Box Pops+Jorney To Your Heart/BOX

Box

Box Pops
01 Temptation Girl(松尾清憲・杉真理/松尾清憲・杉真理/BOX)
02 魅惑の君(松尾清憲・杉真理/松尾清憲・杉真理/BOX)
03 アルタミラの洞窟(松尾清憲・杉真理/松尾清憲・杉真理/BOX)
04 風のBad Girl(松尾清憲・杉真理/松尾清憲・杉真理/BOX)
05 人生はコーンフレーク(松尾清憲・杉真理/松尾清憲・杉真理/BOX)
06 Train To The Heaven(松尾清憲・杉真理/松尾清憲・杉真理/BOX)
07 Crazy Afternoon(松尾清憲・杉真理/松尾清憲・杉真理/BOX)
08 ヒットメーカーの悲劇(松尾清憲・杉真理/松尾清憲・杉真理/BOX)
09 Ordinary Friend(松尾清憲・杉真理/松尾清憲・杉真理/BOX)
10 What Time?(BOX/BOX/BOX)
11 Wendy(松尾清憲・杉真理/松尾清憲・杉真理/BOX)
12 "2010"(松尾清憲・杉真理/松尾清憲・杉真理/BOX)

32DH5039
1988/05/05発売
Produce:杉真理/松尾清憲

Jorney To Your Heart
13 Jorney To Your Heart(杉真理・松尾清憲/杉真理・松尾清憲/BOX)
14 Girl(杉真理・松尾清憲/杉真理・松尾清憲/BOX)
15 My Heaven(杉真理・松尾清憲/杉真理・松尾清憲/BOX)
16 Roxy Queen(杉真理・松尾清憲/杉真理・松尾清憲/BOX)
17 寒い国から来たスパイ(杉真理・松尾清憲/杉真理・松尾清憲/BOX)
18 僕たちいつかお会いしてませんか?(杉真理・松尾清憲/杉真理・松尾清憲/BOX)
19 I beg you please(杉真理・松尾清憲/杉真理・松尾清憲/BOX)
20 二丁拳銃の悲劇(杉真理・松尾清憲/小室和之・杉真理・松尾清憲/BOX)
21 エミリーのいない週末(杉真理・松尾清憲/杉真理・松尾清憲/BOX)
22 夢見るメアリー(杉真理・松尾清憲/杉真理・松尾清憲/BOX)
23 Broadway Showへようこそ(杉真理・松尾清憲/杉真理・松尾清憲/BOX・小泉信彦)
24 君の瞳のRainbow(杉真理・松尾清憲/杉真理・松尾清憲/BOX・京田誠一)

CSCL1111
1990/03/21発売
Produce:BOX/飯尾芳史

BOXとは、期間限定で活動した、杉真理(Vo/G)、松尾清憲(Vo/G/Key)、田上正和(G)、小室和之(B/Vo)の四人である。このメンバーで、ライヴも行われているが、この時には、ドラムに島村英二、キーボードに小泉信彦のサポートメンバーを入れている。そのBOXだが、かなり趣味の音作りをしているといえよう。つまりは、メンバーが大好きな、リバプールサウンドしかもかなりビートルズ寄りの音を奏でているのである。彼らは、期間限定の活動といったが、それぞれ本業があり、杉と松尾は、ソロ、田上はスタジオミュージシャン、小室は自分のバンドということだが、それぞれの出会いは、いずれも杉を通してのものである。BOXは短命に終わったが、この流れは、やはり杉の主催するPiccadilly Circus(これまた、リバプールサウンドでメンバーもまたすごい)などに継承されている。
このアルバムは、『Box Pops』(1988)『Jorney To Your Heart』(1990)というそれぞれ独立したものであるが、長らく廃盤であった。それが、『Niagara Triangle Vol.2』のリリース20周年にあわせて、ソニーが関連アルバムもリマスターして発売した2in1のアルバムである。なお、アルバム自体は、一枚に収まっていて、二枚組ではない。
『Box Pops』では、初期から中期のビートルズサウンド、『Jorney To Your Heart』では、60年代後半から、70年代初頭のフラワームーブメント風のサウンドが展開されている。いくらか解釈を拡大して、ビートルズフォロワーのBad FingerとかELOあたりも、意識しているらしい。リバプールサウンドを根底に持つバンドというと、チューリップなどがあるものの、BOXは、文句なく、商業ベースで最もこれを忠実に再現している日本のバンドといえよう。
BOXの活動期間はごく限定されたものだったが、長いインターバルを置いて、リードヴォーカリストが4人もいるという、Piccadilly Circusにも、発展していったことは、特筆されよう。

