Covers/RCサクセション

Covers

01 明日なき世界(P.F.Sloan/高石ともや・忌野清志郎/RCサクセション)
02 風に吹かれて(Bob Dylan/忌野清志郎/RCサクセション)
03 バラバラ(H.Lippok/忌野清志郎・仲井戸麗市/RCサクセション)
04 シークレット・エージェント・マン(P.F.Sloan・S.Barry/忌野清志郎・仲井戸麗市/RCサクセション)
05 ラヴ・ミー・テンダー(E.Presley・V.Matson/忌野清志郎/RCサクセション)
06 黒くぬれ!(M.Jagger・K.Richard/忌野清志郎/RCサクセション)
07 サマータイム・ブルース(E.Cochran・J.Capehart/忌野清志郎/RCサクセション)
08 マネー(J.Bradford・B.Gordy.Jr./仲井戸麗市・忌野清志郎/RCサクセション)
09 サン・トワ・マ・ミー(S.Adamo/岩谷時子/RCサクセション)
10 悪い星の下に(W.Bell・B.T.Jones/忌野清志郎/RCサクセション)
11 イマジン(John Lennon/忌野清志郎/RCサクセション)

H32K-20125
1988/08/15発売
Produce:RC Succession

歯に衣を着せぬ忌野清志郎が、社会に噛みついた問題作。RCサクセションは、ぐっと古く、70年代初頭にフォークトリオとしてデビュー。デビュー作こそそこそこヒットしたものの、その後は泣かず飛ばず。その後はメンバーの脱退(クビ?)もあり、誰もがもう終わりと思われた頃、古井戸の仲井戸麗市が参加、「ステップ!」で復活。その後のライヴハウス動員が口コミにより評判を呼び、ロックバンドとして再生を図った。
このアルバムは、全曲洋楽のカバーによるもので、当初は、所属の東芝EMIより発売されるはずであったのだが、Track07の歌詞が問題を含むというEMI側の一方的な判断により、発売中止になった。RCとしては、急遽古巣のキティより発売にこぎつけたという、1988年の作品。清志郎としては、これまでにも、出演したテレビ番組でのライヴパフォーマンスを口パクに差し替えられたり、所属事務所とのトラブルで1年間音源を出せなくなってしまったこと、また、レコード会社の移籍に伴い、自分たちの意図していない音源を勝手に出されてしまったことなど、思うところがたくさんあったのだろう。そのような問題意識が、このアルバムを作らせたともいえよう。また、多彩なゲストミュージシャンが参加しているのが、特徴で、贅沢な作りともいえよう。音の方は意図的にかチープではあるが。
これ以降、彼は社会派として天皇問題や、君が代問題などに噛みついていく。RCが、活動停止状態であるならば、覆面バンドのタイマーズや、ローディたちを集めて作った2・3's、そして、自身のソロ活動、Little Screaming Revueなどに活動の場を求めて、それを展開している。怒れるオヤジたちの声は、すでに10年以上を経た現在でも、十分伝わってくるものである。なお、ここでは曲名クレジットは、今までと違い、作詞/作曲/編曲の順番ではなく、原曲作者/日本語詞/編曲の順となっていることを注意されたい。

