小山卓治ネオユニット 日清Power Station 1997/10/07

突然気になりだしたのが、小山卓治。卓治は裏の佐野元春だとある人は言う。

この日は、ジョイントで、卓治の出番は2番目。
前のステージの片づけがあって、30分くらい休憩。この間耳鳴りがしました(註…前のバンドがうるさかったためである。)。ギターが、4〜5つくらい並べられ、ドラムセットは片づけられた。そのかわりに、ボンゴやコンガなどのパーカッションのセットが。また、片隅には、ブルースハープもある。この日のクレジットは、小山卓治ネオユニット。つまりは、小山卓治のソロではなく、ある程度のバンド形式なのだろう。とはいえ、この頃行っていた、バンド形式ではなく、ドラムが入らず、後記のメンバーとなる。
そして、ステージが暗くなって、メンバー登場。3人が所定の位置について、最後に中央に立つ男は、ギターを抱えるとパーカッションの方を向いてリズムを合わせていたが、最初のフレーズを弾いたとたんにステージが明るくなってスポットが男を照らし出した。をを、これが筆者の卓治との最初の出会いである。

1曲目が終わり、卓治が呟く。「今晩は。小山卓治です。今夜は短い時間ですけど、楽しんでいって下さい」無精ひげにチャコール色のジャケット。見た目は、さえない感じだ。もっと鋭いものがあるのかと想像していたが、それは目つきのみ。意外にも低姿勢か。
2曲目、ハーモニカホルダーをセット。ネオユニットのメンバーは、こちらから右手に、ギターの島山信和(『ROCKS!』にも参加)。左手にベースのスティング宮本。卓治と宮本の間にパーカッションの丹菊正和。
続けて3曲目、宮本がアップライトベースを持ち込む。この曲は聴いたことがある。それに歌っているときの卓治は、何度かこちらの方を見たような気もする。いちいちメモを取っているからだろうか

MCが入って4曲目の紹介。「次の歌は、女から男へのメッセージなんだけど、実体験に基づいているんだ。その子が惚れた男ってのは、こんなやつなんだけど(と自分を指差す)…見た目若いんだけど、トシ食ってて」曲調とかで判断すると、近寄りがたいイメージがあるのだが、何とも親しみやすいキャラクターのようである。

5曲目、最前列に子供連れのファンがいるのを見つけ、「俺の歌はお子様には向かないよ。教育上よろしくないかもよ」とのトーク。

卓治ファンは熱い。それもディープそうな人たちばかりである。最前列にいた子連れの人たちも、そのようなタイプで、あちこちから、野太い声の「卓治〜!」、黄色い声の「卓治ィ〜!」というコールが起きる。

卓治は、アコギ一本で勝負しているようにも見えた。最後の方では、弦を切ってしまう。ついにラストになったが、そのギターを交換しないで、「傷だらけの天使」に突入。サビの「Get away!」の部分では、前の方に陣取っていた、卓治歴の長そうなグループも、頭髪の後退した小太りのオヤジも、こぶしを振り上げてシャウトしていました。さすがに、立ち上がるやつはいなかったけれども、この曲ではまたしても弦を切って、なりふり構わずという感じでした。

小山卓治、やはりニフティの方で紹介されました。佐野元春のフォロワーかと勝手に誤解していて、聴き比べるところから入っていきましたが、ディープな世界の中にも、あるところでは突き抜けたような明るさも見せつけてくれる。
そんな世界に魅せられて、ついに「廃盤」という障害も乗り越えて、全アルバム制覇しました。

今では、ロンドン在住になってしまったようです。でも、そのうちまた新しいアルバムを出してくれるでしょう。

評価★★★


以上、1997年のログを残しました。このあと、数回の彼のライヴを見たのですが、姿勢は変わらない。ロンドン在住、日本復帰、インディーズでほとんど活動がなくなる、などの紆余曲折を経て、インディーズ名義ではあるが、マキシシングルとベストアルバムをリリース。取り上げる主題が、弱者への救済のようなものもあり、メジャーとは契約できないような状態のようですが、頑張っていただきたいひとりであります。
とはいえ、日本のメジャーという構造、なんとかならないものでしょうかね。小山のようなキャリアのあるアーティストが、アルバムはおろか、シングルさえリリースできないというこの状況。まあ、インディーズであることには、彼が望んでいることかも知れない。もしかしたら、リリースしてもいいという、会社もあるのかも知れないが、小山が望むような表現の仕方をここではできないのかも知れない。
とはいえ、アルバムリリースで、かつては、10万枚売れればよいという日本のRockではあるのだが、そうもいってられないようなことになってきたのか。レコード会社も生き残りに厳しい状況なんだろうけど。
しかし、ちょっと売れ行きが悪いと、光るものを持っていても、平然と消されてしまうようなこの総平均化。ちょっとは破ってみたいという、太っ腹の会社はないものでしょうか。


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