参考:杉真理公式ホームページ

楽曲解説

Box Pops

Temptation Girl
イントロのギターの音が泣かせる。もろに、初期のビートルズである。曲調は、松尾清憲のリードヴォーカルだが、高音部を杉真理がハモる。ほとんど、ジョンとポールのノリである。ちなみに、BOXのヴォーカルダビングであるが、リードヴォーカルがそれぞれひとつ、コーラスの人は、ひとつのマイクで収録を同時に行ったらしい。こういうライヴに近いスタイルは、音が被ってしまうが、独特のバイブレーションのようなものが生まれたと、杉真理によるライナーの解説である。筆者は一番のお気に入りである。
魅惑の君
曲調がクラシックのような感じ。リードヴォーカルは、杉真理。途中に入る女性の声は、オードリー・ペップバーンの吹き替えを担当している、池田昌子という人である。ストーリーとしては、どこに出もいるオフィスレディの一日を男性が観察しているという感じなのだが、この彼女なかなか非日常的というか、コピーを取り忘れたりという、だめな部類である。これは、その彼女は、観察している男性にとって、映画「ローマの休日」に登場する、アン王女が大使館を抜け出て、普通の女性アーニャに化けたというところがモチーフか。また、ラストに、「何してた?」「仕事さ」「そう」というフレーズは、映画「ティファニーで朝食を」でオードリーがかわす台詞である。それをここで再現している。
アルタミラの洞窟
リードヴォーカルは、松尾清憲。それにしても、ところどころにちりばめられている、後期のビートルズのフレーバー。松尾清憲は、まるで、レノンのようである。これは、BOXによる、「Strawberry Fields Forever」なのであろうか。地下鉄の落書きをアルタミラの洞窟の壁画にたとえるところが、何ともインテリジェンスなのだろうか。
風のBad Girl
バックコーラスが竹内まりや。もちろん、杉の大学時代の後輩(慶応のリアル・マッコイ)で、そのバンド(Mari & Red Stripes)にも所属していたという、人脈である。ここでは、杉真理のリードヴォーカルながら、松尾清憲も低音部のコーラスをほぼ同時に担当している。杉と松尾は声の質が違うものの、二人揃って、あるいはユニゾンで歌うと、何とも不思議なテイストが出るというか、これは本人たちも認めている。ところで、松尾がレノンなのに対して、杉は、マッカートニーなんだろう。年齢的にも、下であるし。
人生はコーンフレーク
松尾のリードヴォーカルであるが、いささか電気的な処理もしている模様。こちらには、鈴木慶一が参加している。その鈴木慶一は、ジョージ・ハリソンの声を意識したとのことだが。ここでは、遊びでラストに、「何してた」「そう」のフレーズが入るが、相手は猫。鳴き声は、当時杉真理が飼っていたものらしい。ところで、ジョージ・ハリソントリビュートアルバム『Gentle Guitar Dreams』では、BOXとして、「Tax Man」を演奏している。
Train To The Heaven
