Surf & Snow/松任谷由実

Surf & Snow

01 彼から手をひいて(松任谷由実/松任谷由実/松任谷正隆)
02 灼けたアイドル(松任谷由実/松任谷由実/松任谷正隆)
03 人魚になりたい(松任谷由実/松任谷由実/松任谷正隆)
04 まぶしい草野球(松任谷由実/松任谷由実/松任谷正隆)
05 ワゴンに乗って出かけよう(松任谷由実/松任谷由実/松任谷正隆)
06 恋人がサンタクロース(松任谷由実/松任谷由実/松任谷正隆)
07 シーズンオフの心には(松任谷由実/松任谷由実/松任谷正隆)
08 サーフ天国、スキー天国(松任谷由実/松任谷由実/松任谷由実)
09 恋人と来ないで(荒井由実/荒井由実/松任谷正隆)
10 雪だより(松任谷由実/松任谷由実/松任谷正隆)

TOCT-10643
1980/12/01発売
Produce:松任谷正隆

1980年にリリースされた、ユーミンの今や定番ともなったアルバム。オリジナルではちょうど10作目となり、ユーミンの初期から中期に当たるものではなかろうか。当然筆者もその頃には、ユーミンの存在を知っていて、リアルタイムに聴いているはずなのだが、正式な音源としては、つい最近購入した。リリース日が、12月1日となっているが、この頃は、年間2枚のアルバムリリースだったらしく、毎年冬にアルバム発売、冬から夏にかけてコンサートツアーというローテーションではなかったようである。当然、亭主の松任谷正隆がプロデューサーである。筆者としては、この頃よりも、映画「わたしをスキーに連れてって」で使われたという印象の方が強い。それにしても、20年を経過しても、色褪せない名作。ファンにとっては、この冬のプレゼントが嬉しいものとなっていたのであろう。また、結局、このアルバムは、『Surf & Snow』と謳っているものの、冬をモチーフにしたコンセプトアルバムかも知れない。アルバム内には、夏を意識したタイトル曲もあるのだが、リリースされたのが冬であるということもあり、夏の曲も、どちらかというと、夏の終わりからその後を歌っているような感じであるから。また、当時の状況からか、アルバムからはシングルカットがない。ユーミンといえども、この当時のシングルはほとんど売れなかったからか。ところで、アルバムの正式タイトルは、『Surf & Snow Volume One』なのである。しかし、20年が経過しても、その後がリリースされることはないのだが、何となく聴いてみたい気もする今日この頃である。(2003/04/20追記)2002年になり、『Surf & Snow』の続編ともいえる、『Wings Of Winter,Shades Of Summer』というアルバムがリリースされている。
(ユーミンファンのJUNTYさんのご協力によって、一部訂正加筆いたしました)

