01 Baby You(ケーシー・ランキン/芳野藤丸/SHOGUN)
02 俺たちは天使じゃない(並河祥太/ミッチー長岡/SHOGUN)
03 Puzzle(来生えつこ/大谷和夫/SHOGUN)
04 My Only Love(丸山圭子/芳野藤丸/SHOGUN)
05 Starting All Over Again(ケーシー・ランキン/芳野藤丸/SHOGUN)
06 Summer Rain(エリック・ゼイ/エリック・ゼイ/SHOGUN)
07 Here Come Leroy(ケーシー・ランキン/ケーシー・ランキン/SHOGUN)
08 Why Don't You(ケーシー・ランキン/ケーシー・ランキン/SHOGUN)
09 Rainy Day Lady(ケーシー・ランキン/芳野藤丸・岡沢茂/SHOGUN)
10 Shame On You(ケーシー・ランキン/芳野藤丸/SHOGUN)
11 La La La…(井辺清/ミッチー長岡/SHOGUN)
12 Party Line(ケーシー・ランキン/ケーシー・ランキン/SHOGUN)
13 風の時間(来生えつこ/大谷和夫/SHOGUN)
SRCL-4167
1997/12/12発売
Produce:井辺清
97年の末、懐かしのバンドがひっそりと復活した。その名をSHOGUN。ただしオリジナルメンバーではなく、多少入れ替えがあった。オリジナルのSHOGUNは、スタジオミュージシャン達が結成したバンドであるが、芳野藤丸のOne Line Bandを発展させたものである。ファーストアルバムは、79年、ドラマ「俺たちは天使だ」のオリジナルサウンドトラックとして起用され、かなり本腰の入った活動をしていた。
当時のメンバーは、芳野藤丸(G/Vo)、大谷和夫(P/Key)、ミッチー長岡(B/Vo)、山木秀夫(D)、中島御(Per)。*ミッチー長岡は、長岡道夫名義でもよく登場する。ケーシー・ランキン(G/Vo)は、セカンドアルバムから正式に加入した。このメンバーで3枚のアルバムを残しているが、程なく芳野藤丸の大麻不法所持でバンドは終焉を迎える。しかし、このメンバーは当時の日本のポップス・ロック界はいうまでもなく、歌謡曲などの分野にもスタジオミュージシャンとして進出していたほどである。それが本気を出したらということで、フュージョンブームにものって、かなりの旋風を巻き起こしたものであった。
それが17年振りのカムバック。実はその頃から松田優作の映像を使った缶コーヒーのCMが流れはじめていた。もちろん曲はSHOGUNである。この「Bad City」の音源はなんと、新録音のものだったらしい。そのようなこともあってか復活プロジェクトは秘かに進行していたようである。
今度のメンバーは、芳野藤丸(G/Vo)、ケーシー・ランキン(G/Vo)、大谷和夫(P/Key)、ミッチー長岡(B/Vo)、エリック・ゼイ(D/AG/Vo)。エリック・ゼイは、アメリカンスクールからバークレイ音楽大学卒業という経歴で、ひとりジェネレーションを越えた存在ではあるが十分な経験を積んでいるようである…実は、ケーシー・ランキンの息子である(2001-12-23追記)。抜けた山木秀夫だが、まだまだバリバリ第一線で活動していることは周知の事実(山崎まさよしなどの作品に登場している)。中島御については、あまり消息を聞かないのが残念なことであるが。とはいえこの二人には、ラストのクレジットで"Special Thanks"の但し書きがある。
このメンバーで98年にはライヴも行われたようである。残念ながらその空間を共有できなかったのであるが…。(結局、ケーシー・ランキンの突然の脱退で、ライヴは中止になったそうだ。その後に出たシングル「チャラ」という吉野家イメージソングがあるが、すべてをチャラにしようというダブルミーニングではなかったか…。99/11/21追記)
曲解説
- Baby You
- 芳野の哀愁を帯びた声とランキンのソウルフルな声で迫るツインヴォーカル。オープニングからまさにSHOGUNしている。もうまったく変わっていないということがかえって嬉しくなってしまう。CMを見て、昔のものが使われていると錯覚するのも頷ける。途中のラップは、ランキン。
- 俺たちは天使じゃない