こちらももろに、ビートルズテイストが溢れている。とはいえ、ほとんどパクリがなく、オリジナルである。杉真理のリードヴォーカル。やはり松尾も被っているのだが、このスタイルだと、どちらがどちらというのがなかなか聴き取りにくいというのも事実。中間部のギターソロが、最も、ビートルズっぽいが、どこのフレーズを拝借することなく、よく再現していると思う。ちなみに、これは、ビートルズのメンバー全員に捧げたものであるらしい。バックで、「愛は勝つ」のKANが参加。
Crazy Afternoon
リードヴォーカルは、杉真理。ゲストヴォーカルで財津和夫が参加。ラスト前のサビの繰り返し部分で登場。彼も、ビートルズフリークで、Tulipからは、Alwaysというバンドが派生している。こちらも、ビートルズテイストが溢れ、後に、Piccadilly Circusに参加する左利きのベーシスト(!)風祭東が所属していた。また、Tulipからは、初代のドラマー、上田雅利がやはり、Piccadilly Circusに参加している。途中の、チェンバロみたいな鍵盤のソロでは、小室和之の娘の声も収録されている。
ヒットメーカーの悲劇
何とも皮肉なナンバー。特に誰を指しているわけではないのだろうが、はじめはロック志向だったライターが、やがてヒット曲を量産するようになって、歌謡曲テイストあるいは、流行りに無理矢理合わせる職業作家となっていく過程を歌い上げている。音的には、あまりビートルズらしくなく、むしろ、バーズのようなサイケデリックサウンド。松尾のリードヴォーカルである。杉は珍しく、ファンキーな味のソロで歌うフレーズを担当している。
Ordinary Friend
杉真理のリードヴォーカル。彼の最も得意とする、メロディラインの曲で、『Niagara Triangle Vol.2』ならば、「ガールフレンド」、『Stargazer』ならば、「風の季節」あたりになる。とはいえ、ここは、BOXなので、松尾のサイケなギターソロがある。
What Time?
ギターソロが、ムーンライダーズの白井良明。 BOXの合宿中にふらりとやってきて、ギターソロのテイクが一発で、OKとなり、そのまま温泉(伊豆)に入りに行ってしまったそうである。ラストは、アウトロなしに終わるが、ここでのシャウトは、伊藤銀次。『Box Pops』の中で、唯一メンバー全員で作ったというクレジットが入る。ライヴでは、この曲に乗って登場するのがふさわしそうである。
Wendy
杉のリードヴォーカルだが、ここでは、バックの弦楽四重奏のアレンジも担当しているらしい。これもなかなかの苦心だった模様。松尾の方は、途中の味のある声を聴かせてくれている。バロック調にアレンジされているが、メロディライン自体は、杉真理の得意な部類だろう。カタカナの女性名というところも、杉の傾向に近い。
"2010"
こちらは、松尾のリードヴォーカルで、たまに杉が透き通った声を聴かせている。それにしても、この二人が絡むと、いくつもの味わいがある。テイスト的には、もろブリティッシュという感じ。公式HPによると、この当時のイギリスのバンドが、ブラック系やソウルっぽいものにいってしまったため、そのアンチテーゼで作ったらしい。

