持ち替え、ドラムの野口もアコギに。「この人ギターもうまいんだよ」と野口を紹介。松山千春やゆずのさわりを真似させる。
ここで2曲やって、元のセットに。このあたりから、ミヒロリュウもテンションが高くなってきた。屋根裏の音場のためか、ミヒロリュウが高音で絶叫すると、鼓膜にびんびんと響く。その部分だけ音が割れてしまうのだ。バックの演奏の音もかなりでかいが、こちらはきっちりと聞こえるのに。だが、この割れた絶叫が脳に心地よいのである。こんな体験ははじめてである。自分の周囲の奴はそんなことないのだろうか。
ミヒロのギブソンは、2種類あるのだろうか。今度のは、緑に光っている。もしかすると、光の角度で色が変わるものかもしれないが。客層は女性6男性4くらいである。年齢層は10代と20代が圧倒的である。しかし、その中に混じりスーツ姿の会社帰りらしき者や、30代、また、どう見ても40代という人もいた。万人に愛されるキャラクターとでもいえるのか。
この人たちは、どこで彼女の存在を知ったのであろう。列に並んでいるときに、当日券を買い求めようとしている人3人組に話しかけられた。「ミヒロリュウさんって、どういう人なんですか」答えには詰まってしまうが、もしかすると、彼女がFM番組のパーソナリティーをしているところから、来ている人たちかもしれない。
会場で後ろにいた若い男性も、最初はおとなしかった。たぶん自分と同じく、あまり見たことのない人だったのかもしれない。それが、進行するに連れて、曲の合間に、声援を送っているほどなのだ。多少オーバーアクションではあったものの。
「Bad Morning Blue(s)」に続き、3日前に出来た曲だという、「赤い花」を演奏。これが最新のシングルとなるかもしれない。もうすぐシングルが出るはずだ。本人は、なかなか曲が書けずに焦っていたみたいだ。何しろ、芋煮会に出かけていたというエピソードまで披露。ここで一度退場。会場中に満面の笑みを浮かべる。そして、両手をあげて反応。
アンコールはすぐに始まった。これでは一息つく間もないだろう。松本のエレビをバックに、「Born To Love U」を。しかし、少し歌詞が変えてあり、「歌を愛するために生まれてきた」という意味のフレーズである。絶叫するミヒロリュウもいいが、やはり真骨頂は、アコースティックな持ち味であると自分は感じる。こうしたバラードが実によく似合う。
残りのメンバーも登場。ここでメンバー紹介。「早いようですけど、もう終わりになりました…」どよめく会場。「いやあ、『もう終わり』って、言ってもらって、凄く嬉しいです」再び、緑に輝くギブソンを手にして、「飛びたい」である。最後は、バンドのメンバーと「一度やってみたかった」手を繋ぎあって、挨拶。終了は、20:40。
評価★★+1/2★

ミヒロリュウは、高校2年でデビュー。現役高校生のまま、アルバムを2枚出した後、活動をしなくなっていたらしい。しかし、その間「真剣に音楽に取り組みたい」とのことで、バンドを組んで本名の小柳裕美名義で、ライヴを重ねていたそうだ。そして、今年復活。今まで、高橋研のサポートを受けて、自作曲も少なかった。だが、この日のパフォーマンスは、自分たちだけでもできるという感触をつかんだような気がするのだ。もちろん、提供された曲を歌いこなすヴォーカリストとしての力と、ギター弾きとしての力量もこれからどんどん伸びていくだろう。それに加えて、これからは自作曲の比率がどんどん高まっていくと思う。
本人も「私のこと、はじめての人」などと聞いていたくらいで、客の入りや、その反応にかなりびっくりしていたようである。そんなライヴ終わってから実は難聴気味になってしまった(翌日の昼には直ったが)。でも、この日のステージが、今後のミヒロリュウにとって「一皮むける」ターニング・ポイントとなるかもしれない。何かをつかんだ夜だったかも。
そうだとしたら、その場に立ち会えてよかったと言えるようにしたい。今後の彼女は「買い」ですよ。

以上、1998年のログをほぼそのまま残しました。結局、彼女はブレイクすることなく、実質的にミヒロリュウ名義のアルバムは『Super Love』がラストとなってしまうことになった。噂を聞かないなと思っていたら、なんと、SOLTというバンドでSKIN名義でヴォーカルを担当していた。こちらの方は、ほとんどメジャーシーンには、出てくることはないのだが、それでも好きなことをやっているのならば、いいのではなかろうか。とにかく、このライヴの時のモチベーションは維持してくれていることになる。
ちなみに、ディーヴァ系シンガー、小柳ゆきは、彼女の実の妹である。

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