A Long Vacation/大滝詠一

A Long Vacation

01 君は天然色(松本隆/大瀧詠一/多羅尾伴内)
02 Velvet Motel(松本隆/大瀧詠一/多羅尾伴内)
03 カナリア諸島にて(松本隆/大瀧詠一/多羅尾伴内)
04 Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語(大瀧詠一/大瀧詠一/多羅尾伴内)
05 我が心のピンボール(松本隆/大瀧詠一/多羅尾伴内)
06 雨のウェンズデイ(松本隆/大瀧詠一/多羅尾伴内)
07 スピーチ・バルーン(松本隆/大瀧詠一/多羅尾伴内)
08 恋するカレン(松本隆/大瀧詠一/多羅尾伴内)
09 FUNX4(松本隆/大瀧詠一/多羅尾伴内)
10 さらばシベリア鉄道(松本隆/大瀧詠一/多羅尾伴内)
<Instrumental>
11 君は天然色
12 Velvet Motel
13 カナリア諸島にて
14 Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語
15 我が心のピンボール
16 雨のウェンズデイ
17 スピーチ・バルーン
18 恋するカレン
19 FUNX4

35DH1SRCL5000
1981/03/21発売
Produce:/大滝詠一

大瀧詠一という人、97年に「幸せな結末」で自己最高のシングルチャート2位を記録したのですが、ご存じでしょうか。かつて伝説の「はっぴいえんど」に所属しその後、ソロアーティストとなったのですが、趣味的な音楽を造り、商業レーベルからはほとんど相手にされなかった人です。
はっぴいえんどには、現在作詞家の松本隆(ドラム)、著名なギタリスト鈴木茂(もちろんギター)、そして最近では森高千里とも競演してしまう細野晴臣(ベース)が所属していて、そのコンセプトが日本語をいかにロックにのせていくかという一種の葛藤でもありました。その活動期間はとても短いものでしたが、解散後はそれぞれ独自の方向に向かっていきます。
大滝は自分の名前からとった「ナイアガラ」レーベルを興し、Sugar Babeなどをプロデュースしますが、まったく売れず、一時は福生にある自宅兼スタジオに引きこもったような生活をしていたようです。その間の食いつなぎがCMの仕事。シャンプーやサイダーのCMソングはどこかで聴いたこともある人も多いのではないでしょうか。その間にも、ソロアルバムや、ナイアガラトライアングルのコンピレーション、プロデュースやアレンジ、曲提供といろいろやっていたようですが、あまり陽の目を見ることはなかったようです。私事ですが、「ナイアガラ音頭」を初めてラジオで聴いたときは、なんだこりゃと思ったほどですから。
そして月日は流れて、81年、この作品の発表となります。この時期、ウォークマンの発売とともに、大学生などのモラトリアム人間にとって、これはバイブルのように流行りました。確か、大滝さんのラジオなんかもあったはずです。作詞は、盟友の松本隆。作曲のクレジットが「大瀧」となっているのは、ライターとしての自分と、シンガーあるいはアーティストとしての自分を明確に分けるためだったと思います。編曲のクレジットは、変名で大滝さん自身。もちろん、片岡知恵蔵のあれから来ているわけです。とはいえその後、関係者からクレームが入り、使えなくなったそうですが、それは松田聖子の「風立ちぬ」が1位になってからといいます。
このアルバムの凄いところは、その後CD時代になり、世界に先駆けてのシリアルナンバー「1」をソニーからもらったことです。また、2001年になり、リマスター盤の『A Long Vacation』も発売された。こちらには、トラック11〜19までのオリジナルカラオケトラックも追加されている(2001-12-23追記)。

曲解説

君は天然色
いきなりの音の壁。このアルバムのクレジットをみると、尋常じゃないミュージシャンの数です。普通に録音していくと、一人で十分なパートも、ユニゾンで何人も使ってしまう。それが音の厚みを作っていき、フィル・スペクター風の"Wall Of Sound"を形成します。なお、この元楽曲は、はじめ須藤薫に提供される予定でしたが、内容が男性向きなので、自分で歌うことにしたそうです。アルバムからの最初のシングル。
Velvet Motel
「♪壁に傾いてる風景画みたい」という箇所は、前半を女性が、後半が白眉で、「ふ」を大滝さん、「う」を女性、「け」を大滝さん、「い」を女性、「が」を大滝さんというように、交互にやっていく。それまでの音楽シーンではあまり考えられなかったような実験的なことを取り組んでいます。この女性のパートも、よくわからないのですが、クレジットによれば、ラジということになるか。大滝さんのヨーデル風の声もいい。
カナリア諸島にて
これまたリゾート・ミュージックとしては、絶品。カナリア諸島がどこにあるか地図で調べた人も多いのではないでしょうか(筆者は地理学を学んでいたので、知っていましたが)。典型的な松本隆の作風だと思います。
Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語
アメリカンポップスに影響を受けた大滝さんが表の顔であるとすれば、もうひとつの顔は、ハナ肇とクレージー・キャッツ、特にアレンジの萩原哲晶氏の効果音などに影響を受けたものです。ここでは、アメリカンフレーバーを漂わせつつ、実験的な効果音などもふんだんに盛り込んでいるという、いわば両者の融合が感じられます。そうしたところはやはり松本の詞では、無理があったのでしょう。
我が心のピンボール
大滝流の50〜60年代初頭(ビートルズ登場前期)の洋楽へのオマージュなのではないでしょうか。
雨のウェンズデイ
これまたシングルカット。メロディメーカー大瀧詠一の本領発揮とはこれなのではないでしょうか。これ、筆者はカラオケの十八番のひとつでもあります。久方ぶりに歌ってみましたが、もう身体が覚えていました。
スピーチ・バルーン
後日、大滝さんはNHK−FMで番組を担当することになりますが、そのタイトルが「スピーチ・バルーン」でした。国営放送では、いったいどんなことをやっていたのでしょうか。それ以前のAMでの「Go! Go! Niagara」という番組では、フィル・スペクターあたりの洋楽と、クレージー・キャッツなどの音源に加え、多彩なゲストを呼んでのトークなどが面白かったのですが。
恋するカレン
これもシングルカット。どうということのないラヴソングですが、大滝さんにかかると、なぜか失恋話になることが多いようです。まあ、その方が受けがいいってこともあるんでしょうが。LP時代のB面としては、ラヴソング3連発となります。間奏が一人多重コーラスと、カスタネットの響き渡るなかなか気持ちいいものです。
FUNX4
大滝流の遊びがふんだんに盛り込まれています。「散歩しない」という女性の声、クレジットがなくライナーには、「誰でしょう」という挑戦的なものが。松田聖子ではないかとか、いろいろと推測を呼んだものです。後半の月に吠える男は、五十嵐浩晃だといわれています。なお、五十嵐浩晃は、ナイアガラトライアングルVol.2の時、企画段階では杉真理に代わり名前が挙がっていたそうです。ラストでは、スタジオのミュージシャンを集めての拍手と「アンコール」の声。
さらばシベリア鉄道
これもシングルカットされました。それ以前に太田裕美に曲提供が行われていたものの、収録自体はこちらが先。そのほかに小林旭などが、カバーしてます。

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