Jorney To Your Heart

Jorney To Your Heart
オープニングは、松尾と杉のツインリードヴォーカル。フレーズの前半が松尾。後半が杉にバトンタッチである。その担当部分で曲調もがらっと変わるものである。今回は、あまりコーラスを利かせた初期ビートルズ風の曲はないのであるが。また、サウンド面からも、シンセサイザー、キーボードの使用率が高くなるのもこのアルバムの特徴。
Girl
リードヴォーカルは、杉真理。サビは、松尾のファルセットっぽい、コーラスも入り、雄大な感じに展開する。時折入る、60年代を彷彿とさせるギターが、田上正和らしくてよい。後半入る、キーボードが、小泉信彦で、ほとんど準メンバー的な扱いをされている。ビートルズではないが、ローリング・ストーンズにおけるイアン・スチュワートのような存在なのだろうか。
My Heaven
松尾清憲のリードヴォーカル。何とも幻想的なムード。サビに展開する部分と、サビからラストにかかる部分が、何とも、初期のビートルズを身をもって体験した世代でないと出せないような味がある。これは、身にしみているということか。コピーしてしまったのではなく、ビートルズの遺伝子を受け継いでいる子供の一人なのかも知れない。
Roxy Queen
松尾清憲のリードヴォーカルに、杉真理が低音部のコーラスで被さる。あまりビートルズテイストではないものの、ノリは、初期のシンプルなビートルズそのもの。アルバムで一番のノリの良さ。それにしても、この二人が絡むと、リヴァプールサウンドがよみがえってしまうのが、何とも、Magicなのである。アウトロでは、前のアルバムの「ヒットメーカーの悲劇」のイントロを借用している。それが何ともかっこいい。
寒い国から来たスパイ
松尾清憲のリードヴォーカル。内容が、何とも、旧時代の超大国の東西対決みたいなのだが、まだ当時は、ソ連が健在でこういったものも、小説や映画などでは、存在価値があったものである。とはいえ、アルバムリリースの年には、ベルリンの壁も崩壊し、やがて超大国同士の諍いもなくなっていくようになるのだが。担当ディレクターには、やりすぎだと評価されたらしいが。
僕たちいつかお会いしてませんか?
杉真理のリードヴォーカル。ワルツである。後半は、けっこう分厚いコーラスとなるのだが、ビートルズの『Sergent Pepper's Hearts Club Band』あたりに通じるのだろうか。はたまた、三拍子となると、変調ではあるが、「I Feel Fine」があるのだが。
I beg you please
松尾清憲のリードヴォーカル。この鼻にかかった声が、何ともぴったり。ビートルズというよりは、かつてのリヴァプールサウンドを彷彿とさせる。このアルバム中では、唯一懐かしい感じがする曲である。こちらを気に入る人も、多いのではないだろうか。
二丁拳銃の悲劇
なじみのない声のヴォーカルだが、おそらく、作曲に一枚かんでいる、小室和之ではないだろうか。もちろん、後半部分からは、杉真理のリードに変わるのだが。ここでは西部劇と来た。こちらも担当ディレクターには、おふざけと取られたらしい。元々、アルバムコンセプト自体が、一種のパロディなのであるが、そのあたりがわからないやつというものも、いるものである。まあ、『Journey To Your Heart』は、遊びの延長みたいなものなので、いくらか散漫な印象があるのは否めないが。
エミリーのいない週末
松尾清憲のリードヴォーカル。メロディラインは、かなり昔のポップスの王道っぽいが、終盤で杉真理も絡み始め、何ともサイケデリックかつ美しいコーラスを聴かせてくれる。このコーラスアレンジはすごい。ソロのアーティストではとてもできないものである。
夢見るメアリー
杉真理のリードヴォーカル。こちらも、杉真理の得意とする、メロディラインで、曲中にはあまりひねりのない、直球勝負である。バックの音が、ほとんどメロウな感じに仕上がっている。
Broadway Showへようこそ
杉真理のリードヴォーカル。こちらも、BOX名義になっているが、杉のソロアルバムに入っていてもおかしくないような感じである。アレンジには、キーボードの小泉信彦が入り、かえってそんな感じを強くさせてくれる。なお、このアルバムは、制作途上で杉自身のソロアルバムのために、いったん中断してしまった経緯があり、その影響も多少あるのかも知れない。とはいえ、見事な仕上がりなのはさすがである。
君の瞳のRainbow
杉真理のリードヴォーカル。最もスローなテンポの曲調。こちらも、杉のソロアルバムとしてもよい感じはする。こちらも、クレジットに、杉のバンドのキーボードィストの京田誠一の名前があるところから、もしかしたらという気を起こしてしまうのだが。もちろん、BOXも全面参加なのだが。「Braodway Showへようこそ」と合わせて、そんな疑問が残ってしまう作品である。

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