- もうこのタイトルからして嬉しくなってしまう。もちろん昔のドラマに対するオマージュなのであるが。SHOGUNとしても、久しぶりの日本語のシングルとなった。ヴォーカルは芳野藤丸。実はこの曲がカラオケに入らないかと秘かに思っているのだが。それほどかっこいい。
- Puzzle
- SHOGUNともなると昔はほとんどの曲を英語で歌っていた。もちろん日本語の歌でもかなりの英語のフレーズが入るのは当然なのだが、ここではサニーデイ・サービスや古内東子などが自分の言葉で歌う(つまり日本語オンリーだが、無理のないノリ)影響もあってか、作詞の来生えつこは日本語オンリーの作詞をしている。芳野のヴォーカルも、経験を経てか、気持ちよくはまっている。なお作曲の大谷だが、火曜サスペンス劇場などの劇中歌などを担当しているそうだ。
- My Only Love
- 作詞丸山圭子とは。そう、あの「どうぞこのまま」の丸山圭子である。旦那がやはりアレンジャー・スタジオミュージシャンの佐藤準なので、そのあたりの関係からの発注か。その丸山圭子も一時期ライヴに復活したという話を聞いたのだが。芳野のヴォーカルもさすが。しかし、本人の作詞はないのが残念。根っからの洋楽指向なのだろうか。途中のギターソロも「泣き」が入っていて、これも芳野藤丸か。
- Starting All Over Again
- 芳野のリードヴォーカルに、メンバーのバックコーラスが加わる。こうしたアメリカンな感じもSHOGUNの気持ちよさのひとつ。ケーシーと芳野のタッグマッチとなったこの曲、タイトル通りにこれからのSHOGUNを自分たちながら再出発しようという態度の現れだったのだろう。
- Summer Rain
- メンバー最年少、しかもあまり馴染みのないエリック・ゼイであるが、こうして聴いてみると、SHOGUNとして何の違和感もないことがわかる。もちろんリードヴォーカルもエリック本人。バークレイ卒は、伊達じゃない。詞もすべて英語である。
- Here Come Leroy
- ケーシーの曲だが、芳野がリードヴォーカル。実はこの曲は次の「Why Don't You」に続いているのだ。
- Why Don't You
- 区切り上は8曲目。しかし、前の曲から続いている。こちらのパートは、ケーシーがリードヴォーカル。こちらの後半部の方がどちらかというとかっこいい。バックに「よしのあやか」という女性をコーラスでフューチャーしているが、名字からしてこの人は、芳野藤丸の関係者なのではなかろうか(*芳野藤丸は、女優の石田えりと離婚している))。クレジットでは、スーパー・コーラスとなっている。この曲も缶コーヒーのCMで使われた。
- Rainy Day Lady
- 芳野のヴォーカルがぴったりとハマっている、スローバラード。合間のギターソロもラリー・カールトンもしくはスティーヴ・ルカサー風で、80年代受けするギターであるといっておこう。当時を知っている人ならば、間違いなく好きになると思う。
- Shame On You
- この曲も、ケーシーと芳野の合作。いわばSHOGUNの標準的王道路線か。こちらはミディアムテンポのややディスコ調。それにしてもSHOGUNは奥が深い。どんなタイプの曲もこなしてしまうのだから。それでいてやはりSHOGUNそのものの持ち味を失っていないのが凄い。
- La La La…
- 長岡のリードヴォーカル。もともとスタジオミュージシャン上がりで、それほど上手いヴォーカルではないのだが、過去のアルバムでも、1曲くらいは長岡が歌っているものがあった。セカンドアルバム『Rotation』では、「The Tourist」という、海外で訳のわからない目に遭う日本人の心情を素朴な英語で歌っていて、それがまたよかったのだが。ただ、この17年間にヴォーカルがかなり上手くなったような印象が強い。作詞は、レコード会社のアートディレクター。
- Party Line
- ブラスをフィーチャーし、スピード感を持たせたケーシーのリードヴォーカル。途中に、鍵盤ハーモニカ(ピアニカともいう)のソロがあり、印象的である。SHOGUNとブラスセクションがこれまた合っている。ワスプ風でありながらも、ホンキイ・トンクな味が何ともいえない。
- 風の時間
- ラストを占めるのは、大谷のピアノがメインの曲。リードヴォーカルはもちろん、芳野藤丸で何ともアダルトチックな路線である。やはりSHOGUNの奥の深さを感じる。まあ、キャリア20年以上(中には30年近くも)やっているのだから、当たり前なのだが。