この日のライヴは、年越しイベントである。チケットには、9組以上、会場のボードには、およそ12組の名前がありました。「ぴあ」で確認したところ、この日の終了は、翌日(つまり年が明けて)の午前1:30頃だとか。セット替えとか、途中の抽選会などを考慮すると、1アーティストの持ち時間は、30分くらいなのではと推測。
オープニングアクトが終わり、この日のイベント進行役で、出演者でもある、JEHOと酒井ミキオが登場。出演者を順に読み上げる。
「…いわぶちかつひこ、小山卓治…」この瞬間に会場にいたディープな卓治ファンから、「卓治ィ!」とコールがかかる。卓治は予想外に早い出演で、オープニングを含めて4番目である。
いわぶちのセットが片づけられた。何もなくなったステージに、ギターが1台だけ置かれる。
早くも、野太い声の卓治コール。会場は、最近人気のナガハダゼンジや、酒井ミキオあたりの若い女性ファンが多かったのだが、ここにきて、雰囲気が一変する。女性ファンらは、身を固くして声のする方を見守っていた。
そして、小山卓治登場。今回は、サポートプレイヤーがいない。ひとりでの弾き語りである。いきなり「紫の夜明け」。弾き語りと形容するには、あまりにも激しいギターのかき鳴らし方。これまでの出演者と違うアコースティックにしては異様に熱のこもった演奏である。心なしか少しざわついていた会場もしんと静まり返る。最後で1弦が切れた。
曲の合間にギターチェンジ。「今晩は、小山卓治です。短い時間ですけど、最後まで楽しんでいって下さい」をを、この前と同じ挨拶だ。またしても沸き上がる卓治コール。
2曲目、このイントロは、「NY NY」ではないか。まさかこの曲が聴けるとは、アルバム『NG!』のオープニングを飾る名曲だ。今ではジョンの惨劇による人々の嘆きも、かなり薄れてきてはいるが、そうしたジョンの魂を受け継いできた者たちが、17年たったこの時でも、レクイエムを歌い続ける。それを聴いている僕は、卓治がダコタ・ハウスへ連れていってくれるような感に。早くも、卓治の世界へどっぷりと浸かる。
3曲目、最初のギターに持ち替える。熱くなった卓治ファンが、「卓治ィ、大阪でもライヴやってくれぇ。今日はわざわざ、大阪から見にきたんやで!」と叫ぶ。この日の卓治は挨拶以外は、一切MCなし。なんだか少し怒っているみたいだ。楽屋でも、他の出演者と会話などあるのだろうか。出演者最高齢でもあるし。最後の曲は、「前夜」であった。大晦日、田舎にも帰らずにこんなところにいる卓治、ましてや、こんなところで遊び呆けているファンたちに向かってのメッセージなんだろか。
曲が終わり、ギターを外すと、卓治は「じゃ、また」くらい言ったようだが、ほとんど表情を変えずに去っていったのである。
「えっ?これだけ?」う〜ん、長い曲ばかりだったからなあ。それにしても、その後トイレで漏れ聞こえた、ディープなファンの会話が気になった。「今度いつやるんやろ」
その後、卓治はロンドンに渡る。
評価 ★★★1/2ひとりながら、迫力あったです。
以上、1997年の大晦日のライヴです。このときよく覚えているんだけど、深夜に及ぶからと、わざわざクルマで出かけて、区役所の地下に止めたんだよなあ。でも、よく考えれば、大晦日から元旦にかけてのことだから、電車とか動いているんだよね。ともかく、イヴェントというのは、やたらと待ち時間がかかるということ。また、当時としては、そこそこ人気がでそうな連中が出演ということだったものの、座席が用意されていて、助かったな。今では考えられないことだな。
で、出演者、覚えているだけでも、酒井ミツオ、JEHO、ナガハタゼンジなんてところがいましたが、いつの間にか消えてますね。小山卓治の方がしっかりしぶとく生き残ってる。ピュアでまっすぐな方が最終的には受け入れられるということだろうか。