Joy Ride/山弦

Joy Ride

01 Song For James(山弦/山弦)
02 Joy Ride(山弦/山弦)
03 祇園の恋<Gion>(山弦/山弦)
04 Rodeo King(山弦/山弦)
05 春<Spring>(山弦/山弦)
06 そりは行く<Sled>(山弦/山弦)
07 Monday's Candy(山弦/山弦)
08 El Loco(山弦/山弦)
09 Harvest(山弦/山弦)

POCH-1718
1998/08/15発売
Produce:山弦

山弦とは、小倉博和と佐橋佳幸によるギターデュオ。二人の経歴を語ると長くなるが、これは避けて通れないものである。小倉博和はバンド、アイリーン・フォーリーンにギタリストとして参加する一方、スタジオワークなどを手がけここで桑田圭祐と出会い、映画「稲村ジェーン」のギタリストとして参加することになる。その後、原由子のアルバム『Mother』に参加し、佐橋と出会うことになる。佐橋佳幸はバンドUGUISSに参加の後、スタジオミュージシャンや様々なアーティストのバックを努める。彼の人脈は豊富であり、高校時代の先輩などにはepo、清水信之などがある。後輩には渡辺美里が。原由子のところで出会いがあった後、山弦はヴォーカルを持たないユニットとしてスタジオワークを続けていったが、実際にデビューを飾るのは女性ヴォーカルの平松八千代をフィーチャーしたSOY(佐橋、小倉、八千代の頭文字をそのままつけた)が先行する。ここでは、『SOY』、『SOY2』というアルバムを2枚残したものの、実は山弦としての活動も平行して行われていた。
山弦は、ステージの立ち位置と同じく、左のトラックに小倉のパート、右のトラックに佐橋のパートが収録され、使用する楽器もアコースティックギターのみならず、エレクトリックギターはもちろん、民族音楽に使われるものなどもある。また、それぞれに、指弾き、ピックはたまた、スライドなども使い、ひとつの楽器を多用に演奏してしまうのが、彼ら。山下達郎をして、「ギターデュオというと、ゴンチチがあるが、山弦の比にはならない」と言わしめるほど。
山弦というネーミングも弦楽器が山のように並ぶ様を表しているのだという。

曲解説

Song For James
オープニングは、何ともやさしい響きの曲。ところで、Jamesとは、佐橋が敬愛して止まない、ジェームス・テイラーのことである。これは、アルバムジャケットに写真入りで記載がある。この曲は、小倉と佐橋のみというシンプルな演奏。とはいえ、主旋律は佐橋と小倉の掛け合い風。どちらかというと、佐橋を小倉が追いかけるような形である。サビに来ると、小倉のリードの一方、佐橋がリズムに徹するかと思いきや、追いかけるようにしてアンサンブルを刻んでいくという複雑なものである。このアルバムには、小倉と佐橋の使用楽器名が書かれている。ここで紹介する、曲ごとの彼らのクレジットがそれである。また、アルバムジャケットにも、いろいろなギターの写真があり、それぞれ愛称のついているものもある。テイラーというものも、いくつかの曲で使われている。小倉:K.Yairi 100RF-G/佐橋:Gibson J-50。
Joy Ride
アルバムタイトル曲。一転、ベースとキーボード、パーカッションを入れた演奏。途端ににぎやかになるが、あくまでもメインなのは、小倉のリードと佐橋のリズムのフォロー。しかし、佐橋は決してリズムに徹しているわけでもなく、小倉のリードに合わせて、さりげないフレーズを入れたりしている。かくして、山弦はどちらが主とも従ともいえないような関係なのである。ちなみに、ベースは演奏仲間である、有賀啓夫。パーカッションは大石真理恵。リズムに乗った、ややアップテンポな曲である。小倉:Ovation Elite/佐橋:Gibson J-50。
祇園の恋<Gion>
こちらもバンドの音が被ってはいるが、ゆったりとした曲。コンピュータプログラミングでドラム音が常に一定のリズムを刻んでいる。そんな中で、山弦が繰り広げるのは、まさに、京都の祇園をイメージしたもののようである。ギターとは別に、佐橋佳幸がオートハープという楽器を演奏している。小倉:K.Yairi 100RF-G/佐橋:TAILOR。
Rodeo King
こちらも、プログラミングによるドラム音がかなり目立つ。また、ブラスセクションが入っていて、佐橋とは盟友のような状態の山本拓夫もサックスで参加。また、小倉も補助的にEpiphone Emperorというエレクトリック・ギターを演奏しているが、常に流れているのは、小倉と佐橋のアコースティックである。小倉:Ovation/佐橋:Gibson J-50。
春<Spring>
山弦の特徴として、なじみはないはずなのに、どこかで聴いたことのあるメロディーというものがある。というのは、何も不思議なことではなく、その音がテレビ番組などでかなり頻繁に使用されているからでもある。もちろん、この曲はそれの代表のようなものである。バンドの音は途中から入って来る。が、ほとんど効果音のようなもので、二人の演奏が主体。比較的、硬質感のある演奏だ。中間部に、小倉による、エレクトリック・ギター(Epiphone Emperor)が入っている。キーボードはやはり佐橋の同級生の柴田俊文。小倉:K.Yairi 100RF-G/佐橋:TAILOR。
そりは行く<Sled>
この曲は、SOYのライヴで平松八千代が引っ込んだときに、聴いたことがある。思えば、SOYのデビューコンサートでもあるにもかかわらず、まだ正式にレコードデビューをしていなかった、山弦をこの時から売り込んでいこう、よく言えば真剣にやっていこうという、現れではないだろうか。途中、山弦と柴田俊文、大石真理恵によるハンドクラッピング(手拍子)があり、何ともフラメンコ的な味付けがなされている。二人の使用楽器は「春」と同一だが、こちらはナイロン弦のような柔らかさを聴いて感じた。小倉:K.Yairi 100RF-G/佐橋:TAiLOR。
Monday's Candy
唯一、エレクトリックギターを二人とも使用の曲。とはいえ、小倉と佐橋の二人だけによるシンプルな演奏で、電気的な処理をされながらも、まったく、アコースティックな味付けがなされている。もちろん、この二人のことだから、アコースティックに持ち替えても、演奏は可能であろう。聴いているとわかるが、おそらくは、二人とも、フィンガーピッキングを基本としたものであろう(途中、ピックを使うところもある模様。)。このようにして、彼らは曲の途中で楽器を替えたり、指弾き、ピックと使い分けてもいる。小倉:Epiphone Emperor/佐橋:Fender Stratocaster。
El Loco
大石真理恵のパーカッションのみが入る、演奏だが、テンポは速く、まさに機関車というイメージか。小倉のややスライド気味な演奏もききもの。ラストはかなりブルージーな演奏となる。小倉:Cat's Eye/佐橋:Martin D-28。
Harvest
初めて二人で、同じ楽器を使って演奏された曲。よけいな音が入らず、かなりプライベート的な演奏だ。途中、瞬間的に演奏が止むところがあり、再開する瞬間の二人の息づかいまでが収録されている。この曲のあとに実はシークレットトラックが入っている。こちらは、山弦の2枚目のアルバム『High Life』で、さらにシークレットトラックとして、エレクトリックギターで演奏がなされている。小倉:Yairi gut guitar/佐橋:Yairi gut guitar。

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