Paper Driver's Music/キリンジ

Paper Driver's Music

01 双子座グラフィティ(堀込泰行/堀込泰行/冨田恵一)
02 風を撃て(堀込泰行/堀込泰行/冨田恵一)
03 野良の虹(堀込高樹/堀込高樹/冨田恵一)
04 太陽の午後(堀込泰行/堀込泰行/冨田恵一)
05 雨を見くびるな(堀込高樹/堀込高樹/冨田恵一)
06 甘やかな身体(堀込高樹/堀込高樹/冨田恵一)
07 P.D.M(Instrumental)(堀込高樹/冨田恵一)
08 ニュータウン(堀込高樹/堀込高樹/冨田恵一)
09 汗染みは淡いブルース(堀込高樹/堀込高樹/冨田恵一)
10 冬のオルカ(堀込泰行/堀込泰行/冨田恵一)
11 五月病(堀込泰行/堀込泰行/冨田恵一)
12 かどわかされて(堀込高樹/堀込高樹/冨田恵一)

WPC6-8474
1998/10/25発売
Produce:冨田恵一

キリンジのデビューアルバムにして、不思議なポップ感覚を評価された1枚である。このアルバム、タワーレコードでは、新人にして国内アルバム最高の評価を、98年度に受けているのだが、一般リスナーには、馴染みのないものであろう。
キリンジは、堀込兄弟のユニット。ヴォーカルは、弟泰行。兄高樹は、ギターとコーラスである。どちらも、サラリーマンをしていたようだが、先輩のかせきさいだあのお手伝いをしているところから、アマチュアとして「ホリゴメス」として、ライヴシーンでも頭角を現すようになっていった。兄弟ながらに、曲も共作はせず、別個に書く。どちらにも共通しているところは、素直な曲調に対して、やや癖のある、言葉遣いか。

曲解説

双子座グラフィティ
なかなか気持ちのよい、ブラスのイントロ。これがすべてにわたって展開され、演奏の中心ともいえよう。曲もポップでカッコイイのだが、言葉がソリッドでシュール。といって、意味のないものではなく、状況を表す最小限の単語を、つなぎ合わせたようなものでもあり、どことなくわかる。もしかしたら、キリンジは言葉遊びをしているのかも知れない。これはシングルカットされた。ちなみに、双子座は、兄弟どちらかの星座。作者の泰行だろうか。後に、「牡牛座ラプソディ」という曲も作っているのだが。(2003/04/20追記)双子座は兄の堀込高樹であり、牡牛座は弟の堀込泰行であることがわかった。どちらも、相手の星座について述べているとは。
風を撃て
これまた、真剣に歌詞を読むと、意味不明の羅列である。はたして、この曲を聴いて、状況を正確に把握するようなことが可能だろうか。とはいえ、ソリッドな感じがまたしてもカッコイイので、筆者は許してしまうのである。
野良の虹
こちらは、高樹の曲。弟よりは、ひねくれ度が少ないようだ。とはいえ、かなり言葉で遊んでいる。
太陽の午後
泰行の曲であるが、初めて素直に聴ける曲ではある。ブラスがなく、アコースティックな感じに仕上がっている。けっこう聴いていて心地よい感じの曲だ。
雨を見くびるな
高樹の曲。「♪あぁ、口づけで責めてみても/カエルの面にシャンパンか」などというフレーズが出てくる。カエルの面といえば、先頃新宿で火事にあった一帯の通称名が出るのが普通だろうが、このあたりを美味くすり替えてしまうのがキリンジ流か。それだけ、下世話でなくどことなくお上品な匂いが感じられるのが彼らである。
甘やかな身体
スローでアコースティックな曲。男性の曲にしては珍しく、α波が出てくるような感じだ。リンダ・ロンシュタットやカーペンターズのスローな曲に、アルファ波が出てくるものが多いが、キリンジの曲も、一応日本語ではあるものの、あまり意味を感じさせないところが、洋楽みたいな意味合いがあるのかも知れない。
P.D.M
ちょうど中間部分ということで、箸休めとしてこれがあるのだろうか。インストゥルメンタルの曲である。
ニュータウン
キリンジが言葉を詞として意味あるものにあえて作っていないところが、新しいクリエイターとして、革新的なのだろうか。最小限の言葉で伝えるところはきっちりと伝えると。ここでは、都市周辺に位置するニュータウンについて歌っているが、まあわかる。まあ、歌詞自体はけっこう量が多いのだが。
汗染みは淡いブルース
ラテン調の曲と、泰行のヴォーカル、それに絡む高樹のコーラスが、真夏に汗流して、仕事でドライヴしているんだなとわかる。つまりは、たくさんの具体的な言葉をあえて排除して、テクニックで表現を持ってきた作品といえよう。
冬のオルカ
こちらは先行シングルで発売されていて、アルバムの曲はヴァージョン違い。とはいえ、こちらの方がカッコイイ。適当にドライヴ感があって、筆者は好きだ。アルバムの曲では、兄、高樹の曲が圧倒的に多いのだが、いわゆるシングル向きは、泰行のポップな曲調なのだろうか。それにしても、兄弟で曲作りを別個に行いながらに、一緒に活動、ヴォーカルは変わらないというスタイル、実態がなかなかつかめない。
五月病
ミュージシャンクレジットに、兄高樹の名前がなく、事実上の泰行のソロである。こうしたスタイルは、洋楽にはよくあることで、もしかしたら、スティーリー・ダンなどを意識してそうしているわけではないだろうが。曲のテイストは、アルバム中で最も親しみやすいもの、言い換えれば、いなたい感じがするか。(2003/04/20追記)ビートルズにも、名義上はグループ名が冠されているものの、実質一人で作ってしまったような作品もあり、まあ、許してしまおう。
かどわかされて
一転、コンテンポラリーな感じ。キリンジの持ち味は、不思議な言葉感覚というのもあるが、バックの演奏がしっかりしていることだろうか。これに泰行の声を絡ませて行くのだ。そういえば、泰行の声にはシャウトする部分がなく、これまたひとつの楽器のような扱いなのでは。

一家に一枚このアルバムに戻る

TOP INDEX