曲解説

明日なき世界
今は亡き、ジョニー・サンダースがギターとコーラスで参加。冒頭と途中の英語のセリフも彼である。オープニングを飾るのにはぴったりのノリがある。バックス・バニーを率いていた、金子マリもコーラスで参加している。ローディから現在では、チャボに変わる役割を持たされていると断言していい(?)三宅伸治も参加している。
風に吹かれて
ここでの清志郎の日本語の詞は、単なる訳詞ではなく、もはや替え歌に近い。とはいえ、同じことをディランも考えていたのではないかと思わせるほどの、パワーがある。それを、子供のコーラスでオブラートにくるみつつも、社会に訴えているのではないだろうか。元ダイナマイツ、村八分の山口富士雄がギターとコーラス(一部リードヴォーカルも)、アイドルの高井麻巳子もコーラス参加。なんでも、雑誌の対談で親しくなったらしい。ちなみに、秋本康との結婚前のことである。もちろん、清志郎の片腕、三宅伸治も参加している。
バラバラ
このアルバムには、ゲストがふんだんに参加している。「バラバラバラバラ……」と続くコーラスでは、ひときわ印象的な声の持ち主が、サザンの桑田佳祐。クレジット上では、なぜかIsuke Kuwatakeとなっているのだが。清志郎と桑田だが、NHKのクリスマス特番で、競演。なんでも、この時とんでもなく高いピアノを桑田が水浸しにしてしまったらしい。それ以来の縁である。それに加え、山口富士雄の野太い声、三浦友和の青春歌謡的な声もコーラス参加していて、なんとも不思議なグルーブ感を醸し出している。
シークレット・エージェント・マン
冒頭、挿入される、朝鮮語の女性の声。これは、北朝鮮の女スパイ、キム・ヒョンヒが韓国当局に捕まった際の、自供である。そして、清志郎とのデュエットは、演歌の坂本冬美。この掛け合いが、まるで大韓航空機爆破事件の男女スパイを彷彿とさせるのだが。これまた、清志郎風の時流に乗っかったブラックなジョークである。なお、このあと、清志郎と坂本冬美は、細野晴臣を加えて、HISを結成する。また、ここでもジョニー・サンダースがギターソロとコーラスで参加。
ラブ・ミー・テンダー
ご存知、エルビス・プレスリーのヒット曲。これに乗せて、清志郎がけだるそうに歌う。バックの子どもたちのコーラスが、少年合唱団風でなく、素人っぽいのが効果的。♪「放射能はいらねえ 牛乳が飲みてえ」というところに、社会悪をそれとなく摘発する、清志郎独特のテイストがこめられている。
黒くぬれ!
ストーンズのスマッシュヒットに乗せて歌うが、ここでは替え歌というよりも、原曲を日本語でノリを失わないように現代風にアレンジを加えて再現したとでもいう感じに近い。まあ、元々が社会に毒づいていた頃のストーンズの曲であるから、具体的に対象をはっきりさせなくとも、よかったのだろうか。三浦友和、山口富士雄参加。また、当時の女性ロッカーちわきまゆみも参加している。
サマータイム・ブルース
原子力発電所問題を扱った、問題作。おそらくこれで、東芝側が硬化して、発売できなくなったものと思われる。途中の政府側のアナウンサーの声は、俳優の三浦友和。怒りの罵声は、泉谷しげる。高井麻巳子とのデュエットも。三浦友和は、山口百恵の旦那であるが、清志郎とは、高校時代の同級生。RCサクセションがホリプロに入り、そのつてで、三浦友和も俳優になれたとのことだ。泉谷しげるは、フォーク時代からの古いつきあい。なんでも、はじめはRCを見に来ていたうるさい客だったとか。高井麻巳子は、オニャンコ倶楽部在籍時に、清志郎と対談して気に入られたらしい。
マネー
ストーンズにおける、キース・リチャーズに当たる存在が、ギターの仲井戸麗市。そして、アルバム内では、キースと同じように、数曲リードヴォーカルも取る。そんなチャボのヴォーカルも聴けるのがこの曲。しかし、ゲストもふんだんに参加しているので、聴けるのは数フレーズ。他に、三浦友和、山口富士雄などが参加。
サン・トワ・マ・ミー
原曲は、シャンソン歌手のアダモ。しかも、アダモ自身が岩谷時子の詞で、日本語盤をリリースしている。他には、越路吹雪などが歌っていた。これに、清志郎流の解釈で、ロックンローラーのしがない人生が投影されているのだろうか。さすがに全面的に詞を変えるところまでは行かなかったようだ。だが、シャンソンをロックに変貌させ、なおかつステージ映えするようなグルーブを生むのは、当時のRCにしかできないと思う。ピアノでジャズの山下洋輔が参加。当時、「忌野旅日記」という、連載ものがあり、ここに登場するミュージシャンをゲストに呼んだ模様。サックスソロは、梅津和時。フランス語のセリフは、ジャーナリストのコリーヌ・ブレ。
悪い星の下に
過激な内容を歌ってはいるが、「黒くぬれ!」と同じように昔のロックをブルージィに演奏しているタイプのものである。まさかこの曲を取り上げ、後年メンフィスに行って、ブッカー・Tと競演することになるとは思ってもいなかったのではなかろうか。山口富士雄がギターで参加。
イマジン
こちらは、ぐっと真面目にやっている。しかも、当時としては珍しくアコースティックヴァージョンである。後のアンプラグドブームの先駆けともいえそうだが。そして、シングルを切ってもよかったくらいの出来である。おそらく、ジョン・レノンへのレクイエムのようなものなのだろうが。ちわきまゆみと三浦友和がコーラスで参加。

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