曲解説

彼から手をひいて
結局、リゾートというのは、非日常の世界だ。ここでは、スキーに出かけたカップルしの1週間の出来事を歌うという、手法を取られている(まあ、どこにもスキーとは書かれていないのですが、わざわざロッジに1週間も行くというのは、それ以外考えにくい)。コーラスは、アルバムに特別にフィーチャーされた、須藤薫。彼女の出来がこのアルバムでは重要な鍵を握っているが、それは後述する。この掛け合いになる部分がそれまでにない新鮮さだったかも知れない。それにしても、「満員の夜行」とは、当時のライフスタイルにしても、何とも庶民的ではなかろうか。ところで、この曲どこかで後にCMで起用されなかっただろうか。
灼けたアイドル
これほど一夏の恋を表した曲はないのかも知れない。ビーチボーイとビーチガールが出会った数年後の描写である。ところで、ユーミンほど数多くのラヴソングを書いてきたライターはないのだが、この人の場合は、実体験を経ていなくても、あり得そうな出来事を曲に仕上げてしまうのだ。そのためかどうか、古内東子のように情念までは行かないものの、どこかさらっとした語り口で、綴られる。そんなところに当時のOLたちは共感したのかも知れない。(2003/04/20追記)ただし、ユーミンは、何事にも興味津々らしく、その後スキーもサーフィンも体験というかかなりはまっていったようである。
人魚になりたい
かなりおとなしめの楽曲であるが、サビの部分がしっかりとユーミンしている。それにしても、2番のサビの部分、「♪素直に泣ける雨の中で/冷たいフィズの泡の中で/人魚になってしまいたい」というところが、斬新な表現だったのではなかろうか。
まぶしい草野球
テーマは草野球である。とはいえ、SEで、スタジアムの歓声などが取り入れられ(どうやらあちらのスタジアムのようだが)、ユーミン版の「わたしを野球に連れてって」ともいえそう。スポーツ、文化とあらゆる興味を示す、ユーミンであるが、これがさらに時代が進んで作られていたら、「あなた」がプロの選手であった可能性もあったはずだ。
ワゴンに乗って出かけよう
ユーミンとしては、珍しく男性側に立った書かれた、曲である。曲調はどちらかというと、ゆったりとしているが、どことなくウエストコーストを感じさせるもの。ここでも、須藤薫のコーラスが全面的にフィーチャーされている。間奏のサックスは、今や重鎮のJake Conceptionだろう。また、ユーミンとしては珍しいロードムービー的な曲なのだが、スピード感に欠けるのが残念だ。
恋人がサンタクロース
もう、この曲を知らない人はいないだろう。これがリリース以降毎年クリスマスシーズンになると、かかるおなじみの曲だ。ここでも、須藤薫のコーラスがフィーチャーされている。何気なく聴くにはいいと思うが、今や12月24日あたりに、クルマの中で、男女のシチュエーションでカーオーディオあたりから流すと、ちょっと恥ずかしい曲なのかも知れない。20年前では、この程度のモチーフでたとえユーミンといえども、曲を作ったのである。
シーズンオフの心には
Time Five、伊集加代、梅垣美都、槙みちる、ユーミン夫妻による(クレジット名は適当に漢字表記しました。ご存じの方はメール下さい)、コーラスから始まる。これがなかなかに重厚。そして、スティールギターは、今剛。ウクレレが、吉川忠英。このアルバムでは、唯一、夏や冬を感じさせないニュートラルな位置づけなのではなかろうか。まあ、だからシーズンオフなのだろうけど。それでも強引に想像すると、避暑地という言葉が出てくるから、秋とでもなるのだろうか。
サーフ天国、スキー天国
これまた、定番曲。タイトルは、「サーフ天国、スキー天国」だが、冬のゲレンデから物語が始まる。これも、ユーミン自身が海より冬の山に愛着を感じるからではなかろうか。そういや、最近はどうなのか知らないが、筆者が通っていた学校には、「シーズンスポーツ同好会」なんてのがあったな。まあ、その程度だろうが、本格的にのめり込まないものの、ちょこっとファッション感覚でこうしたものを楽しもうなんていう、かなり軟派な動機付けの人たちには、好まれた曲なのか。また、当時は「陸サーファー」なんて言葉もあって、かっこよく見せるためなら、何でもありというしょうもないことも平気で行われていたのだが。前振りが長くなった。ここでは、須藤薫による、コーラスが群を抜いて素晴らしい。このコーラスを聴いて、このアルバムを買おうと、筆者は決心したくらいだから(そして、須藤薫にも興味は向いていくのだ)。それにしても、このコーラスは、単なるバッキングを超越していると思うような出来だ。コーラス部分の歌詞は、曲とまったく違うものを外国語で行っていて、これユーミン(あるいは松任谷正隆)のひとつの発明ともいえそう。ところで、これ以降、須藤薫 は、松任谷正隆プロデュースで、プッシュされていく。間奏のスティールギターは、今剛。
恋人と来ないで
こちらも、「シーズンオフの心には」と同じようなニュートラルな位置づけの曲のようである。ただし、あのファンファン大佐こと、岡田真澄とのデュエットであり、男女の掛け合いの形で歌われていく。岡田真澄といっても、20年前であるから、まだまだ老人めいたことはなくて、ナイスミドル以前あたりの位置づけだったのではなかろうか。もちろん、ユーミン側のアプローチがあって実現したものであろう。
雪だより
これは、都会の女性とローカルな男性との年に1度の出会いという状況なのだろうか。これぞ、遠距離恋愛もののの元祖?何となく素朴に感じるのは、絵はがきが届くなんていう今ではほとんど死んでしまったコミュニケーション手段があるからだろうか。

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